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「永遠」この力を手に入れる為、人は何でもするだろう。実際、そんな人の末路を幾度も見てきた。
大抵は身を滅ぼしたり精神が狂ってしまったりしてしまったのが大半だった。
ただ1人、俺だけを除いて。
かつて俺はある施設のモルモットだった。
何人もの仲間達が得体の知れない薬を投与されて死んでいった。30人ぐらいの仲間達が死んだだろうか。
とうとう私の番になってしまった。生まれた頃から抵抗する事を知らなかったのでさして抵抗せず薬を投与された。結果から言うと実験は成功した。
俺は何が何だか分からなかったが、施設の人達は踊らんばかりに喜び、幾度なく俺を心のこもってない上っ面の言葉だけで褒め称えた。
しかし当時の俺は他の反応なんか知らなかったので純粋に喜んだ。こうして夜は更けた。
次の日、俺が目を覚ますと施設は燃えていた。辺りを見渡すとベットも布団も服さえ無くなっていた。
施設の人たちも例外なく燃えていたが何も感じなかった。結局は自分をモルモットとしか見ていないクズには感情は抱かなかっのだろう。
そして燃える中で俺は気づいた。熱くない。痛くない。まだ残っていた食糧庫に走って肉を食べる。
味も感じない。
原因はすぐに分かった。俺が不死身になったからだ。
生命の危機を感じる必要が無くなったから痛覚などが無くなってしまったのだ。こうして俺の生きると言う労役が始まった。
最初の50年間ぐらいは楽しかった。
施設の跡地を出て最寄りの街へ行くと親切な人が俺と友達になってくれた。毎日、馬鹿騒ぎして無くしたもののことなど忘れてしまった。
でもすぐに終わりは訪れた。
最初の50年から30年ほど経つと俺の知り合いは全員死んでしまった。
それを何千回と繰り返すと永遠とは一種の罰なのではと考えるようになった。でも俺はこれ以上苦しまないために人と関わる事を辞めた。山で1000年程暮らしていた。のんびりとした生活で永遠もいいかも知れないと思うようになった。けれどこの生活も終わってしまった。山に来訪者が現れた。その来訪者の男は勇者と名乗った。そして俺に一緒に魔王を倒さないかと聞いてきた。俺は初めは断っていたが、勇者が幾度となく誘ってきて結局は折れて勇者と共に山を出た。
彼らとの旅は短かったが俺の記憶データを最も占めているのがこの旅の記憶だ。
そして勇者に自分は不死身でそれ故に悩んでいると言った。すると勇者は答えた。
「別にいいんじゃないんですか。人と関わっても。死んでもその人の記憶が消えるわけでもないしその楽しかったものが変わる訳でもない。だから気楽にいきましょうよ。因みにこういう考え方を持つ人を刹那主義者って呼ぶんです。」
刹那主義者。その言葉は俺の中で響き続けている。そして現在俺は世界一長い刹那主義者である。 

お題刹那
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

4/29/2024, 4:38:04 AM