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3/26/2026, 1:55:09 PM

会社の給湯室。
「整形は、やりすぎじゃない?」
「やり過ぎなんかじゃない。私は彼女になりたいの」
友人の笑顔がひきつる。
マナは、手鏡にうつる瞼をつまんで二重にした。
彼女とお揃いの白いロココ模様の手鏡だ。

隣のビルから、仕事終わりの彼女が出てきた。
マナは正面にあるカフェで待ち伏せる。
彼女はマナを知らない。
「可愛い‥あのバックはじめて見た‥」
すかさず、スマホで同じバックを探しはじめた。
着信音がなる。同僚からだった。
「マナさん!今日は飲み会だよー!先に飲んでるね〜」
(あ、忘れてた‥面倒くさいなぁ)
「すみませ〜ん。今、向かいますね!」
マナは陽気で気さくな女を演じる。
彼女のような女になるために。

ガヤガヤとした居酒屋。
広い座敷で上司やクレーマーの話で盛り上がる。
「トイレいってきます」
マナは席を立ち、長い長い廊下歩いていると、前から自分とそっくりの女が歩いてきた。
「ひっ!」
マナはとっさに小さい悲鳴をあげた。彼女だった。
彼女もびっくりした顔でマナを見る。
「‥ドッペルゲンガーかと、思った」
そう言って、彼女はゲラゲラ笑い出した。
「私もこのブランド好き!」
「色違いじゃない?」
マナは、自分には無い、純粋な好意に戸惑った。
なぜか、意地悪してみたくなった。
「これ全部、あなたの真似したの。」
言った後に、ハッと後悔したが、遅かった。
彼女のぱっちりとした目がさらに大きく見開いた。

帰り道、夜道を街灯が照らす。
マナは、友人に電話をかけた。
「‥なんで、言っちゃたの?!気持ち悪いとか言われた?」
マナは泣きながら、震える声で言った。
「‥うれしいだってさ、‥今度、双子コーデして夢の国に行くことになりました」
「えーーーー!??」
鼓膜が破れそうなくらいの声がかえってきた。


そう、彼女は天使。いや、聖女様だった。
「え〜!?私、芸能人でも何でもないのに〜ちょっと嬉しいかも!ありがとう!」
喜んではしゃぐ彼女は、マナのドロドロとした卑しくて醜い心を浄化してくれたのだった。

3/25/2026, 1:14:30 PM

料理が上手くて優しい女。
怒らない女。
義父母との関係も良好。
そして、都合のいい女。

増築された新しい家。
昼ご飯を食べた後のダイニングテーブルに、片方が記入済みの一枚の紙。
「離婚してほしい」
真奈美は、にっこり笑う。
「‥わかった」
仲が悪かったわけじゃない。夫の不倫相手に子供ができたからだ。

1年後、二階建てのアパート。
綺麗に整えられた部屋。
吊り下げのポトスが風に揺れる。
「味が濃くて身体に悪そうだって食べないの!酷いと思わない?」と、元義母。
「ドアはちゃんと閉めろ!とか、靴下を丸めて出すな!とか、言い方がキツいんだ‥こんな話聞きたくないよね」と、元夫。
「筍おすそわけしたら、調理済みなら受け取ります。っていわれたの!感じ悪いのよ〜」と、元ご近所さん。

真奈美は、満足気にスマホを置いて、淹れたてのコーヒーを飲む。
彼らの不満は、全て、真奈美の愛という名の我慢で成り立っていたからだ。
(いいぞ!いいぞ!浮気女!あの愚民どもを思う存分、蹴散らしてくれ!!)

膝の上で猫が気持ちよさそうに、ゴロゴロとのどをならす。
「‥あぁ、幸せ」
真奈美は、ずっと飼いたかった猫をなでた。

3/24/2026, 4:39:48 PM

雰囲気のいい居酒屋のカウンター。
小百合は、恋多き女、ルミ子と飲んでいた。
ほんわかした雰囲気と謎の色気を振りまくルミ子。
「いいなぁ‥ルミ子は、恋愛テクニックみたいなものがあるの?」
「ないよーそんなもの」
ルミ子がケラケラ笑う。
そろそろ、お開きにしようとしたときー

突然、スーツを着た男が、ルミ子の腕をつかんだ。
「ちょっと、話あるんだけど」
男はイライラしていた。
ルミ子はキョトンとしていたが、思い出したのか、小さくため息をついた。
「電話も出ないし、ブロックしてるでしょ」
男は、一方的に『なんで』と『なぜ』を繰り返す。だんだんとルミ子から表情が消えていく。
(こんなときでも口角は、上がってるんだな)
喧嘩を止めるタイミングを完全に見失ってしまった小百合は、とりあえずビールを流しこむ。
「好きだったわけじゃないよ。ただ、寂しかっただけ。ごめんね」
男の顔がみるみる歪み、目に涙がたまる。カウンターに置いてあったお冷をつかんだ。
バシャン!
ルミ子の前髪からポタポタと水滴が落ちる。
カラになったグラスをバンっと強く置いて、男は無言で去っていった。

暗い公園。
店に居られなくなった小百合とルミ子は、近くの公園のベンチに座っていた。
「ごめんね」
「恋愛もいいことばかりじゃないんだね。びっくりした」
「ふふ‥そうだね。小百合ちゃんに迷惑かけちゃった。ごめんね」
順風満帆にみえる、ルミ子の意外な一面を見た気がした。
小百合は、ルミ子を慰めながら思った。

私には当分、彼氏はできないだろう‥一人でもちっとも寂しくないからなぁ。

3/23/2026, 3:08:50 PM

朝方のファミレス。
向き合って座る女が二人。
「ごめん。圭哉くんと寝ちゃったの」
奈緒は、涙ながらに衝撃の告白をした。
『圭哉くん』は、沙羅の彼氏だ。
「‥本当は嫌だったんだけど、断れなくて」
「‥ずっと、言えなくて苦しかった」
「‥好きなわけじゃないの」
沙羅はフリーズしたまま、親友の言い訳をただただ聞いていた。

沙羅と奈緒は、バイト先で知り合って、すぐに仲良くなった。全てが正反対なのに、なぜか一緒にいると楽しい。
黒や鮮やかな色が好きな沙羅。奈緒は白やピンクを好む。
高身長の細身と小柄な、ぽっちゃり。
沙羅は男女共に友達が多いが、奈緒は友達が少ない。特に、女友達は沙羅だけだった。
男の好みも正反対だった‥はずなのに‥。

沙羅は、困惑していた。
怒りが、湧いてこないのだ。
自分でも驚くほど、彼氏への想いが急激に冷えていくのがわかる。
奈緒の歴代の元カレたちは、口をそろえて、みんな言う。
「俺がいないと、奈緒は死んじゃう」
(‥んなわけないじゃん)
あのときは、馬鹿な男どもが!と、呆れていたが、今、まさに自分が同じように考えてることに気がついた。
「ケーキ頼んであげるから、泣かないで」
沙羅は、タッチパネルを操作しながら、紙ナプキンを渡した。
涙を拭きながら、安堵して嬉しそうに笑う奈緒をみて、沙羅も自然と笑顔になった。

誰にも理解されなくて、いい。
歪でてもいい。
私の愛しい愛しい子豚ちゃん。

3/22/2026, 4:10:27 PM

駅まで徒歩15分。ほぼ直線距離。
スタート!
さぁ!『ミチコシップ』がでました。
出勤時間まで、まだまだ余裕です。
早々に『メガネ』と『ピンクベージュ』を追い抜きました。
おっと、後方から何者かが追いかけてきます。
『トビ』です!
見かけない顔です。
だんだん、追い上げてきます。
だてに、ニッカポッカをはいてませんねぇ。
『ミチコシップ』負けずと大股、どんどん速度をあげていきます。
『トビ』コンビニに入りました。
残念。離脱です。
『ミチコシップ』独走状態をキープ‥かと思いきや、反対の歩道を見落としていました。
マズイ!これは、非常にマズイです。
『ストライプスーツ』こちらをチラチラみています。
競ってるのがバレているようです。
お互い速度を落としません。
ほぼ、並走!ほぼ、並走です。
これは‥‥‥恥ずかしい!!
どうするどうする。
しれっと、ペースを落とすのか、落とさないのか!
駅が見えてきました!
!!!
『ミチコシップ』
勝ちにいったぁああああああ!
もはや、早歩きではありません!バウンディングです!
懐かしい!小学校の校庭でグリコしたときにやっていたバウンディングです!
『ミチコシップ』速い!
『ミチコシップ』速い!
ゴーーーール!!


と、言うのをほぼ、毎日やっています。

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