あんかけパスタ

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8/27/2024, 2:05:37 PM

XXXX年X月27日
引き続き先輩に代わり日誌を書きます。
端末の電力供給が完了したため内部データを検めました。
最終の報告日以降に収集された画像データも踏まえると、どうやら彼らは『化物』に遭遇していたようです。
最初の遭遇は報告日翌日。雨に佇む人影を発見。
成人男性ほどの背丈であり、シルエットからは異常は見られなかったとのこと。しかし、振り返った人影のフードの向こう側に本来あるべき顔はなく、まるでインクで塗りつぶされたようにぐちゃぐちゃとした暗闇が存在していたと書かれています。
先輩が遭遇したという巨大な鯨骨の化物とは全く異なる形状をしています。先輩に確認をしましたが、それらしい人影に遭遇した記憶はないそうです。主な探索地域が北側だったからでしょうか?少なくとも二体の化物がこの都市には存在すると思ったほうが良さようです。

発見当初人影は顔を確認できる距離にありながらも特に化物に攻撃性は見られなかったようですが、調査員の一人が発砲した直後から様子が一変。一番距離の近い調査員へ次々に襲いかかり、二名の負傷者を出し離脱に成功。
その後暫く、段々と頻度を増しながら人影の化物に遭遇しては退避を繰り返していたようです。その間に一名が死亡しています。
調査団は互いに協力しながら化物の撃退と本部への連絡に力を注いでいました。濃霧の影響か一向に連絡がつかず調査員達の間に焦燥が募っていた頃、ことが起こります。
化物が拠点内部に出没。調査員の混乱の中化物が姿を消すまでに三名が負傷、一名が死亡。
この襲撃を受け、端末の持ち主をはじめとした調査員達に一つの疑念が浮かびました。化物を拠点に招き入れた何者かがいる可能性です。彼らは互いを信用できなくなり、端末の持ち主を含む数名は食料を持ち出して籠城を始めました。
仕掛けられていた罠は人影の化物への対策でもあり、部屋に侵入を試みる裏切り者を仕留めるための仕掛けでもあったようです。罠を態々屋内に用意した理由は寛解しました。鯨骨の化物狙いであればもっと射線は高く、何より拠点の外側へ設置するはずだと薄々感じていましたので。

8/26/2024, 2:40:26 PM

XXXX年X月26日
先輩に代わり僕が日誌をつけます。
怪我を理由に安静にするよう指示したためか、手元の端末を弄って手持ち無沙汰にしていたので、怪我人はさっさと寝ろの気持ちを込めて端末を回収しました。そうしたら、「自分の日記帳が欲しいならそう言えばいいのに」などと頓珍漢なことを宣うので容赦なく寝かせてきました。
さて、先輩が罠に引っかかった後僕は安全確保のため周辺に更に罠がないか確認をしました。幸いにして件の一箇所を覗いて施設内に罠らしい罠は発見されず、以後は支障なく資料の回収ができました。
罠の仕掛けられていた部屋は他に出入り口のない個室になっており、中には調査員の一人であろう白骨死体が一つ、壁にもたれて項垂れていました。
同じ部屋に置かれた箱の中に消費済みの保存食などが見受けられたことから察するに、どうやらこの人物はこの部屋で籠城をしていたようです。手元に転がった拳銃と、頭蓋骨に残った弾痕からするに、最後は自決であったと思われます。
調査員の衣服を調べたところ、ポケットから端末を入手しました。目立った破損はなく、充電さえすれば中身を検めることができるでしょう。
その間に他の部屋から発見された資料に目を通しておこうと思います

8/25/2024, 9:26:51 AM

XXXX年X月25日
油断した。調査団の拠点に罠が仕掛けられているなど想像もしていなかった。人感センサーと銃を組み合わせて作られた即席のトラップが、拠点内部に仕掛けられていた。
未知の怪物が闊歩する都市なのだからそりゃあ警戒もしただろう。あの巨大な鯨骨相手にこの程度の銃火器でどうにかなるとも思えないが、気休めでも安全な場所を確保したい気持ちは分かる。
負傷者一名。私だ。側頭部を銃弾が掠め出血。直前に銃口に気付いたお陰で咄嗟に横へ動けたのが不幸中の幸いだった。二人揃って重傷を負うようなことがなくて良かった。
罠を後輩が解除し、頭部の応急手当の済んだところで探索を再開しようとしたところ、後輩に絶対安静を言い渡されてしまった。今は後輩が資料を漁っているのをやるせない気持ちで見守っている。再会してこのかた、情けない所しか見せられていないな。

8/24/2024, 7:51:54 AM

XXXX年X月24日
今後の調査の方針を決める。後輩の提案により、まずは我々より以前にこの都市で活動を行っていた調査団の拠点を目指すこととなった。
当時の調査団の報告書は本部に保管されていたものの、私がこうして提出する報告とは別に記録を残しているように、最終の報告以降の調査で収集された情報や提出されていない個人の記録が拠点に残ったままとなっている可能性がある。
何より……調査団が消息を絶った原因の一端が分かるかもしれない。
「住民消失の謎に迫るためにも、我々の生還率を上げるためにも、この調査は必要でしょう。……思い付かなかったなんて言いませんよね先輩?」
後輩の視線の圧が強い。下手な誤魔化しは効かないぞと言わんばかりだ。どう返事をしても後が怖いので、代わりに調査に注力することとした。
拠点を出てすぐに異常に気付く。空気がおかしい。
いつも通りの霧に鼻を突く異臭が混ざっている。
磯の香りだ。
異臭は河に近づくほど強くなった。この河を東へ下れば海へ続くと聞いているが、これほど強力は磯の香りを感じたことはこの都市に来てからまだ一度もない。
原因を調査すべきか逡巡するも、嫌な予感が背を登ってくる。直感だが、異臭がするうちは河を渡らない方が良さそうだ。そう告げると後輩も同意見だったようで了承を得られた。
幸いにして調査団の拠点へは橋を渡る必要もない。予定通り調査団の拠点を目指すこととした。

8/22/2024, 11:30:35 PM

XXXX年X月23日
後輩の到着は予定通りの時刻に問題なく完了し、昨日は半日かけて拠点への物資運び込み作業を行っていた。
後輩は記憶に違わぬ優秀な男だった。
機器の使い方を一通り教えれば早速使いこなし、今は拠点にて管理している資料類を読み直しながら調査候補地を書き出している。時折疑問を投げ掛けてきては私が返答するというのを繰り返しているが情報の飲み込みが早い。慣れた相手同士だからというのもあるだろうが、まるで初日から共に調査を行っていたかのように受け答えがスムーズだ。この調子なら明日からでも問題なく調査開始できるだろう。
優秀さの裏返しのように癖のある性格をしているのが難点だが、それに目を瞑ってもおつりがくる。
こんな男をよく、ここに来させたものだ。

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