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チッチッチッ…。
父の代から置いてある古時計が時を打つ。
もう数十年動き続けているがまだその針に狂いはない。
決められたテンポで打つ時計の秒針が私の万年筆の音と重なる。
チッチッカカッチッカッカッカッチッチッチッカッカッ…。
文字を書く手が止まる。万年筆のインクが無くなってしまったのだ。ペン先のインク窓を開けてインクを注入する。文房具好きにとって至福の時間だった。
インクの装填が満タンになるとまた文字を書き始める。
ひたすら書いていると書くための言葉が頭から溢れてきて勝手に手が動く。
その言葉の奔流を捉えて故意的に堰き止めて小出しにする。
そうして書いた文の表現を正す作業をしていると陽光が私の目を差した。
時計を見ると針はすでに日を跨ぎ朝の5時を回っていた。
しかし私は休眠を取らず書き続けた。
更に針が動いて7時を回る頃に私はようやく書く手を止めた。席を立って台所に行くと棚からティーバッグを取り出してポットにお湯を注ぐ。その間にもう一度己が書いた文を読み直す。読み終えるとカップに紅茶を注いだ。
湯気が立ち上って共に紅茶の芳醇な香りが鼻を通る。口をつけると心地よい苦味と先と同じく紅茶の風味が私の喉へと滑っていった。
今日は土曜日で妻も子供も遅くまで寝ている。
この1人だけの時間が私にとっての平日の終わりを告げていた。父代からの古時計は規則正しく控えめに音を鳴らしていた。
お題静かな夜明け
ここまで読んでいただきありがとうございます。
随分と久々な更新になってしまいました。
明けましておめでとうございます。

2/6/2025, 2:28:51 PM