「私とあなたじゃ住む世界が違う 第十五話」
「…これからも、ああ言った敵みたいなのが登場するの?」
「残念ながら、そうですね…」
志那は、半分青ざめていました。
「私、戦う手段が無いから、また、ああ言うのが登場したら、本当に足手まといになるけど…」
「そうならない為にも、まずは、武器の調達ですね」
「これから先、考えないと…」
「ですね」
志那とアメジストは、これからどうするのか相談していたら、突然、
「サンフラワーどこだ?!」
と言う声が、聞こえて来ました。
「ま、また、ナイトメアの手下か何か…?」
「その声、志那だ!」
カインドは、嬉しそうに
「おーい、志那ー!俺だ」
と、志那に呼びかけました。
「カインドだ!おーい!」
「志那ちゃん、知り合い?」
「饅頭に襲われそうになったのを助けてくれたの」
「志那、来ると思ったぜ!」
カインド達は、志那達の所まで来ました。
「志那がサンフラワー倒したんか?スゲーな!」
「倒したのはアメジストさんだけど」
「アメジスト?そっちの男か?」
カインドは、アメジストの方を見ました。
「初めまして、俺達、フロンティアウォーカーです。俺はカインドで…」
「僕はスモークです」
「俺はスプライトです」
「俺はロードです」
カインドの他に、ベージュの肌、やや垂れ目のグレーの目、グレーのショートのユルいパーマヘアー、中肉中背でグレーのパーカーを着ているふわふわした感じのスモークと、ベージュの肌、茶色の目、セミロングの金髪、中肉中背だけど、やや筋肉質で、黄色いパーカーを着た熱血な好青年のスプライトと、ベージュの肌、青い目、青色のセミロングで、後ろに束ねていて、中肉中背、青いパーカーを着た爽やかな好青年のロードの3人もアメジストに自己紹介しました。
「あの…志那ちゃん、アメジストさんは何やってる人?」
スモークは、志那にアメジストはどう言う人物か質問しました。
「そうだよな…アメジストってどんな人間だ?」
ロードは、志那にアメジストがどう言う人物か聞きました。
「アメジストさんって…林檎王子の元メンバーだよ?」
志那の一言に、フロンティアウォーカーの4人は
「ええっ?!」
と、驚いた表情でした。
「林檎王子って…圧倒的に権力のあるグループじゃん!」
スモークは、驚いていました。
「覇権争いの一位だろ?!何で、そんなお偉いさんが志那と一緒に居るんだよ?」
ロードも、驚いていました。
「アメジストさん。貴方、確かグループを脱退されたんですよね?何の目的で、また空想の世界に来られたのですか?」
スプライトは、かしこまってアメジストに聞きました。
「スプライト、膠着し過ぎだぞ?」
カインドは、スプライトをツッコみました。
「実は、メンバー達の様子がおかしくなったんです。前まではみんなフレンドリーな感じでしたが、ある人物が絡みだしてからはメンバー同士ケンカをするようになりました」
「ある人物って…噂の居ないメンバーの事か?ガーネットって言う…」
「聞いた事があるぞ!ガーネットって女のメンバーだよな!」
カインドとスプライトは、個人的な話をし始めました。
「違います。ガーネットは架空の人物で、実在はしません。メンバーに変な呪いの術をかけているのはセラフィです」
「セラフィって、あのセラフィ?女性歌い手の中で一番人気がある…」
ロードは、アメジストに聞きました。
「そうですね。彼女より上の実力の者も居ますが…」
アメジストは、顔を曇らせました。
「セラフィは、自分がモテたいの一芯でメンバー達を虜にして仲間割れをさせています。どうか、メンバー達を助けてやって下さい…」
アメジストは、志那達に懇願しました。
「もちろん、良いよ!そのつもりでこの世界に来たし」
「俺も協力するぜ」
「俺も協力する」
「僕も協力するよ」
「俺だって!」
志那達は、快く承諾しました。
「みんな、本当に済まない…」
アメジストは、目に涙を浮かべていました。
「フロンティアウォーカーのみんな、私達も一緒に行動して良いかな?この世界の事は来たばっかでよく分からないし…」
志那はフロンティアウォーカー達に頼みました。
「勿論、良いぜ!」
「志那ちゃん、これからよろしくね」
志那とアメジストは、フロンティアウォーカー達と一緒に行く事になりました。
「私とあなたじゃ住む世界が違う 第十四話」
志那は、空想の世界の景色を見渡しました。
「うわぁー!綺麗な場所!」
志那の見渡す光景は、近未来的な建物のジャングルが広がり、見た事も無い美しい花や緑が豊かな自然あふれる光景で、まるで天国に居るかの様な光景です。
「何ココ?理想郷?ゲームの世界みたい!」
「俺はいつも見慣れている光景なんだけどな」
「(あれ?タメ口になってる…?)」
志那は、アメジストの変化に気付きました。
「でも、スゴくない?この都会のジャングル、本当にSFの世界みたい!それでも、自然豊かって…本当に素晴らしい所!」
「何か、志那ちゃんの意見を聞いて、初めてこの世界に来た時を思い出したよ」
アメジストは、志那の様子を見て自分の過去を思い出していました。
「フッ…ナイトメア様が言ってた、志那とか言う小娘発見!」
大樹に登って偵察していたナイトメアの部下が飛び降りて、二人の前に現れました。
「えっ?!誰?この人も芸能人か配信者?」
「あたし、サンフラワー!ナイトメア様の命令で志那をやっつけに来たよ!」
肌の色はベージュで、目の色は濃い茶色、髪型は明るい茶髪の長めのボブで、両サイドのみつ編みを後ろに束ねていて、標準体型のひまわりの柄のワンピースを着ている、普通の女子のドジっ子のサンフラワーは、配信者がする様なアピールをしました。
「あの…私をやっつけるって…何で?」
「ナイトメア様の命令だから分かんなーい!」
志那とアメジストは目が点になっていました。
「とにかく、志那!あたしと勝負!」
サンフラワーは、赤ちゃんっぽいバブ味の声でまったりを何体も召喚しました。
「行っくよー!」
「ま、待って!戦うってどうすれば良いワケ?!」
志那が戸惑っているうちに、まったり達が襲いかかって来ました。
「倒すぞー!」
「武器持ってなさそうだし、簡単、簡単」
「余裕、余裕」
志那は、武器どころか戦い方すら知らない為に押され気味になっていました。
「志那は一般人だし、かーんたんに倒せちゃう!村人その一だよね?一般人が配信者に楯突こうなんて100万年早いゾ!サマーサンシャイン!」
「き、キャー!」
「トドメだー!行っくよー!」
サンフラワーは、激しい夏の太陽の日差しの様な熱光線で志那にトドメを刺そうとした時、アメジストは自分の武器のアクエリアスソードを使い、
「バイオニクス」
と、技の名前を唱えて、技を繰り出しました。紫の霧が発生して、サンフラワーやまったり達を猛毒にしました。
「ウギャァア!」
サンフラワーは、一撃で倒されてしまいました。
「コレは…キツイ…!」
「毒にも程がある…」
まったり達も動けなくなりました。
「た…戦えない…」
「今のうちに離れよう…」
志那は、サンフラワーの傍から離れました。
「ちくしょー!今日の所は見逃してあげる。覚えてなさーい!」
サンフラワーとまったり達は退散しました。
「アメジストさん、ありがとうございます!」
「俺にしてみれば、あんなの朝飯前なんだけど」
アメジストは余裕の表情でした。
「アメジストさん、凄く強いですね!」
「俺は、圧倒的に戦闘力のあるグループに所属していたからかな?ある程度の相手なら、誰でも倒せるよ」
アメジストは、少し照れていました。
「サンフラワーって人が言ってたんだけど、ナイトメアって誰だろ…?」
志那は、ナイトメアの存在が気になっていました。
「私とあなたじゃ住む世界が違う 第十三話」
「空想の世界は、基本的にネットやメディアで合成されてる世界だよ。ネットに自分の顔写真や情報をアップロードしても、空想の世界の住人になるんだ」
「え、でも、それじゃあ、空想の世界はみんなが関与してるって事になりません?」
「普通は、一般人は『村人その一』みたいな扱いになるんだけど…君は大衆の好奇の目にさらされる様な載り方をしたから、極地の影響を受けて、俺達が見えるようになってしまったんだ」
「極地って、何ですか?」
志那は、極地に付いてアメジストに聞きました。
「好奇の目とか欲望とか…人間の黒い心で合成された禍々しい存在だよ。人々の思念が集結してるんだ。極地の中に入ると、好奇の目にさらされ続けるんだ。だけど、強大な力も得るから、それを悪用する輩も居るんだよ」
「こ…怖いですね」
「おびえなくて大丈夫だよ。君は、そんなに重症になる程、影響は受けていないからね。俺の仲間達に比べたら…」
アメジストは、うつむきました。
「仲間達って、林檎王子のメンバーの事ですか?」
「そうだよ。みんな、『ガーネット』って言う架空のメンバーに恋愛の呪いを受けたかの様だ。恐らく、セラフィの呪いだよ…」
「セラフィって、あのセラフィですか?」
「勿論、空想上のだよ。俺とセラフィは恋人関係だったが、グループ全員と関係を持ってるから、俺がグループを去った途端に別のメンバーに乗り換えたんだよ、あの女…」
「え…」
志那は、セラフィが悪ど過ぎて凍り付いてしまいました。
「ゴメン、私情だったね。メンバー全員がセラフィの呪いでおかしくなったんだ」
「セラフィがココまで悪女だったとは…」
「志那ちゃんは、ひょっとしたら、空想の世界に行けるかも知れない」
「空想の世界?!」
志那は、突拍子の無い話にビックリしました。
「ど、どうやって行くんですか?!現実世界の人間って行けるの?!」
「いや…こう何人も空想の世界の住人が見えて話せるから、ひょっとしたら…と、思ってだけど」
「…私、現実世界に居ても、このままじゃ変な人扱いだし、誰も空想の世界が見えなくて、打ち明ける相手が居ない現実世界に居ても辛いだけだよ…」
志那は、しばらく考えました。
「…私、空想の世界に行くよ。こんな現実より、空想の世界に行って、アメジストさんの仲間達、助けたいもん!」
「志那ちゃん…俺の為にありがとう」
アメジストは、少し嬉しそうでした。
「じゃあ、早速入るけど…まだ試した事が無いから、本当に成功するかどうか分からないけど…」
「大丈夫です。きっと、成功しますよ」
アメジストは、空想の世界へのホールの様な入り口をを開きました。
「…行きますよ」
アメジストは志那を連れて、空想の世界の入り口に入りました。
「うわっ…」
二人は、ホールの出口に出ました。
「あれ?何ともない…って事は、成功?やった!」
「私とあなたじゃ住む世界が違う 第十二話」
志那は、元気がありませんでした。
「空想の世界の事、誰も信じてくれない…」
自分しか見えない空想の世界。その現実に志那は押しつぶされそうになっていました。
「気分転換に公園に行こう。家でふさぎ込んでも落ち込むばかりだし」
志那は、公園に行く事にしました。
「公園に着いたけど、相変わらず人少ないなぁ」
志那は、公園を散策しました。
「この公園、木々や花壇がいっぱいだから、気分転換になるんだよね」
志那は、しばらく歩いていると、アメジストの姿を見つけました。アメジストは、薄いベージュの肌、紫の流し目、薄紫色の無難なショートヘア、中肉中背のスーツ姿の紳士的な大人の男性です。
「アメジストさんじゃないですか」
「君はあの時の…えーと、名前は…」
「斎藤志那です」
「志那ちゃんだね」
アメジストは、営業スマイルをしました。
「アメジストさんは、休みの時はいつもここに来るんですか?」
「あ…実は、本人の事はココまで詳しくは知らないんだ…」
アメジストは、コリャマズいと言った顔をしました。
「ひょっとしたら、アメジストさんって空想の世界の人ですか?」
「そうだよ。俺は現実世界のアメジストじゃないんだ。俺と現実世界とは関係が無いんだ」
「(じゃあ、私が今まで会ってたアメジストさんは空想の世界の方なんだ…)」
志那は、自分が知るアメジストは空想の世界の方だと悟りました。
「アメジストさん、私、変な話するけど…聞いてもらえますか?」
「良いよ。何でも言ってご覧」
志那は、意を決してアメジストに悩みを打ち明けました。
「私、饅頭って言う妖怪に出くわしたんです。何か、まったりがそのまま現実世界に来たみたいな…そして、饅頭が襲いかかって来た時にカインドが助けてくれました。カインドは、クラスメートがその名前で活動しているから、その人そのまんまみたいな姿です」
アメジストは、志那の話を聞いていました。
「カインド達は、姿が私以外には見えないから、ココに居るって言っても誰にも信じてもらえない。空想の世界の話したら、変な人って見られちゃうし…そりゃあ、そうですよね。常識ではあり得ないから…」
アメジストは、志那の話を優しい表情で傾聴していました。
「この悩みって、自分にしか分からないのかな…?誰にも分かってもらえない…」
志那の目から涙が溢れました。
「志那ちゃん、俺は空想の世界の住人だから、分かってあげられるよ。だから、ホラ泣かないで」
アメジストは、志那の涙を拭ってあげました。
「志那ちゃん、コレから空想の世界の話をするけど、良いかな?」
アメジストは、空想の世界の話をし始めました。
「私とあなたじゃ住む世界が違う 第十一話」
学校に登校して、教室に入った志那は、自分の席に着いた。すると、由里がやって来た。由里は、ベージュの肌、焦げ茶色の目、髪型は、茶髪のセミロングヘアで、左脳側にみつ編みをしていて、中肉中背、ガーリーファッションのフレンドリーな女子です。
「志那、昨日の歌番組見た?斉木君出てたからスゴイハイテンションになっちゃってさ…」
「へー…」
「…志那、何かあったの?」
由里は不思議そうに志那を見ました。
「由里って、幽霊とか妖怪とか信じるタイプ?」
「何それ?怪談話?」
由里は興味津々に聞いていました。
「…実は、まったりが現実世界に来て襲いかかろうとして来て大変だったんだ…」
「は?志那、熱でもあんの?」
由里は志那を馬鹿にする様な感じで言いました。
「本当にまったりが目の前に現れて…」
「志那、You Tubeの見過ぎだって」
「そうかなぁ…?」
志那は、しょんぼりしていると、一人で座っている零也が視界に入ったので、零也の所に行きました。
「零也、昨日の夜の事、覚えてる?」
「ブワぁっプ…夜?!昨日の?」
零也は戸惑っている様子でした。
「昨日の夜は、家で動画の編集してたけど…だから、一人だったぞ?何で?」
「実は…カインドって名乗る零也みたいな幽霊が現れて、まったりをやっつけたり、空想の世界がどうとか、極地がどうとか言ってたんだけど…」
「ハァ?何だよ、ソレ?怪談話?…あ、動画のネタになりそうだな!」
「動画のネタって…」
「ちょっと、聞き取りやって…良いか?」
「ちゃんと話、聞いてよ…」
志那は、困った様子でした。
「それはそうと…」
「うん…」
「そんなゲームみたいな話は現実には無いだろ?」
零也は、冷めた口調で言いました。
「そんな酷い言い方しなくても良いじゃん…」
志那は、泣きそうでした。
「悪い。配信の仕事の課題、終わらせないとイカンから」
零也は、どっかに行ってしまいました。
「零也って、こんなに冷たいヤツなの?」
志那は、涙目になっていました。志那は、自分の席に戻りました。
「零也ー!ケイについて聞きたいって言ってたよな?最新情報があるぞ」
教室から出た遠くの方で、地雷系仲間が零也を呼びました。
「何と!新曲6曲がビルボードのトップ10にランクインだぞ!」
「マジかよ?!ケイ、スゲーじゃん!尊敬するし!」
零也は笑顔になりました。
「ケイって、17歳デビューでデビュー曲バズって億単位の再生数だろ?今は、ビルボードのトップ10独占って、マジで女神じゃん!ギフテッドの歌姫って言っても、おかしくないよな?」
零也は、嬉しそうにケイの話をし始めました。
「零也は、カインドじゃないんだね」
志那は、涙を流しました。零也の話し声は残酷にもバリアーで塞いでいても突き抜けて来る光線の様でした。
「カインドが言ってた事は、本当だったんだ…」
志那は、現実は残酷なんだなと、零也はケイの事しか頭に無いのかなと虚しさだけが残りました。
「零也は、私の事は視界に無いんだね…」
志那は、悲しい気持ちになりました。
「何で、幽霊や妖怪は私にしか見えないの?」