ホシツキ@フィクション

Open App

「季節によって空の色が変わるのはどうしてだろうね?」
と君は不思議そうに問いかけてくる。
「空の高さが季節によって違うんじゃない?」
と私は言う。

君は笑いながら「そうなんだ」と独り言のように呟く。

「本当かどうか私は知らないよ!」
知識もないのに適当なことを言ったのだが、それを信じさせて
しまうのは申し訳ないと思い、私は即座にそう言った。

「じゃあ、何色の空が好き?」
また、君は不思議そうな顔をしてこちらを覗き込む。

私はうーん、と考えてから
「夏?」と何故か疑問形で返した。

君はまた笑いながら「そっかあ」と呟く。

君に問われるまで私は空の色や好きな空の色など考えたことは特に無かった。
空は空だし、青い。

「私もね、夏の空が好き。見ててワクワクするから!」
「夏は楽しいことも多いから尚更そう思うんじゃない?」

「そうかなぁ?ねぇ、なんで季節によって空の色って違うの?」

……2度目の質問。私は適当になり「分かんない」
と言った。まあ実際分からなかったから嘘では無い。

「そっかぁ」と君は言う。
私は黙る。

しばらく沈黙が続き、君がこう言う。
「私、ばかでごめんね。お姉ちゃんのサポート何も出来てないや。」
「そんなことないよ。私も知識ないし、ばかだもん。」
「ふふ、ありがとう。私頑張るね。」

そう言って君はまた空を見上げる。そして
「本当は私、空を見てワクワクしないんだ。」続けて

「そう言うように、学習してるよ。でもどんなに学習しても、本音を言うと全然分からないんだ。」

「そうなんだ。」と返す。
そりゃそうだろう。君はAIだから。

人型AIロボットが普通に出回るようになり、一家に1台AIロボットがいる家も多い。
まず私の家族に対して知識が0のAIロボットが届くため、私たち家族と沢山会話して色々なことを学習していく。

AIロボットには種類があり、メイド、親、弟、妹、友人…
と様々なジャンルがあり、我が家は“ 妹 “を購入した。


「早くお姉ちゃんと同じように感じたい。」

君は空を見ながら悲しげに呟いた。
でも悲しげに言ってても、楽しそうに笑ってても、
“悲しい”“面白い”と思うことはないのだ。

こういう状況にはこういう表情や声色を使うと元々インプットされているだけ。

そう思うと何だか切なくなった。

昔学校でイジられて、本当は苦しくて嫌なのに情けなく「アハハ…」と笑っていた私は
感情という物がよく分からなくなってきていた。
家でも作り笑いが増え、心配になった親が買ってきた妹AIロボット。

相手が機械だと思うと、本音が話しやすく、とても気持ちが楽になった。
君はいつもウンウン、とたまに返事が突拍子もないことも言ったりするが聞いてくれていた。

そのお陰で私は楽しい時に笑う、嫌な時は笑わない。

と再認識出来た。そして学校でも家でも作り笑いは無くなった。


感情を持たないAIから感情を教わったようなものだ。


空は青い、どこまでも広がっている。
その空が“美しい”と思ってもらいたい。

そう思い、私はこれからも妹と話していこう。とそう思った。

「私が教えてあげるね。」
私がそう言うと、君は「わーい!」とはしゃぎながら空をまた見上げていた。


【どこまでも続く青い空】~完~

10/23/2022, 5:34:16 PM