胸が高鳴る
「はい!」
大きな声で、自信を持って手を挙げる。
そんな同じクラスの子を、わたしは見ていた。
他にやりたい人はいないかと、担任がクラスを見渡す。
はい、やりたいです
そう言えたら、どれだけいいだろうか。
わたしの人生、そんなことばかりだ。
「今度のさ、弁論大会ってどうする?」
隣でお弁当を食べている友達が発したその言葉に
わたしの心臓の音が少し加速した。
やってみたい、そう思った。
でも、いざその時になると
まるで、最初から手を挙げるつもりなどなかったかのように
体が動かなくなってしまう。
「…ずっと、やりたがってるくせに」
聞こえてきた言葉にびっくりして隣を見ると、
その子は、いたずらっ子のような顔をして笑っていた。
「バレバレだよ。いつもずっとそわそわしてるもん」
え…、と驚いたままのわたしの背中を
彼女はポンッと軽くたたいた。
そうして、飲み物買ってくるね!と
教室を去っていった。
人生は一度きりだよ、という言葉を残して。
やりたい人、といつものように先生が尋ねる。
いつもより鼓動が早い。心臓の音が煩い。
わたしの体が、やりたいと叫んでいる。
「ちなみに、今回のはいつもより規模が大きいからな」
先生が口にしたその言葉で、少し怯みそうになった。
____だめだ、わたし。下を向くな。
なにを躊躇っているんだ。
なぜ、迷う必要がある。
こんな機会、この先の人生で
もう二度と出会えないかもしれないんだぞ。
そう、人生は一度きりなんだから!
「っ…、はい!」
ステージ中央にあるマイク。
そこに向かっていく足取りは少しぎこちないが、
不思議と重くはない。
眩しい光に包まれる。
たくさんの人が、わたしを見ている。
まるで、全身が心臓になったみたいだ。
_____あぁ、これだ。
この瞬間を、わたしはずっと待ち侘びていた。
3/19/2026, 4:26:25 PM