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3/13/2026, 11:58:22 AM

ずっと隣で


夜空を彩る幾つもの光。


心臓まで響く大きな音と共に、打ち上がった光たちは

あっという間に消えていく。


空を見上げたあなたの目は

降り注ぐ光の欠片を反射して

きらきらと輝いていた。


あと何回、この景色を共に見られるのだろう。


時間の流れは、残酷な程に早く

アナウンスがフィナーレを告げた。


また来年、と挨拶するかのように

寂しくないよ、と励ましてくれるかのように

大きな大きな花たちが、次々に弾け散る。


あぁ、もう終わっちゃうのか。


最後に、一番大きな花が夜空に立派に咲き誇った。


「…やだなぁ」


寂しさが募って、自然とこぼれ落ちた言葉は、

ドン!!という大きな音と、歓声の中へ消えていった。


私の横で満足そうに目を細めるあなたを見て、思う。


あと何回、一緒に見られるかはわからない。


それでも、

願うなら、ずっと隣で。

3/12/2026, 12:00:05 AM

平穏な日常


平穏がいつ崩れるかなんて、誰にも分からない。

そんな日が来ることを、想像することはできても、

なんだかんだ自分が経験しないと分からないものだ。


生きている人には誰しも、

平穏じゃない日々は訪れる。

その時に、何を思うのか。


こんなはずじゃなかった。

あの頃に戻りたい。

もう一度あの人に会いたい。


当たり前なんてあるはずがないのに、

当たり前が崩れるその瞬間まで、

私たちは気付けなかったりするものだ。


もしくは、考えないように

平穏に身を隠しているのかもしれない。



この世界にいる誰もが、平穏な日々を送れますように。

そして、どうか、私の平穏な日常に終わりが来ませんように。

「…なんて、それは無理な話か」と、ひとり呟き、

私は今日も、平穏に溺れる。

11/25/2025, 2:58:44 PM

落ち葉の道


久しぶりの休日。

いつもは家でのんびりするけれど、

なんだか今日は、いつもと違う場所へ

出かけてみたい気分だった。


今はちょうど、葉の色が移り変わる時期だから

私は山へ足を運ぶことにした。



色とりどりに並ぶ葉は、とても美しく

葉が風で優しく揺れる音は、

「ようこそ」と、

まるで私を歓迎してくれているみたいだ。



一度立ち止まって、周りを見渡す。

いつもと全く違う景色に、

なんだが別の世界に迷い込んでしまったみたいだ、

なんて思ったりした。



「すごく綺麗」 そう思うのと同時に、ふと疑問に思う。


こんなにも色鮮やかな姿を見せてくれているのに、

最後には散って、地面に落ちる。

そうして、風に乗ってどこかへ飛んでいったあと、

この子たちはどうなるんだろうか。


考えていたら、なんだか少し寂しい気持ちになってしまった。




それから、どれだけ歩いたか分からない。

でも、この空間はとても居心地がいい。

このままずっと、ここに居たいなぁ

そう思った矢先、看板が目に入った。



「この先は行き止まりか…」

少し残念だけど、帰ろうと振り返った時、

太陽の光がさし込んだ。

眩しさに目を細めながら、光のさす方を向くと

穏やかに流れる川が、きらきらと輝いていた。



そこには、風に乗り水面に着地した葉たちが

ゆらゆらと揺れていた。

それはまるで、私のために用意された

新しい道のようで。

実は行き止まりじゃなかったのかもしれないな。


「道、作ってくれてありがとうね」


そう言いながら、優しく揺蕩う落ち葉の道を

歩いている姿を想像し、頬を緩めた。

11/24/2025, 3:46:05 PM

君が隠した鍵


「ぼく、かけっこで一位取ったよ!」

「算数のテスト、上手くできなかった。」

「おかあさんのオムライス、おいしい!」


あなたは、毎日いろんな表情を見せてくれる。

それはまるで、扉を開けるようだと思う。


でも、ある日、

ひとつの扉が開かなくなってしまった。

あなたは、私に涙を見せなくなったのだ。


「開けてよ」と言っても、「嫌だ」の一点張り。

私はどんなあなたを見ても、嫌いになんてならないの
に。


もう一度、ドアをノックする。


「ねぇ、知ってる?

涙を流すことは、とても素敵なことなのよ。

あなたが、何かにつまづいて、それでも逃げずに、

立ち向かおうとしているってことじゃない。

泣くことは、何も悪くないし、恥ずかしいこと

じゃないわ。」


そう声をかけると、

あなたはドアから少しだけ顔を出した。


「……。ほんとに…?」


そう言うあなたは、目にいっぱい涙をためながら、涙がこぼれないように上を向いていた。


「…でも、僕は、強くなるって決めたんだ。だから、泣かない」


そんなことを言うもんだから、私はつい、笑ってしまった。

笑わないでと怒られたが、あなたがとても愛おしくて。


ほら、嫌いになんてならなかったでしょう?


あなたがどんなに歳を重ねても、

どんな表情を見せても、私はあなたが大切なのよ。




あなたは鍵を隠したかったのかもしれないけれど、

あなたがどんな表情を見せてくれるのか、

私は毎日、楽しみで仕方がないのに。


これから先、扉を開けてくれない時があっても、

その時に、私はあなたが大切で、大好きだということを

思い出してもらえるように、

私はあなたを、ぎゅっと抱きしめた。

5/8/2025, 8:00:06 AM

木漏れ日



ひとりで旅に出た。

自分を見失った気がしたから。



頭の中のごちゃごちゃを、

一旦、すべてわたしから降ろしたくて

最低限の荷物を背負って、田舎道を歩く。



ここは、自然がいっぱいだ。

どこまでも青く広がる海、高く優雅に空を泳ぐ鳶。

生き生きとした緑が生い茂る山々。



目的もなく、ただただ歩いている。

それなのに気持ちのモヤモヤが

すっ、とどこかに消えていくようで。






しばらく歩いていると、

緑に囲まれた広場の、大きな大きな木に出会った。

木の根元に腰を下ろして、水を飲む。

木に背中を預けると、なんだかじんわり温かかった。



ここは、すごく息がしやすい。



時間を忘れて、心地よく吹く風に身を委ねていると

小さな男の子と目が合った。

こんにちは、と声をかけると

ほんわりとした笑顔を浮かべ、こちらに近づいてきた。

どうやら、ここへは毎日来ているらしい。



しばらく、ふたりで話をした。

学校でこんなことがあったとか、兄弟が何人いるかとか

そんなたわいのない話ばかりだ。

でも、すごく心が軽くなった気がした。



もうそろそろ帰らないと、と少年が言った。

そして、仲良くしてくれたお礼に、

何やらいい事を教えてくれると言う。



水をすくうように、手のひらを出してみろと言うのだ。

その子の真似をするように、隣で同じポーズをとる。



すると、わたしの手のひらの上には

木の葉の間から降り注ぐ光の粒が、たくさんあった。



『 光の宝石みたいでしょ! 』

にっ、とこっちを見て笑うその子に

そうだね、と笑顔で応えながら、

なぜか、無性に泣きそうになった。

何かすごく大切なものを教えてもらえたように感じた。



この手の上に、たくさんの大切なものがある気がして

この手を降ろしたら、それが全部消えてしまう気がして

見失っていたものを取り戻すかのように

必死に、それでいて優しく

手のひらいっぱいにすくって

わたしの胸へと抱き寄せた。


少年は、それを不思議そうに見ていたが、

にこにこしながら、わたしの真似をした。






その子に手を振り、見送ったあと

再び、わたしは木に背中をあずける。

やはり、じんわり温かい。

そして今は、

あの子のおかげで、心もぽかぽかだ。


もう少しだけここにいよう、と

やさしい木漏れ日に包まれる。


もう一度、光の宝石をすくいあげながら、

あの子と、わたしの、この先歩む未来が

明るいものでありますようにと願って。

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