晴れ、雨、雨、雨、雨、
ずぅーーと、雨。
商店街の一角にある小さなパン屋。
高校1年生の桃花は、長いため息をついた。
自動ドアが開いて、中年女性が買い物袋片手にはいってきた。
「いらっしゃいませー」
中年女性は、菓子パンを数個買って帰っていった。
『ふわふわメロンパン』は、残り3つ。
桃花は、1つだけ見えないよう隣のパンの後ろに隠す。
「いらっしゃいませー」
仕事帰りのサラリーマン、お稽古帰りのおばあちゃん、子供2人とお母さん。
帰りのラッシュ時間。
次々に、立ち代わり入れ替わり、にぎわう店内。
その度に、桃花は、少なくなるパンを1箇所に集め『ふわふわメロンパン』を奥に奥にと隠した。
‥残り1つ。
「‥はぁ、今日もこないか」
桃花は、壁に掛けてある時計をみた。そろそろバイト終わりだ。レジ締めを始める。
自動ドアが開いた。
メガネをかけた大学生がスマホを見ながら入ってきた。
「い、いらっしゃいませー」
桃花は、大学生がパンを選ぶのをチラチラみた。
レジにきた。
「‥メロンパンまだ残ってますよ」
「え?」
驚いた顔で大学生が桃花を見た。目が合う。
(しまった!)
桃花は、嬉しすぎて、声をかけてしまったのを後悔する。
「メ、メロンパン人気なので、最後のお一ついかがですか?」
桃花は、にっこりと笑顔を作って、恥ずかしさを誤魔化した。
大学生は、『ふわふわメロンパン』を買って、軽い会釈をして帰って行った。
大学生の姿が見えなくなると、はりついた営業スマイルを手で、おおい隠す。
(バカ、バカ、バカ、バカ、バカなの!?)
誰もいない店内で、体をよじって猛省する。
また、大きなため息がでた。
「はあーーーーーー‥ふふっ、ふふふ」
ニヤニヤが止まらない。
初めての会話。驚いた顔。可愛い会釈。
反省がやがて喜びに変わり、奇妙な笑い声と歓喜する声が、指の隙間から漏れ出す。
今日は、最高の日。
晴れ、雨、雨、雨、雨、
ずぅーーと、雨、のち晴天なり。
4/14/2026, 6:15:50 AM