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12/15/2024, 2:41:38 PM

幾星霜、という言葉が浮かぶほどに私は長い間、何かを待っていた。
もう私の老化した脳からは風化してしまった何かを私は待っていた。
今日もいつもの様に待っていた。
その時、枯れ木のような肌に水が染み渡る感覚があった。
雪だった。
雪は私に身を切るような寒さを与えなかった。
ただ私の全てを包み込むような感覚があった。
私は全てを思い出した。
私は雪を待っていたのだ。
遠い遠い昔、友達が言ったのだ。
雪をもう一度降らすと。
当時、地球ではもう温暖化が取り返しのつかないところまで来ていた。
緩やかに滅びゆく世界の中でその友達は雪を取り戻すとそう私に言ったのだ。
それは世界を救うというのと同義だった。
私も一緒に取り戻すと言った。
けれど友達は首を縦には振らずに笑って言った。
お前は待ってろと。俺が起こした偉業を記録して世間に広めてくれとそう言った。
だから私は雪を待っていたのだ。
その次の日から音沙汰のなかった友達との約束を果たすために。
そして私は踵を返して街に戻った。
私の誇らしい友達を自慢するために。
お題雪を待つ
ここまで読んでくださってありがとうございました。

12/12/2024, 2:13:10 PM

心ってさどこにあると思う?
そう聞くと大抵の人たちは脳だって答える。
でも少数だけど心は心臓にあるっていう人だっている。
僕は後者を信じたい。
なぜなら僕の友達は心臓なんだから。
勘違いしないで欲しい。心臓の鼓動で勝手に妄想してイマジナリーフレンドを作っている可哀想なやつじゃない。
僕の心臓はもうこの世にない。
一年前の秋ごろに事故に遭った。
車に下校してる時、はねられて。
僕は体の全身が折れたりしていたけど生きていた。
けど僕と一緒にいた友達は即死だった。
すぐに救急車に運ばれた。
僕は緊急治療室へ。友達は死亡判定で安置室へ。
僕の方ももう死にかけだった。
心臓の動脈が何箇所も衝撃で破裂していたんだ。
なんとか生かそうと医者達が大勢で僕の延命措置をした。でも心臓を移植しなければ助からなかった。
普通なら助からなかった。でもあったんだ。
すぐ近くに綺麗な心臓が。友達の心臓は健康だった。
頭を打ってしまって死亡したから。
友達の遺族は僕に心臓を提供してくれた。
きっと友達ならそうしただろうからって。
それで僕は今、生きている。
精神の心と肉体の心。
どちらにも意思が宿っていると僕は信じたい。
僕の友達は僕の心臓として生き続けてるって。
じゃないと悲しくて耐えられないからさ。
だから僕は信じるんだ。
お題心と心
ここまで読んでくださってありがとうございました。
更新遅れてすみません。

11/21/2024, 2:17:47 PM

目の前で人が撃たれた。
一瞬のことだった。
私は目を見開き尻餅をついた。
撃たれた人が倒れ込む。
血溜まりが広がり私の足元までくる。
撃たれた人が私に向かって手を伸ばす。
しかし私の足は凍ったように動かなかった。
少し経って伸ばした手が落ちる。
私が我に返り救急車を呼ぶ。
少し経ってなりひびくサイレンの音。
すぐにその人は運び込まれた。
しかし私が見たその人の腕は固まったように強張っていた。
それから数日が経った。いまだに強烈に残るあの記憶は絶えず私を蝕んでいる。
孤独なのが絶えられずテレビで誤魔化している。
ニュースでは数日前の銃「殺」事件のことを報道しているらしくその見出しから被害者の死を悟った。
耐えれずテレビを消す。
ネットを見るとどこから漏れたのか救急車を呼んだ私についての問題点についてバッシングしていた。
例えば「対応が遅い」「何やってるんだ。」「わざと見殺しにしたのでは?」「俺ならもっと上手くやる」
などだ。
どれもこれもが鋭い刃となって私を斬りつけた。
心がズタズタになり落ち込むのと共に憤りを感じさせた。
よってたかって言ってるけどお前らもその時間のうのうと暮らしているくせに。周りの奴らだって私以外誰も野次馬ばかりで助けようともしないし結局は私に責任なんてないじゃないか。
悪いのは犯人であって私でもなくお前らでもない。
誰だってそうだ。責任なんて人が創り出した虚構なのにそれをあくまで世界の理の如く振る舞う。
正しさなんかどうでも良く責任なんてどうでもいい。
そんなのが分からずたって現に世界は動いてるじゃないか。
お題どうすればいいの?
ここまで読んでくださってありがとうございます。
更新不定期ですみません。

10/22/2024, 2:08:18 PM

始まりはいきなりやってくるものだ。
死という終わりが突如来るようにまた始まりも突発的なのである。
私のように。
私の目の前には何もないまっさらな空間がある。
そしてその中心地には骸骨の仮面を被った黒ローブの人物がいる。
そいつは言った。
「私は死神。君を助手にしようとしているものだ。」
死神?助手?突然現れた単語に豆鉄砲を喰らったようになる。
数分経って私は気を取り戻す。
そして口をひらき死神からさまざまな情報を聞き出した。
曰く死神は名前の通り死を司り人の命を刈り取る者である。
曰く死神は人手がないから私に助手として働いてもらいたいらしい。
そして最後、私はどうやら死んだらしい。
私にはあまりそんな感覚がないが死神が刈り取ったらしい。
そして死神が答えを聞いてくる。
そして私は「はい」と答えた。
これが私の死神助手の第一歩だった。
お題始まり
ここまで読んでいただきありがとうございます。
更新随分していなくてすみません。

10/5/2024, 11:00:50 AM

カツッカツッ、杖を使いながら暗闇をただ歩く。
いつものように耳から下げた鈴の音を頼りに障害物を避け、人を避ける。
そして街の外れにある安い雑貨屋で日々の生活用品を買い求める。
それが私の日常だった。
常に暗闇にいる私はかつて貴族であったが世間体を気にした親が私から貴族の称号を剥奪し、今はただの根無し草である。
音だけしかない私の世界では碌な暇つぶしもできずにただ遠い日の思い出を振り返るだけである。
今日、思い出したのは自分が貴族であった頃の記憶だった。華やかなパーティーで私は美しい音色に耳を傾けながらウェイトレスが持ってきたワインを飲んでいた。既に全盲だった私は親をはじめとした貴族から疎遠にされており、誰とも私は踊ったことがなかった。
その日も同じだろうと思って自分から誘わずに傍観を決め込んでいた。
そんな私に誘いかけてくれた人がいた。
顔もわからないし装いもわからない。
ただラベンダーの香りと鈴を鳴らすような綺麗な声だけ覚えている。
そんな懐かしい日を思って私は1人乾杯した。

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