幾星霜、という言葉が浮かぶほどに私は長い間、何かを待っていた。
もう私の老化した脳からは風化してしまった何かを私は待っていた。
今日もいつもの様に待っていた。
その時、枯れ木のような肌に水が染み渡る感覚があった。
雪だった。
雪は私に身を切るような寒さを与えなかった。
ただ私の全てを包み込むような感覚があった。
私は全てを思い出した。
私は雪を待っていたのだ。
遠い遠い昔、友達が言ったのだ。
雪をもう一度降らすと。
当時、地球ではもう温暖化が取り返しのつかないところまで来ていた。
緩やかに滅びゆく世界の中でその友達は雪を取り戻すとそう私に言ったのだ。
それは世界を救うというのと同義だった。
私も一緒に取り戻すと言った。
けれど友達は首を縦には振らずに笑って言った。
お前は待ってろと。俺が起こした偉業を記録して世間に広めてくれとそう言った。
だから私は雪を待っていたのだ。
その次の日から音沙汰のなかった友達との約束を果たすために。
そして私は踵を返して街に戻った。
私の誇らしい友達を自慢するために。
お題雪を待つ
ここまで読んでくださってありがとうございました。
12/15/2024, 2:41:38 PM