優しさだけで、きっと
あ、あの人困ってるのかな。
ふと、道端にいた人が目に止まった。
声をかけようと、勇気の出ない自分を鼓舞するために
拳をぎゅっと握りしめた。
でも、他の誰かが助けるかもしれないし。
というか、もともと困ってないかもしれないじゃん。
…なんて、意味もなく言い訳を探して
手助けしない自分を正当化しようとする。
痛む心を見て見ぬふりをして、しばらく歩いたところで
自然と足が止まった。
なんだか心のもやもやが消えない。
あのおばあちゃんは、大丈夫なんだろうか。
誰か助けてくれたかな…。
なんだか居てもたってもいられなくなって
歩いてきた道を早足で戻った。
するとおばあちゃんはさっきと同じ場所に座っていた。
いらぬ心配ならそれでいい。
何もないのが一番だ。
「…あ、あの」
突然話しかけた私に、目の前の女性は目を丸くした。
だけど、声をかけた理由を話すと
「そうかい、そうかい」と
目を伏せたまま優しそうに笑った。
どうやら、眼鏡を落としてしまったと焦っていたけれど
頭の上にあげていたことを忘れてただけだったそうだ。
すごく典型的なトラブルに
なんだかかわいらしくて笑ってしまった。
今日2度目の帰り道を歩く。
「…あれ、」
今日ってこんなに晴れてたっけ。
きっと、たった少しの優しさだけで
こんなにも、空がきらきらとして見えるんだな。
5/2/2026, 11:02:11 AM