純真無垢な子どもに、時として恐怖を感じる。
蝶の羽をブチブチ。
蟻の巣に水を流し込んだり。
犬の尻尾を引っ張ったりね。
自分にもそんな時期があったのかな、と、過去を思い出してみようとするが、当然私もいい歳なので、思い出せることと言えば、お遊戯会で主役をやったことだけだった。
この頃、娘が不気味なこと言う。
「ちょうちょ! アリさん! わんちゃん!」
文字だけなら、一見無邪気に見えるかもしれない―――事実、無邪気なのだろうが、私には恐ろしく思えてしまう。
―――なにもない空間に向かって、はしゃぎながら言うのだから。
純粋無垢な子どもに―――それも実の娘に、時として恐怖を感じることがある。
何もない空間に向かって、きゃっきゃっと楽しそうに笑うのだ。
母親がいなくなって、どこかおかしくなってしまったのだろうか。
今だって、ほら。
「おかあさん! もっとあそんであそんで!」
そういえば、無垢な子どもには霊が視えるらしいと聞くが―――まさかな。
翌日、家の裏手にある山で土を掘り返していると、子犬の死体が出てきた。
(さて、一番怖いのはだれでしょう?)
5/31/2024, 11:45:04 AM