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3/17/2026, 3:03:45 PM

「さくちゃんのお母さん、亡くなったんだって」
買い物袋をキッチンに置いて、マフラーを外しながら母がいった。
「え?さくちゃんって小学校の?」
「そうそう、さくとくんよ。仲良かったじゃない」
ソファでくつろいでいた雅也は、驚いたが、まだ、高校生だ。身近な人の『死』は、よくわからない。

その日の夜、雅也はベットに寝転び天井をぼーっと見ていた。
雅也のなかで、さくちゃんは、小学生のままだ。中高はなればなれになってから、一度も会ってない。
最後の運動会。リレーのアンカーだった雅也は、バトンを落として最下位。まわりのため息や罵声が聞こえる中、さくちゃんだけは「がんばれ、がんばれ!」と応援してくれたことを思い出した。

さくちゃんの母の葬式。
すすり泣く声が響く。
「まだ、若いのに‥一番下の子は3歳だって」
「これから大変ねぇ」
同情と悲しみに包まれた空気に、雅也の目頭も熱くなり、唾がうまく飲み込めない。
高校生になった、さくちゃんを見た。
周りの大人が泣いてる中、涙をこらえて毅然と立っている。
雅也は、泣くのをぐっと、こらえた。
かわりに、さくちゃんにエールをおくった。
(がんばれ!がんばれ!がんばれ!)

3/16/2026, 3:38:47 PM

カフェで男女が向かい合って座っている。
何分くらいたったのだろうか。
男は、視線をコーヒーカップに落とし、汗をダラダラかいている。
女は、大きい目で男をじっと見ている。
「ねぇ、聞いてる?」
男は頭をフル回転させて考えていた。
女がため息をつく。怒っているようにも見える。
「何で、何も言わないの?」
びくっと男の体が動いた。膝のうえで握りしめた手に力がこもる。
「せ、席を間違えてますよ」
女はメガネをかけた。
「あ、すみません。間違えました。」
悪びれず、さっそうと席を立ち、足早に女は店を出ていった。
一人残された男は、「ふーーー」と、長い息を静かに吐き出した。
「あぁ、怖かった」
ハンカチで汗をぬぐって、冷たくなったコーヒーを一気にながしこんだ。

3/15/2026, 10:43:50 AM

夜空に浮かぶ黒いお椀。
お椀に入れた星は、勢いよく溢れてこぼれていく。
こぼれた星たちは、滝となり、地上に降り注ぐ。

「‥で?続きは?」
さわがしい大衆酒場のカウンター。
灰色スーツの男が白シャツの男に聞いた。
白シャツの男は、ビールグラスをぐいっと飲みほし、長いため息をついた。
「‥続き?続きはない!さっき、オチがないことに気づいてさ、色々と考えたよ〜地上にいる人たちは口をあけて降ってくる星を食べてさ、食べ過ぎで病院に運ばれる〜とか、無限に落ちてくる星に埋めつくされて人類滅亡‥とか」
「なんだそれ」
「そうなんだよーなんだそれって自分でもなって、俺が書いたのって『起承転結』でいう『起』じゃない?!『起』だけ書いて満足してたんだよ!!あぁ、恥ずかしい」
白シャツの男は顔を両手で隠し、体をグネグネよじってもだえた。
「‥まぁ、頑張れよ」
灰色スーツの男は、ビール片手に慰めた。


‥そう、これも『起』しかない。