あんかけパスタ

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8/21/2024, 11:45:13 AM

XXXX年X月21日
拠点としている宿泊施設の屋上にて作業を行う。初日に一度足を運んだきりであった屋上だが、先日の化物の通過の影響は受けていないようで物が散乱しているということもなく綺麗なものだった。
屋上の開けたスペースに目印用の塗料で大きく円を作る。天候が荒れなければ明日の正午頃、これを目指して後輩がやってくる。濃霧の場合を考慮して、円の周囲に照明も複数設置した。気休めだが多少は発見しやすくなるだろう。
あの後輩の事だからここまで用心しなくとも鳥のように優雅に飛んで来るだろうが。

8/20/2024, 11:40:34 AM

XXXX年X月20日
本部から指示が届いた。基本的にはこれまで通り、廃都の探索と情報収集に従事し、この地が廃都市となったーーこの都市の住民が忽然と消失した怪現象の原因究明を行う。これは想定通りだ。
ただし、一点。従来とは異なる事項が追加された。
増員だ。本部より職員一名を補佐として送るという。
すぐさま危険性を訴え考え直すべきであると進言したが、本部の決定は覆らなかった。ただでさえ人間の消失という危険な現象が発生する上、更に『幻創病』とその化物について報告をしたところだというのに。彼らは一体何を考えているのだろうか。
増員として記載された見知った名前が憎らしい。
諦めませんから、などと捨て台詞を行って私がさよならを言う前に部屋を出て行ったあの後輩だ。こいつもこいつで何を考えているのだろうか。

8/19/2024, 10:10:57 AM

XXXX年X月19日
少し間があいた。これまで収集した情報を報告書にまとめるべくここ数日を作業に充てていたためだ。
報告書は先程無事送信完了した。あまり得意ではない作業だからどうしても時間が掛かっていけない。睡眠時間を削ったため、後で仮眠を取ろうと思う。
本部から次の指示が届くまでまだ暫く掛かる。その間に、これまで探索した先と入手した情報についてこちらにも記録を残しておこうと思う。

北側地区の診療所……『幻創病』患者のカルテ
北側地区の病院……『幻創病』患者のカルテと病気に関する資料数点
警察署……『幻創病』が原因と思わしき怪事件の調書。カルテの患者と同名の人物の記載あり
時計塔……入室の形跡も電力の供給もないことがわかった。音の鳴った原因は不明のまま
『幻創病』……患者の無意識に抑圧された感情や記憶が化物を生み出す病気
謎の化物と二度遭遇。一度目は北側地区。二度目は拠点のすぐ傍を通過。鯨骨に似た骨だけの巨大魚が霧の中を泳いでいる。幻創病が生み出すという化物か?

さて次に向かうのはどこにすべきか。空模様に左右されるが少し遠くまで行ってみてもいいかもしれない。どちらにせよ、本部からの指示次第だ。

8/15/2024, 10:49:25 PM

XXXX年X月16日
嫌な夢を見た。真っ暗な場所に一人佇んでいる夢だ。波が水を運んで足首まで水に浸かっていた。灯り一つもない夜の海にいるようだった。そこにあの音がーーガラガラと骨のぶつかる音が聞こえてくる。背後から聞こえた音は横を通過し、やがて四方をぐるりと囲う。姿は見えない鯨骨の化物が私を中心に据え弧を描いて回っている。音は獲物を逃さぬように段々と距離を狭め、そして。
そこで目が覚めた。
気付けば朝になっていた。
あの化物の夢を見たのは、眠る直前まで映像の確認をしていたからだろうか。叶うならもう見たくはない。

8/14/2024, 9:14:53 AM

XXXX年X月14日
11階建ての時計塔を登るのは流石に骨が折れた。昇降機が稼働していればどれほど楽だったろうか。電力供給など見込めない廃都では地道に階段を登るしかなく、登り切った頃には気力も体力も使い果たしていた。
暫く休息をとった後、鐘楼の周辺を探索する。やはりというべきか鐘楼のある階層に最近人が出入りした形跡はなく、時刻と連動して鐘楼を鳴らすための機械も通電していないようで起動する様子はなかった。
ならば、一体どうやってこれほど大きな鐘が鳴ったのだろうか。

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