『沈む夕日』
※BL 二次創作
青空を赤く染め上げながら、太陽がゆっくりと沈んでいく。
それを見ながらきみがぽつりと「お前みたいだな」と言った。
僕の髪の毛が赤いから、ただそれだけなんだろう。僕に聞かせるつもりもなく、自分が口に出していることにすら気がついていなそうだ。
だから僕は何も返事をしなかった。
静かに心の中でただ願った。
これから先もずっと、きみが夕陽を見るたびに思い出すのが、僕ならいいのに。
青空を見上げるたびに、ぼくがきみの青い瞳を思い出すように。
『君の目をみつめると』
※BL 二次創作
きみと、やたらと目が合うことに気がついた。
目が合う、と言うことは、僕がきみのことをたくさん見ているということであると同時に、きみもまた僕のことを見ている、そういうことだ。
僕は何故きみを見てしまうのか、考えてみたらありきたりな答えに行き着いてしまった。行き着いてしまうと、不思議と納得できて、僕は素直に自分の気持ちを認めた。
きみは?
きみは、どうして僕を見るんだろう。僕と同じ理由ならいいのに。でも、素直じゃないきみに聞いてもきっと、目を離すとお前は何かやらかすから見張ってるだけだ、とか言われそうだ。
何とかして理由を聞き出したい、と思いながらきみのことを見ていると、ほらすぐにきみが僕を見た。
赤みが強い綺麗なすみれ色が僕を見ている。可憐なすみれの花と、粗暴で凶暴なきみとではとても似ても似つかない。でも、すみれは見た目に似合わず繁殖力が強くてしぶとい花でもあるらしい。そんなところはきみに似ているかもしれない。
「何笑ってんだ?」
「きみとはよく目が合うな、と思ってね」
策を弄しても、聡いきみはすぐに見抜いてしまうだろうから、正攻法で攻めることにした。
「お前がこっちを見てくるからだろ」
「それは否定しないよ」
「否定しないのかよ」
「ああ。でも、目が合うってことはきみも僕を見てるわけだろ? 理由を教えてくれないか?」
「……お尋ね者の自覚もなく、すぐに騒ぎを起こそうとするお前を見張ってるだけだ」
予想通りの返答だ。さて、ここからどう切り崩していこうか、と考えるよりも先に、
「それと、お前を見てると飽きないからな」
そう言いながら、きみが僕との距離を詰めた。きみの右手が僕の頬に添えられる。
「ついでに、好きだから、だ」
すみれの瞳が閉じられて、唇が重ねられた。
「ついで、なんだ」
「ああ。ついで、だ」
楽しそうに笑ったすみれの瞳が甘くとろける。
僕はなんだかそれを見るのが急に恥ずかしくなって、きみの胸に顔を埋めた。
『星空の下で』
東の空に、赤い星が輝いている。周囲の星より少し明るいくらいで、誰もが知るような一番輝く星ではない。
だが、温かな光に目を引かれて何故か魅入ってしまう。そんなところがあいつに似ている、そう思っていた星だ。
昔、その星を中心に適当に星座を作ってあいつに贈った。本当にただの思い付きで、何の意味もない戯れだった。
けれど、オレの指さす夜空を見上げるあいつは、とても嬉しそうに黒い瞳をガキのようにきらきらと輝かせていた。それがとても綺麗で、あの輝きは三十年経った今でも色褪せることなく思い浮かぶ。
その星座のすぐそばに、あいつがオレのために作った星座も青白く光っている。
星の輝きはあの頃と何も変わらないが、夜空を見上げるオレの隣にお前はいない。オレはたった一人で静かに夜空を見上げている。あと幾度、一人で夜が明けるの繰り返せばお前に会えるのか。一人の夜がいつ終わるのか。
傭兵仲間のスカした野郎が、時間は薬だと、だいぶ前に言っていた。
お前がいなくなった後に、知り合ったり仲間になったヤツはたくさんいた。三十年も経つ内に、そいつらを何人も見送ってきた。お前に出会う前の大昔には、大切な家族も仲間もいた。
実際、あの野郎の言う通り、時が経てばそれらはみな思い出となって昇華されていった。
ただ一人、お前だけが色褪せない。
お前に会いたい気持ちはいっこうに変わらない。変わらないどころか、月日を重ねれば重ねるほどに、会いたい気持ちが積み重なって、オレは何度もそれに圧し潰されそうになっていた。
お前を失った悲しみは、傷口が癒えることなくいつまでも痛んで、いつしかじくじくと膿んでしまった。
それだけお前がオレにとっては特別な存在なのだと、この痛みもこの想いも、死ぬまで抱えて生きていくしかないのだと、とうに覚悟も決めてある。
それでも、こんな星の綺麗な夜は、お前のことを思い出して、どうしようもない会いたい衝動に傷口を深く抉られる。そんな痛みすら、お前がくれたものだと思うと愛おしい。
棺桶に片足突っ込んだジジイが何を言ってやがると、自身でも笑ってしまうが、三十年もお前への恋に囚われて、挙句の果てには死後の再会なんざ信じて生きてきたんだ。拗らせてしまうのも仕方がないと今では開き直っている。
こんなオレをお前が見たらなんと言うのか。きみは変わったなと驚くのか、きみらしいと優しく微笑むのか。
早く、お前に会いたい。
そう思いながら、オレはまた赤く光る星を見上げた。
『それでいい』
※BL
それでいい。
それが僕の幼馴染の口癖。
何を聞いても大体、それでいい、で返ってくる。
無責任というより、本当に興味がないからなんでもいいらしい。
食べるものも、出かける先も、一緒に遊ぶゲームも、進学先の高校も、僕の提案で彼が怒ったり不満を言ったりすることはなかった。
そんな彼が、唯一自分で選んだのが僕らしい。
「お前がいい。これからの長い人生を誰かと一緒に過ごすなら、他の誰でもなくお前がいい」
『1つだけ』
※BL
「もし、何か一つあの世に持っていけるとしたら、きみは何にする?」
「酒」
「きみらしい答えだ」
「そういうお前は」
「きみを連れていけたらいいのに」
「道連れにする気かよ」
「そうなっちゃうかな、やっぱり。うーん、さすがに一緒に死んでくれとは言えないから、別なものを考えよう」
「いいぜ」
「え?」
「一緒に死んでやる」
「……そっか、ありがとう」
そう嬉しそうに笑った癖に、あいつは一人で死んだ。オレに生きろと呪いの言葉だけを残して。