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5/28/2024, 9:28:55 AM

夜の荒野を駆けていく。宵闇に紛れている彼の姿は全身が黒一色。誰にも悟られるこのなく任務をこなす影の使者。毎夜血に塗れてなおこうして心を保っていられるのか。
それはありふれた日常を享受するということだった。
ある日、彼はいつもの如く雇い主の命じたとおりに指定された相手を殺そうとしていた。そこで見たありふれた日常が彼に心を取り戻させた。
いつか自分のお役目が終わる日が来る。その時こそあの光輝く日常を享受できるとそう勘違いしていた。
その出来事から数十年が経ち彼に引退の時期が訪れた。まだ彼は夢を忘れてなく遂に終わると意気揚々と最後の任務へと繰り出した。
いつもの通り指定された土地へ行くとただの空き地だった。不思議に思って地図をかくにんしていると不意に風切り音が聞こえて来た。
咄嗟に自分のクナイで弾いた。そこでようやく飛んできたものが分かった。それは自分が幼少の頃から見慣れて来た里のクナイだった。彼は理解した。
なぜ里に老いた忍びがいなかったのか。
それはこうして里のものたちで処分しているからだったのだ。
だが理解したところで手遅れだった。
彼の老いた体では2回目の攻撃はかわせなかった。
クナイが心臓に突き刺さる。
大量に口から血を流し彼は血の海に沈む。
結局は自分の業からは逃れられなかったのだ。
彼は最後に霞む視界で夜空を仰ぎ見て一つのことを願った。彼を今まで照らし続けていた月は月蝕によって影もなかった。
お題月に願いを込めて
ここまで読んでいただきありがとうございます。
更新が遅れてすみません。

5/9/2024, 2:06:13 PM

春の風が優しく吹いている頃、私は揺籠の中で揺れていた。特にやる事もなくそれが暇という事を知らない私は不快と感じる事なく来る日も来る日も寝て起きて食べてまた寝るというサイクルを繰り返していた。
ずっとこのままでいいなと思い始めた頃、私は己の身長くらいもある大きい腕に抱き抱えられた。
このままだと連れ去られてしまうかもしれない。
そう思った私は堪らず大声をあげて泣いた。
すると大きい腕の男はワタワタと忙しなく顔を変え奇声を発してあやそうとして来た。
それがより一層不気味に思えてまた泣き出して、するとあやすことを諦めた男は急いで目的地らしい場所へ向かって駆けていった。
しばらくすると私の視界はいつも見た色の乏しい空間ではなく様々な色に富んだ空間を映していた。
それだけでなく知らぬ音、少し湿っている空気、見たことのない動物。
その全てが私を感動へと導いた。
声も出さず涙を流す私を胸に男は
「お前にこれが見せたかったんだ」と言い聞かせて言った。
その美しき光景は私はその男が父と知り自分で歩み言葉を発して1人で生きていける年になってもまだ鮮烈に一つの大切なフィルムの様に脳裏に焼き付いていた。
故郷を離れ、仕事に行っていた私は再び故郷に帰って今度は自分の足で歩いてその光景を見て息を吸った。

お題忘れられない、いつまでも
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
更新がかなり遅れてしまって申し訳ありませんでした。これからもまだまだ半人前ですが私の作品に目を通していただけるとありがたいです。

5/2/2024, 11:05:24 PM

砂漠の中で男が歩く。男は機械だった。
ある研究所によって開発された実験物なのだ。
これも実験の一貫である。それは心を作ること。
最初の街では男は不適合者として見られる馴染む事は出来なかった。
そして今に至る。バッテリーも切れかけている。意識がブラックアウト仕掛けている中、目の前に街を見つけた。
そのまますぐに街へ辿り着き、食べ物による充電を始め命を取り留めた。
街の人々は気さくな人だった。無感情な男を快く迎えてくれた。
すると段々と男に感情が芽生えた。
男の心は感情という虹色に染まった。
お題カラフル
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
遅れてすみませんでした。

4/30/2024, 1:38:23 PM

幾多の者を阻みその命を絶ってきた試練をたった1人で、成し遂げた者がいた。
その男は今では顔も好きなものも生まれも名前すら知られていない。
だがその男は居たという存在証明を人々は表していう。「楽園の開祖」と。
神話の時代は終わり、時は流れ楽園暦3514年。
人々は何も苦労をせず人生を謳歌していた。
この世界では、食べるものに困らない。
食べるものは念じれば出てくるからだ。
娯楽にも困らない。外へ行けば無料の無人の遊び場がありそこで何でもすることが出来る。
そして寿命にも困らない。人々は一定の年齢を超えると好きな時に死ねる。つまり死にたく無かったら無限に生きていられる。
楽園が消滅することもない。いつもアカシックレコードが造られた当初の姿をリピートしているからだ。
最初は世界中、全員が歓喜に打ち震えて楽しんでいた。だが時が経つにつれそうでない者も現れた。
どうしてかと聞くと不自由ない人生なんてすぐに精神の方に限界が来てしまうぞと口早に捲し立てる。
誰も耳を傾けないのが癇に障ったのか、やがてデモは反社会運動と変わり、果てはテロリストとなった。
望み通りの世界を創り出すアカシックレコードを破壊するために。
誰も望んでない偽善の英雄。その名は「エデン・オブ・デストロイヤー」
これはマジョリティーとサイコパスの存続をかけた一進一退の攻防である。

お題楽園
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
なんか宣伝みたいになってすみません。
またどこかで気が向いたら書くと思いますので今後ともよろしくお願いします。
追伸更新遅れてすみませんでした。

4/29/2024, 4:38:04 AM

「永遠」この力を手に入れる為、人は何でもするだろう。実際、そんな人の末路を幾度も見てきた。
大抵は身を滅ぼしたり精神が狂ってしまったりしてしまったのが大半だった。
ただ1人、俺だけを除いて。
かつて俺はある施設のモルモットだった。
何人もの仲間達が得体の知れない薬を投与されて死んでいった。30人ぐらいの仲間達が死んだだろうか。
とうとう私の番になってしまった。生まれた頃から抵抗する事を知らなかったのでさして抵抗せず薬を投与された。結果から言うと実験は成功した。
俺は何が何だか分からなかったが、施設の人達は踊らんばかりに喜び、幾度なく俺を心のこもってない上っ面の言葉だけで褒め称えた。
しかし当時の俺は他の反応なんか知らなかったので純粋に喜んだ。こうして夜は更けた。
次の日、俺が目を覚ますと施設は燃えていた。辺りを見渡すとベットも布団も服さえ無くなっていた。
施設の人たちも例外なく燃えていたが何も感じなかった。結局は自分をモルモットとしか見ていないクズには感情は抱かなかっのだろう。
そして燃える中で俺は気づいた。熱くない。痛くない。まだ残っていた食糧庫に走って肉を食べる。
味も感じない。
原因はすぐに分かった。俺が不死身になったからだ。
生命の危機を感じる必要が無くなったから痛覚などが無くなってしまったのだ。こうして俺の生きると言う労役が始まった。
最初の50年間ぐらいは楽しかった。
施設の跡地を出て最寄りの街へ行くと親切な人が俺と友達になってくれた。毎日、馬鹿騒ぎして無くしたもののことなど忘れてしまった。
でもすぐに終わりは訪れた。
最初の50年から30年ほど経つと俺の知り合いは全員死んでしまった。
それを何千回と繰り返すと永遠とは一種の罰なのではと考えるようになった。でも俺はこれ以上苦しまないために人と関わる事を辞めた。山で1000年程暮らしていた。のんびりとした生活で永遠もいいかも知れないと思うようになった。けれどこの生活も終わってしまった。山に来訪者が現れた。その来訪者の男は勇者と名乗った。そして俺に一緒に魔王を倒さないかと聞いてきた。俺は初めは断っていたが、勇者が幾度となく誘ってきて結局は折れて勇者と共に山を出た。
彼らとの旅は短かったが俺の記憶データを最も占めているのがこの旅の記憶だ。
そして勇者に自分は不死身でそれ故に悩んでいると言った。すると勇者は答えた。
「別にいいんじゃないんですか。人と関わっても。死んでもその人の記憶が消えるわけでもないしその楽しかったものが変わる訳でもない。だから気楽にいきましょうよ。因みにこういう考え方を持つ人を刹那主義者って呼ぶんです。」
刹那主義者。その言葉は俺の中で響き続けている。そして現在俺は世界一長い刹那主義者である。 

お題刹那
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

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