運動会と言えばの音楽。
なんでだろうな。足が速くなる作用でもあんのか?
そんなことをぼんやりと考えながら、頭に赤いハチマキを巻く。
俺の担当は次―――借り物競走だったっけ。
クラスの陽キャ共が率先してやると思いきや、誰も手が上がらないから、発言力の低い俺にお鉢が回ったんだよな。
まあ、勝てと言われているわけではないし、テキトーにやるとしよう。
・・・・・・・・・・・・・・・。
無言で、「好きな人」と書かれた紙を握り締める。
いっそビリビリに破りたい気分だった。
誰だよ、これ書いたやつ。殺す。
「はあああ〜〜〜〜」
思わず天を仰いでいると―――クラス席の方から声が上がった。
声の主は、俺がちょっと良いなと思っている女子だった。
「お題、なんだったんですか? もし私が貸してあげられる物だったら、遠慮なく仰って下さい!」
無邪気な笑顔を見せる彼女は、お題の内容がどんなものなのか、想像していないのだろう。
どうしたらいいんだよ、これ。
おそらく彼女を連れて行ったら、全校生徒の前でお題を読まれた俺達はお笑い草になるはずだ。
俺は慣れているから構わないが、彼女まで巻き込むのはいただけない。
「・・・・・・・・・まあ、いいか」
公開処刑は止めてくれと釘を刺せばいいし、後は彼女に軽蔑されなければラッキーってことで。
ああ、でも。
どちらにせよ。
このお題書いたやつは絶対赦さん。
5/27/2024, 10:42:27 AM