ホシツキ@フィクション

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10/26/2022, 12:35:10 PM

結婚して1年が経った。
まだまだ世間的には新婚だろうけど、同棲期間が長かったからかラブラブ感は無くなっていた。

それでも私は充実していると思っている。
そして夫も同じことを思ってくれていると思う。

私たちは職場恋愛からの結婚だった。
最初は寿退社も考えたのだが、その時進めていたプロジェクトがいい感じに進んでいたし、責任者という立場からその考えはすぐに消えた。

夫自身も「その方がいい。子どもももう少し貯金貯めてから考えたいしね。」と言ってくれた。
何より私は仕事が好きだったので、その言葉はとても嬉しかった。

お互い仕事人間なのがちょうど良かったし、会社でも家でも居心地は良かった。

ただ1つ引っかかるというか、不満があるとすれば夫は洋服を脱ぎ散らかす癖があるということだ。

夫の部署の方が忙しく残業も多いため、疲れて帰ってきた夫に怒るということはしたくない。

同棲し始めた時は注意したことがあったものの、ある時から
『この人はこういう人なのだ。』
と自分自身を納得させた。そうしたら心がイガイガしなくなった。

私は夫の全てを受け入れることにした。


脱ぎ散らかすこと以外は完璧と言ってもいいくらいの旦那。
家事も一通り出来るし、仕事が休みの日には朝ご飯を作ってくれたり、デートに誘ってくれる。
だからだらしなさも人間らしくていいな、と思えた。


それは好きという感情が無くなった瞬間だった。

これが愛なのかと感じた。
人間臭さも愛おしい。

友人曰く、「相手の欠点も受け入れることが愛」らしい。
つまり私は夫を愛しているという訳だ。


――今日旦那の帰りが遅いみたい。
今進めてる案件がかなり厄介らしく、また一緒に進めていた同期に不幸があり休んでいるため、そのカバーを夫がしている。

と聞いていた。
きっといつもより疲れて帰ってくるだろう。

そうした時、私ができることは労って、夫の好物を作ろう。


――――そして、いつも通り夫が脱ぎ散らかした洋服を
拾うのだ。


「おかえりなさい、お仕事いっぱい頑張ってお疲れ様。」

という言葉と共に。

そして寝る時はおやすみ、と言って軽いキスをしよう。

「愛してる」よりも強い、愛の言葉。




【愛言葉】~完~


私はパートナーに「愛してる」と言われるよりも、
「君の好きなお菓子買ってきちゃった!」の方が嬉しかったりします。(もちろん愛してるも嬉しいですが)

何かをする時、無意識のうちに「あの人は何が食べたいかな」とか「これしたら嬉しくなってくれるかな」と考えたり、考えられたりすることが私の中の“ 愛 ”の定義かもしれません。


いつも♡︎ありがとうございます!本当に感謝です┏○ペコッ

10/25/2022, 1:51:04 PM

私は友達がたくさんいる。友達と言うと違うかもしれないが、厳密に言うと“ 私のことを好きなひと ”だ。

いわゆるフォロワーという人たち。
私はその人たちのことを知らないが、その人たちは私のことを知ってくれている。

私がSNSで写真を乗せるだけで賞賛される。
可愛い、可愛い、可愛い
そんなこと知っている。最近またフォロワーが増えたみたいで
ついに2万人を突破した。

私はSNSに自撮りの写真を載せて、褒められ、自己顕示欲を満たしていた。

なのに褒められれば褒められるほど心のどこかで寂しさを感じている。


『こんな時に、こういうことを気軽に相談出来る友達がいれば』

と何度思っただろう?


学生時代の友人は皆私から距離を置いていった。

きっかけは同窓会での出来事だ。周りは結婚したり、出産したりで家庭を持ってる人も多く、最初は学生時代の思い出話だったが、その後メインは家庭の話や子育ての話だった。

私はその時ちょうど仕事もプライベートも上手くいっていないことや、私が中心でないことがとても腹立たしかった。

あとは、ただただ単純に周りの友人たちを下に見るような発言ばかりした。「女として終わり」だの「おばさんくさい」だの…

皆「変わったね。」と言って去っていった。
その時私は何にも感じなかったし、寧ろ「妬みとかウケる」とまで思っていた。

今思えばなんてことをしてしまったのだろうか。

私は選択を間違えたようだ。どこかで何かの歯車が狂ってしまったのかもしれない。
今更後悔しても遅い。



私はこのまま孤独に生きていくのだろうか。
それだけは嫌だ。ぶるぶると手が震える。

私は知り合いから貰ったものを自分の体に打ち込む。

頭が真っ白になってクラクラしてくる。ふわふわする。死ぬのかな?死にたいな。

―――人気インフルエンサー、薬物中毒で死亡、か。悪くない。



一通のDMが届いていた。

“久しぶり!アユすごく人気者なんだね。人気なのは噂で聞いてたけど、ここまで人気だったなんてびっくりしたよ。
そんな人気者の友人でいれて嬉しかったよ。同窓会での出来事はみんな気にしてないからね!だからもう安心してね。いつかまた会える日を楽しみにしてるね。 マユミ”


ピンポン、とインターホンが鳴る。ふらふらしながら出ると、
そこには友人たちがいた。
「サプラーーイズ!」
友人達は家に入ってくると私を力強くハグしてくる。

「アハハ、痛いって。」

私は思わずスマホを床に落とす。
開かれたスマホの画面は私のSNSのホーム画面だ。
フォロワーの欄は “0”と書かれていた。

私は薬をすることで、
フォロワーや友達がたくさんいると感じていた。
孤独を癒していた。

DMも届いてはいなかった。目の前には誰もいなかった。

全てが作られたもの、私の理想。

あぁ、ずっとこのままでいたい。


このままで、終わろう。
たくさんの友達に囲まれたままで。


どこまでが本当で、どこからが幻覚?
それは誰にも分からない。


【友達】~完~



ダメ絶対。
久しぶりに暗い話書いたけど向いてないみたいです(т-т)
暗い話読むのは好きなんですけどね…フランス映画とか…

どうしてもハッピーエンドにしたかったのだけれど
主人公がそのまま突っ走ってしまいました。
何度も言うけど、ダメ絶対。
ちなみに私のSNSのフォロワーは400人ちょいです。
多いのか少ないのか微妙なライン。

♡︎いつもありがとうございます!もうすぐ600!

10/23/2022, 5:34:16 PM

「季節によって空の色が変わるのはどうしてだろうね?」
と君は不思議そうに問いかけてくる。
「空の高さが季節によって違うんじゃない?」
と私は言う。

君は笑いながら「そうなんだ」と独り言のように呟く。

「本当かどうか私は知らないよ!」
知識もないのに適当なことを言ったのだが、それを信じさせて
しまうのは申し訳ないと思い、私は即座にそう言った。

「じゃあ、何色の空が好き?」
また、君は不思議そうな顔をしてこちらを覗き込む。

私はうーん、と考えてから
「夏?」と何故か疑問形で返した。

君はまた笑いながら「そっかあ」と呟く。

君に問われるまで私は空の色や好きな空の色など考えたことは特に無かった。
空は空だし、青い。

「私もね、夏の空が好き。見ててワクワクするから!」
「夏は楽しいことも多いから尚更そう思うんじゃない?」

「そうかなぁ?ねぇ、なんで季節によって空の色って違うの?」

……2度目の質問。私は適当になり「分かんない」
と言った。まあ実際分からなかったから嘘では無い。

「そっかぁ」と君は言う。
私は黙る。

しばらく沈黙が続き、君がこう言う。
「私、ばかでごめんね。お姉ちゃんのサポート何も出来てないや。」
「そんなことないよ。私も知識ないし、ばかだもん。」
「ふふ、ありがとう。私頑張るね。」

そう言って君はまた空を見上げる。そして
「本当は私、空を見てワクワクしないんだ。」続けて

「そう言うように、学習してるよ。でもどんなに学習しても、本音を言うと全然分からないんだ。」

「そうなんだ。」と返す。
そりゃそうだろう。君はAIだから。

人型AIロボットが普通に出回るようになり、一家に1台AIロボットがいる家も多い。
まず私の家族に対して知識が0のAIロボットが届くため、私たち家族と沢山会話して色々なことを学習していく。

AIロボットには種類があり、メイド、親、弟、妹、友人…
と様々なジャンルがあり、我が家は“ 妹 “を購入した。


「早くお姉ちゃんと同じように感じたい。」

君は空を見ながら悲しげに呟いた。
でも悲しげに言ってても、楽しそうに笑ってても、
“悲しい”“面白い”と思うことはないのだ。

こういう状況にはこういう表情や声色を使うと元々インプットされているだけ。

そう思うと何だか切なくなった。

昔学校でイジられて、本当は苦しくて嫌なのに情けなく「アハハ…」と笑っていた私は
感情という物がよく分からなくなってきていた。
家でも作り笑いが増え、心配になった親が買ってきた妹AIロボット。

相手が機械だと思うと、本音が話しやすく、とても気持ちが楽になった。
君はいつもウンウン、とたまに返事が突拍子もないことも言ったりするが聞いてくれていた。

そのお陰で私は楽しい時に笑う、嫌な時は笑わない。

と再認識出来た。そして学校でも家でも作り笑いは無くなった。


感情を持たないAIから感情を教わったようなものだ。


空は青い、どこまでも広がっている。
その空が“美しい”と思ってもらいたい。

そう思い、私はこれからも妹と話していこう。とそう思った。

「私が教えてあげるね。」
私がそう言うと、君は「わーい!」とはしゃぎながら空をまた見上げていた。


【どこまでも続く青い空】~完~

10/22/2022, 11:32:11 AM

私はズボラだ。

テレビではアナウンサーが
「衣替えしました?」
「昨日したんですよー」
なんて話している。

もう一度言おう。私はズボラだ。

そもそも衣替えなどしない。
なぜならタンスの中に長袖と半袖がごっちゃに入っていて、
どちらもすぐ取り出せるのだ。

「せっかく衣替え済ませたのに〜」

という人を見ると内心フフン、と少し優越感に浸る。
私はそんな手間がかかることをしたくない。

元々そこまで洋服に興味がなく、持っている服自体が少ないというのもあるが、我ながら実に良い案だと思っている。

友人に聞いたところ、夏場は冬服は他の衣装ケースに入れてクローゼットや押し入れの奥に置いたり
圧縮袋に入れて掃除機で空気を吸い、真空にしているらしい。
その逆も然り。

なんと面倒なことか。

『今日は気温が高いかもなあ。』

私はまともに天気予報をチェックせずに、窓の外を見て半袖で行こうと判断した。

ストレス無く半袖を出し、腕を通す。

準備を済ませ、家を出ると日差しは暖かいのだが風が冷たかった。

『失敗した。』

出た瞬間そう思った。が、もう何度も言おう。
私はズボラである。
極度の面倒くさがりなのである。

家から出たばかりですぐ戻ることは出来るのだが、面倒だ。

『ちゃんと天気予報チェックするべきだった。』

その後悔を抱えて、鳥肌をさすりながら私は歩き出した。



―――きっと午後から暑くなるはずという希望を抱きながら。



【衣替え】~完~


ネタが思い浮かびませんでした…チ───(´-ω-`)───ン
なので実体験書きました。長袖用、半袖用、下着や靴下やタオルなどのその他用、と分けております。

季節が変わる時は使わないタンスにダニよけ用のシートやらいい香りがするシートやらをぶち込むだけです。とても楽。

いつも♡︎ありがとうございます\( ^0^)/感謝🙏

10/21/2022, 11:31:18 AM

この世にはもう俺以外誰もいないみたいだ。
朝早く目が覚めてから1度も誰とも会っていない。

6日前くらいまではいたような気がするが、急にパタリと辺りが静かになった。
聞こえるのは鳥のさえずり、風で木々が揺れる音。

誰の声も聞こえない。

俺は誰かいるかもしれないという淡い期待を込めて、今日も呼ぶ。
「おーい!誰かいないのか!?」

返事がない。

『今日はもう少し遠くまで行ってみよう。』

力をふりしぼり、勇気をだして探しに行く。
というのも、俺の命は長くは無い。
終わりが近いと、そんな予感がしている。


ただ自分の最期に誰かにそばにいて欲しいだけなのだ。
ふと視界になにかが写り、ハッとして何かがいた方に向かう。

見たこともない生物がそこにはいた。

「お前は誰だ?」
と問いかけるが、返事がない。
『言葉が通じてない?というより、この世界の生き物なのか?』
それは黒黒しく、自分よりも大きい。楕円形のてっぺんにツノのような何かが付いている。

明らかに自分よりも強そうだが、こちらを攻撃する意思はないのか、それは飛んで行った。

『なんだったんだ…でも、とりあえずは安全な生物らしい。』
俺は安堵しつつ、再び誰かを探しに出かける。

それにしても、寒い。ひゅう、っと肌に冷たい風が当たる。
体だけでなく心も寒い風が吹いていた。

残り少ない命に寒い環境。これは早く誰かを見つけなければ。

俺は叫んだ。周りを見渡しながら移動しては叫び、移動しては叫びを繰り返した。

孤独に死んでいくなんてゴメンだ。
せめて誰か、さっきのような異形の物ではなく、せめて言葉が通じるものがいい。



でも、もうダメかもしれない……。
少しずつ前に進む体力が無くなってきた。

それでも叫ぶ。精一杯生きたい。そして悔いなく死にたい。

―――俺は1本の木にたどり着いた。
すごく大きくて立派な木だ。

『ここで俺は死んで、土に還るのか。それも悪くない。』

俺は残りの力を振り絞り、叫び続ける。
冷たい風に乗せて、遠くまで自分の声が届くように。

叫びながら思う
『長いようで短い人生だったな。』

叫びながら思う
『せっかくこの世界を楽しいと思い始めたのにな。』

叫びながら思う
『本当に誰もいなくなってしまったのか。』

叫びながら思う
『……彼女欲しかったなあ。』


最後の最後にこれか。
俺は笑った。大きな声で笑った。



「ミーン ミン ミン…………」

声が出なくなる。力がどんどん抜けていく。


俺は倒れて仰向けになり、空をただただぼーっと見ていた。

『あぁ、眠たい。』


こうして俺の7日の命は終わった。


【声が枯れるまで】~完~


セミ目線で初めて書きました。
私はヒグラシが好きです。夏の夕方、ちょっとセンチな気持ちになるから。
いつも♡︎ありがとうございます!励みになります!

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