深い闇の下光輝く星々に照らされて神は言った。
何百億年と続く終わりなきこの世界に一粒のバベルを落とさんと。
「さぁ始めよう楽しい楽しいゲームの時間だ」
天の神が決めたことなどいざ知らず下界の人間は今日ものうのうとした一日を送っていた。
天気は快晴。そんな美しい青空の下で全力疾走している男がいた。彼の名は難波龍馬。高校一年生。そして現在進行形で遅刻中である。始業まであと5分。家から片道10分くらいだから間に合わないのは確定している。それでも走った。彼は自分とメロスを重ね合わせて酔っていた。3分くらい走って疲れたのか立ち止まった。チャンスだなと思いボタンを押した。すると彼を円が取り囲み地面が割れてその中に落ちた。
語り部が変わる。視界は変わり難波龍馬へ。
泥沼に引き摺り込まれるような感触であった。
おかしい。俺は自分の体をペタペタと触り始めた。
今度は頬をつねってみる。痛い。夢ではない。
どうやら本当にこの空白のような世界に来てしまった様だ。周りを見渡すと唯一齢10歳ほどの少年がいた。
声をかけようとするとその前に少年の方が歳に似つかわしくない低く威厳のある声で言った。
「おい、小童、ルールを知っているか?」
いきなり小童扱いをしてかつルールなんて簡単な言葉を知っているかと聞かれて少し怒りを覚えた。
だが俺の心中など知らんと言わんばかりに
「簡潔に言おう。お前は神の遊戯、つまり私の遊戯に招かれた。だからお前にはこれから私の遊戯に付き合ってもらう。」と言ってきた。遊戯という言葉にも引っかかったがそれよりもこの目の前の少年が神だというのが信じられなかった。質問攻めにしたかったが、
実行する前に「異論は認めん」と自称神に下へ蹴り落とされてしまった。視界が暗転し再び元の語り部へと帰る。先程あの人間が言っていた少年もとい神は
『最後』のティータイムを楽しんでいた。するとそこは彼の友神がやってきて話をした。
「…お前本当に良かったのか?」友神が問い詰める。
「何のことだい?」神はシラを切る。
「いくらお前でもルールを破れば消滅することぐらい知っているだろう。」
そう。神は絶対的な存在であるからこそ絶対的な法がある。しかるべくしてもしかの法を破ろうものなら消えてしまうのだ。
「それでも私はやったのさ。暇だったからね、精々見ておいてくれ。遊戯のために狂った愚かな神の末路を。」神は笑った。自嘲の笑みだった。
「そんな事はない。確かにお前は神随一の遊戯狂いだが同時に人も好きだったではないか。今回の遊戯も自分の世界を救うための布石だったんだろう?」
「さて何のことかわからないな、私は自分の好きなことをやったまでさ。おっとそろそろお迎えが来た様だ。この世からは永遠にお暇させてもらうよ。」そう言って一柱の遊戯狂いであり人好きの神は消えた。
残された神のコートを眺めた友神は
「馬鹿な奴」と呟き去って行った。
物語は終息する。しかしこの物語は生き続けるだろう。言葉と読み手がいる限り。
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
4/25/2024, 2:37:35 PM