二人ぼっち
絶対に落ちるわけにはいかないんだ。
受験は約二ヶ月後。
第一志望はまだA判定をもらえたことがない。
最近は放課後の教室で、ひとり机に向かっている。
もう進学先が決まった子を見ると
どうしようもないくらい、気持ちが焦った。
「あぁ〜、だめだ。」
気付けばもう外は暗くなり、
ついに私の集中力も切れてしまった。
「あれ、あの子まだ練習してる…」
そろそろ帰ろうかと席を立ったとき、
窓から、グラウンドで練習している男の子が見えた。
その子はサッカーゴールに向かって、何回も何回も、
同じ場所から、同じコースにシュートを打っていた。
表情までは見えないけれど、
悔しそうにしているのがなんとなく伝わってくる。
なんだか目が離せなかった。
「っ、くそっ!…だめだ、何回やっても入んねぇ」
上手くできない自分に腹が立つ。
とにかく気持ちを落ち着かせるために、空を見上げ大きく息を吸い込んだ。
「…あれ、あの教室だけまだ電気ついてる」
職員室以外はもう消えてるのに。
消し忘れかと思い、目を細めじーっと見てみると、
ひとりの女の子が本とにらめっこしていた。
時々首を傾げたり、頭を抱えてるのが見える。
こんな時間まで残ってるのは俺くらいだと思ってたのに。
……あ、受験か。
そこが三年生のフロアであることに気付き、
ひとつの答えに辿り着いた。
「こんな遅くまで頑張ってるんだな…」
受験は大変だと聞く。
それでも、あの子はそれに立ち向かってるんだ。
「…はは、超かっこいいな」
失敗ばかりで挫けそうだった気持ちが、
再びふつふつと燃え上がるのを感じた。
やっぱりもうちょっと練習してから帰ろう。
次の試合のメンバーに選ばれるために。
そんで、他の奴らよりもたくさん練習して、
絶対にこのチームの誰よりも上手くなってやる。
「…あっ!シュート入った!」
自然と拳に力が入った。
自分のことじゃないのに、なんだかすごく嬉しい。
最近はずっと、周りを見て、ただひたすら焦って
ひとりだけ置いていかれてるようで不安だったのに
その瞬間だけは、そんな気持ちを忘れていた。
気付けば、時計の針はかなり進み、
帰らないといけない時間が来た。
グラウンドを見ると、
あの子も同じように片付けをしている。
この、二人ぼっちの時間が
私の背中を押してくれたように感じた。
3/21/2026, 2:57:44 PM