XXXX年X月24日
今後の調査の方針を決める。後輩の提案により、まずは我々より以前にこの都市で活動を行っていた調査団の拠点を目指すこととなった。
当時の調査団の報告書は本部に保管されていたものの、私がこうして提出する報告とは別に記録を残しているように、最終の報告以降の調査で収集された情報や提出されていない個人の記録が拠点に残ったままとなっている可能性がある。
何より……調査団が消息を絶った原因の一端が分かるかもしれない。
「住民消失の謎に迫るためにも、我々の生還率を上げるためにも、この調査は必要でしょう。……思い付かなかったなんて言いませんよね先輩?」
後輩の視線の圧が強い。下手な誤魔化しは効かないぞと言わんばかりだ。どう返事をしても後が怖いので、代わりに調査に注力することとした。
拠点を出てすぐに異常に気付く。空気がおかしい。
いつも通りの霧に鼻を突く異臭が混ざっている。
磯の香りだ。
異臭は河に近づくほど強くなった。この河を東へ下れば海へ続くと聞いているが、これほど強力は磯の香りを感じたことはこの都市に来てからまだ一度もない。
原因を調査すべきか逡巡するも、嫌な予感が背を登ってくる。直感だが、異臭がするうちは河を渡らない方が良さそうだ。そう告げると後輩も同意見だったようで了承を得られた。
幸いにして調査団の拠点へは橋を渡る必要もない。予定通り調査団の拠点を目指すこととした。
8/24/2024, 7:51:54 AM