失恋をした。
相手は、其れは其れは綺麗な女性なのだった。
花を摘んで、上質な織物を風呂敷に包んで、簪を選んで、さあこの想いを彼女に伝えようと―――した。するほぼ直前だった。
私が恋をした女性は、人間ではなかったのだ。
動物―――鶴だった。
よもや鶴に求婚する者などいやしないだろう。
欧州では、蛙に変えられた皇太子に接吻をする者もいると云うが・・・、なンとも、欧州文化は複雑怪奇だ。
私が吃驚仰天、大きな衝撃を受けたその日の夜―――私の枕元に、何者かの気配があった。
其れは、下記のことを云った。
「人間ではないからなんだと云うのです。彼女を真に想う気持ちがあるならば、生物種の違いなど些事であると、堂々と宣言してみなさい。」
私ははっ、となった。
とても大事なことを云われたような気がした。
そうだ。そうなのだ。
私は彼女を愛しているのだ。
だと云うのならば、人間だろうが鶴だろうが、些細な問題なのだ。
そうして、考えを改め直した私は、翌日、罠にかかって苦しんでいる彼女を救けたのだった。
(鶴の恩返し。前日譚)
純真無垢な子どもに、時として恐怖を感じる。
蝶の羽をブチブチ。
蟻の巣に水を流し込んだり。
犬の尻尾を引っ張ったりね。
自分にもそんな時期があったのかな、と、過去を思い出してみようとするが、当然私もいい歳なので、思い出せることと言えば、お遊戯会で主役をやったことだけだった。
この頃、娘が不気味なこと言う。
「ちょうちょ! アリさん! わんちゃん!」
文字だけなら、一見無邪気に見えるかもしれない―――事実、無邪気なのだろうが、私には恐ろしく思えてしまう。
―――なにもない空間に向かって、はしゃぎながら言うのだから。
純粋無垢な子どもに―――それも実の娘に、時として恐怖を感じることがある。
何もない空間に向かって、きゃっきゃっと楽しそうに笑うのだ。
母親がいなくなって、どこかおかしくなってしまったのだろうか。
今だって、ほら。
「おかあさん! もっとあそんであそんで!」
そういえば、無垢な子どもには霊が視えるらしいと聞くが―――まさかな。
翌日、家の裏手にある山で土を掘り返していると、子犬の死体が出てきた。
(さて、一番怖いのはだれでしょう?)
「せんぱいっ!」「お兄ちゃん!」「後輩くーん!」「せんせー!!」「マスター!」「団長!」
荒廃した世界で、複数人の声に呼びかけられながら目覚める主人公。
ここはどこなのか、彼女たちは一体何者なのか。
記憶を失くした主人公は、彼女たちに支えられながら新たなスキルを得て行く。
そして、やがて肉薄していく―――この世界の真実に。
―――これは、僕と君が織り成す終わりなき旅路の物語。
新感覚ドラマティック恋愛コメディミステリーオカルトSFサスペンス時代劇ノベルRPG! 2222年2月22日配信決定!!
「あなたのこと、待ってるからね!」
原作:後田鳴
ごめん、と謝る私に君は、謝ったんだから別にいいよ、と笑顔で言ってくれた。
昔からドジばかりしていた私を、いつも笑顔で赦してくれた君。
どうして赦してくれるの、と聞くと、君は、
「悪いことや人に迷惑をかけたら、謝るのは当たり前だ。けど、残念ながら万人が出来ることじゃない。そんな行動をね、君はやってのけるんだよ。これって凄いことじゃないか」
だから、僕の怒りは、君の前では風前の灯火のようなものなんだよ。
まるでなんでもないことのように赦してくれた彼に、私はいつから恋をしていた―――。
「ごめん、ごめんなさい」
君が女の子と二人きりで歩いていたから、思わず身体の奥がカッと熱くなって―――自分の感情を制御出来なかったの。
ごめんなさい、ごめんなさい。
私は何度も何度も、うわごとのように繰り返す。
謝ったら、いつも赦してくれる君。
なのに今日は、今日だけは。
どうして、笑って赦してくれないんだろう?
運動会と言えばの音楽。
なんでだろうな。足が速くなる作用でもあんのか?
そんなことをぼんやりと考えながら、頭に赤いハチマキを巻く。
俺の担当は次―――借り物競走だったっけ。
クラスの陽キャ共が率先してやると思いきや、誰も手が上がらないから、発言力の低い俺にお鉢が回ったんだよな。
まあ、勝てと言われているわけではないし、テキトーにやるとしよう。
・・・・・・・・・・・・・・・。
無言で、「好きな人」と書かれた紙を握り締める。
いっそビリビリに破りたい気分だった。
誰だよ、これ書いたやつ。殺す。
「はあああ〜〜〜〜」
思わず天を仰いでいると―――クラス席の方から声が上がった。
声の主は、俺がちょっと良いなと思っている女子だった。
「お題、なんだったんですか? もし私が貸してあげられる物だったら、遠慮なく仰って下さい!」
無邪気な笑顔を見せる彼女は、お題の内容がどんなものなのか、想像していないのだろう。
どうしたらいいんだよ、これ。
おそらく彼女を連れて行ったら、全校生徒の前でお題を読まれた俺達はお笑い草になるはずだ。
俺は慣れているから構わないが、彼女まで巻き込むのはいただけない。
「・・・・・・・・・まあ、いいか」
公開処刑は止めてくれと釘を刺せばいいし、後は彼女に軽蔑されなければラッキーってことで。
ああ、でも。
どちらにせよ。
このお題書いたやつは絶対赦さん。