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4/27/2024, 10:24:34 AM

友に聞かれたことがある。
「お前は何の為に生きているんだと」
私は答えた。「私は矛盾に生きているのだ。」
友は感嘆した様子で「もう良い」と部屋を出て行った。
その時から私は世捨て人となった。もう良い。俗世など行く必要はないのだ。私はここで生きここで死ぬ!と誓った。
だが現実は違う。誓いは破られた。何故なら私は今、人が溢れる雑踏に立っているのだから。
こんなこと、一体、誰が想像できただろう。私も思いもしなかった。
私はただ自宅の一部屋しかない汚部屋で一生を過ごすと見目麗しい月に誓ったはずだ。そんな籠城の意を決した世捨て人の私が何故、外を練り歩いて居るのか。それは私の居城に届いたあるバカップルの一言であった。
「こんな楽しいお祭りに参加しない人なんているわけないよね。仮にいるとするなら絶対ヒキニートだろw」といった内容であった。この一言だけなら大した意味はない。しかし「奇人、変人、道化、愚者、馬鹿、阿保、間抜け」、この世に存在する侮蔑の言葉を欲しいままにした過去を思い出して決心したのだ。
こんな言い掛かりに屈して良いのか。私に対する疑念を払拭せずそれでもお前は世捨て人なのか。そう私は奮い立ち雄々しく外へと踏み出し今に至る。
大事なことなのでもう一度言いたい事は私が有象無象のヒキニートでバカップルの一言で深くその脆いガラスの心を砕け散らし友に散々に馬鹿にされてきた過去を思い出し僅かな己の虚栄心を震わせたからでは無いのだ。
確かに私は親から金をもらっているがそれは仕送りではなく私の人徳に深く心を打たれて是非とも私を支援したいが故の金を私がその心中を察して何も言わずに受け取っているに過ぎない。
親からの嫌悪を宿した顔も「さっさと就職しろ!このバカ息子」という言葉も全て私の心理的リアスタンシスを活性化させ、働かせまいとしているからこそくるものなのである。
そして我が居城に籠城しているのも私が世捨て人だからであり、世俗に塗れた人間たちを儚んで物忌しているだけである。
つまりこの二つの理由から私はヒキニートではなぁい!という主張を更に確固たるものとする為こうして歩いているのだ。
手始めに肩慣らしといこうか。
私は金魚すくいとデカデカと書いてある店に意気揚々と入っていった。だが金魚が掬えぬ。何だ、この薄っぺらい紙はこれでは金魚が取れんではないか!
どうすればもっと多く金魚たちをすくえるのだろうか。私は悩みそして気づいた。
わざわざこんなチンケなものを使って取る必要はないじゃないか!早速、案を実行した。それは容器でそのままダイレクトに金魚を掬うことである。思惑通りサクサクととって気分が上がっていると店の主人が何やら怒った様子で私をつまみ出してしまった。全く持って無礼千万な店である。客人をつまみ出すとは!
だが私は復讐することを諦め別の場所へと赴いた。
少し歩くとたこ焼き店があった。
するとその瞬間、私は下界の者どもに優雅に買い物を見せてヤロウという気持ちになり私はたこ焼き店へと訪れた。
しかしその全てが私を陥れるための緻密な計算に基づく罠だったことに当時の私は気づかなかった。
屋台に入り店主の顔を見るとそのオーラに私は圧倒されてしまった。なんという迫力!まさしく彼こそが人の獅子である。そんな彼に敬意を示して私はわざとビビったふうに「た、たこ焼きヲおひとつ…。」と言った。
そうして私はたこ焼き店の獅子に打ち勝ち無事にたこ焼きを手に入れたのだ。
その後、私は柄でもなく遊び幾つもの屋台から出禁と言い渡された。全く無礼な奴らである。だがまあ良い。何故なら私にはこのたこ焼きという素晴らしい戦利品があるのだから。
そして戦利品を高々掲げて笑い食べた。
その生地はサクサク香ばしく中はクリーミーでマイルドな味わいとタコの気味が良い歯応えが。
なるほどたまには世俗に浸かるのも良いかもしれん。
そう私が思っていると周りの人達がジロジロと私を冷たい目で見てくる。
私はすぐにその場を無表情で離れ目から汗を流した。
…もう一生外へは出ない。そうまた誓って。

この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。







4/27/2024, 3:40:17 AM

この世は一欠片の幸福の為に数万の命が犠牲になる。
灰を被った様な淀んだ雲を睨みつけて今日も男は街を歩く。その一歩一歩が男を死へと近づける。
誰かの為でも己のためでもない。ただそうするのが当然の帰結だと思って行動する。
男が住む世界は血の大地だった。幾多の者が犠牲になり各々正義の為だとか、お前らが悪なんだとかを口々に言いながら、法が通じぬ街を歩き残虐としか言いようのない様な惨たらしい死を与える。
近所の人のいい叔母さんが、学校の煩いけど誰よりも生徒のことを考えてくれている先生が、果ては昨日まで一緒にいた友達が全て余すことなく死を与えられていた。それは男の両親も例外ではなかった。
当時少年と呼べる男を両親は隠して相手に悟らせまいと、己の骨肉と命を捧げて相手を引きつけ男の命を救った。
だが心は救えなかった。男の心は深い奈落に沈んで二度と前を向くことが出来なくなってしまった…。
死の行進から10年程経って男の心は鋭い刃の様になって他人も自分も傷つける様になった。
やがてその暗い感情は死の行進を行なった敵国に向かった。街を毎日歩いたのも同じ同志を招き入れるための策。男は辿り着いた。数年かけてやっと辿り着くことが出来るようになった。国の王子がいるダンスパーティーの会場に。男は仮面を被り、王子が演説しているときに密かに登り間合いをつめると高らかに己の国の名をいい、王子に死を宣告した。
王子のそばに居る兵士たちが男の脳天に躊躇いもなく銃を向けた。けれども男は怯まず王子に向けて引き金を引いた。この世に置いていくものはもう全て無くなった。
王子の脳天に血の華が咲くとともに兵士たちの銃が高らかに音を上げた。途端に男の体は大量に血を吹き出し地にふした。霞む意識の中で男は複数の景色を見た。一つは両親があの時、一緒に死ねばよかったと己を苛んで暴れている景色、二つ目は笑顔でこちらにおいでと言わんばかりに手をこまねいて居る両親、最後は何も無いただの暗い空間。
それは男の死の末路の終着点の可能性であり、男が作り出した他愛なき空虚な妄想である。
男は嗤った。死してなおその姿は深い闇を暗示していた。

この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

4/27/2024, 2:57:14 AM

その日、幻想世界ファンタズマに流星が落ちてきた。
神が命を捧げて呼び寄せた異世界の希望。
その名を龍馬と言う。
あの神に蹴り落とされるとジェットコースターの安全ベルトを付けないで落ちているかの様な浮遊感が俺を襲っていた。随分高いところらしく5分ほどぼっとしていると地上が見えてきた。
このままでは俺死ぬのでは?と思いましたが流石にあの神もそこに配慮して何事もなく地上に降りることができた。辺りを見渡すと村があったので近づいて行くと先程の流星に警戒されているらしく村に中々通してくれなかった。
埒が開かないので脅してやろうかと俺があの流星だと言うと顔つきが神妙な顔に変わって俺を村へと歓迎してくれた。その日全世界に流星の救世主が降臨したと話題になった。
そしてかの救世主の為胸に手を当てて項垂れた。
流星に願いを込めて。

この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

4/25/2024, 2:37:35 PM

深い闇の下光輝く星々に照らされて神は言った。
何百億年と続く終わりなきこの世界に一粒のバベルを落とさんと。
「さぁ始めよう楽しい楽しいゲームの時間だ」
天の神が決めたことなどいざ知らず下界の人間は今日ものうのうとした一日を送っていた。
天気は快晴。そんな美しい青空の下で全力疾走している男がいた。彼の名は難波龍馬。高校一年生。そして現在進行形で遅刻中である。始業まであと5分。家から片道10分くらいだから間に合わないのは確定している。それでも走った。彼は自分とメロスを重ね合わせて酔っていた。3分くらい走って疲れたのか立ち止まった。チャンスだなと思いボタンを押した。すると彼を円が取り囲み地面が割れてその中に落ちた。
語り部が変わる。視界は変わり難波龍馬へ。
泥沼に引き摺り込まれるような感触であった。
おかしい。俺は自分の体をペタペタと触り始めた。
今度は頬をつねってみる。痛い。夢ではない。
どうやら本当にこの空白のような世界に来てしまった様だ。周りを見渡すと唯一齢10歳ほどの少年がいた。
声をかけようとするとその前に少年の方が歳に似つかわしくない低く威厳のある声で言った。
「おい、小童、ルールを知っているか?」
いきなり小童扱いをしてかつルールなんて簡単な言葉を知っているかと聞かれて少し怒りを覚えた。
だが俺の心中など知らんと言わんばかりに
「簡潔に言おう。お前は神の遊戯、つまり私の遊戯に招かれた。だからお前にはこれから私の遊戯に付き合ってもらう。」と言ってきた。遊戯という言葉にも引っかかったがそれよりもこの目の前の少年が神だというのが信じられなかった。質問攻めにしたかったが、
実行する前に「異論は認めん」と自称神に下へ蹴り落とされてしまった。視界が暗転し再び元の語り部へと帰る。先程あの人間が言っていた少年もとい神は
『最後』のティータイムを楽しんでいた。するとそこは彼の友神がやってきて話をした。
「…お前本当に良かったのか?」友神が問い詰める。
「何のことだい?」神はシラを切る。
「いくらお前でもルールを破れば消滅することぐらい知っているだろう。」
そう。神は絶対的な存在であるからこそ絶対的な法がある。しかるべくしてもしかの法を破ろうものなら消えてしまうのだ。
「それでも私はやったのさ。暇だったからね、精々見ておいてくれ。遊戯のために狂った愚かな神の末路を。」神は笑った。自嘲の笑みだった。
「そんな事はない。確かにお前は神随一の遊戯狂いだが同時に人も好きだったではないか。今回の遊戯も自分の世界を救うための布石だったんだろう?」
「さて何のことかわからないな、私は自分の好きなことをやったまでさ。おっとそろそろお迎えが来た様だ。この世からは永遠にお暇させてもらうよ。」そう言って一柱の遊戯狂いであり人好きの神は消えた。
残された神のコートを眺めた友神は
「馬鹿な奴」と呟き去って行った。
物語は終息する。しかしこの物語は生き続けるだろう。言葉と読み手がいる限り。
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

4/24/2024, 10:15:04 PM

その日は雨だった。いつものように校門を抜け1人で家へと帰宅する。傘を忘れてしまったがどうということはない。これくらいの雨ならば大丈夫。
そう思っていました。雨足は私が1番目の交差点を渡る時に既に強く帰路の半分まで来るとゲリラ豪雨と見まごうくらいの大雨へと変貌した。
携帯で天気情報を見てみる。勘違いしないので欲しいのが私は学校に違反物を持ってきたわけでも私立の中学校に行っているわけでもない。
私は現役高校生である。
今日も今日とてぼっちで家へ帰ろうとしてこうなってしまったのだ。
「「はぁーついてないなぁ」」
え?声が被った事に驚いて慌てて向こうを見ると向こう側の人も驚いた表情でこちらを見ている。
彼女の名前は牧野桜と言った。彼女もこの近くの高校に通っていて雨のせいでここに雨宿りしにきたらしい。ついでに彼女も同じぼっち仲間である。
私達はすぐに打ち解け世間話をするぐらいの仲になった。それがやがて1月経つと友達となり2月経つと親友と呼べる仲になった。
今日も一緒に家に帰っていると彼女が突然、「私転校するの」と言い出してきた。
驚いて言葉が出ずにいると彼女は酷く申し訳なさそうにそして寂しそうに目を伏せていた。
彼女の前では心配したりして快く送ったが内心はとても乱れていた。たった1人の友人が居なくなってしまうなんて。
1人だけの帰路で私は目から雫を零した。

お題「雫」
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
更新が遅れてすみません。

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