NoName

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4/26/2024, 1:55:01 PM

「良かれと思って」の笑顔から下される善意とは、時に振り切れないほどの重みをまとうのだ。

それを告げた当人の性格は朗らかそのものであり、何一つとして悪気はない一言だったことが分かる。
だが同時に、受け取る側の視点からしてみれば、どれもこれも関係のないことでもあった。

毒と薬、それはよく言ったものだと思う。
そう、目の前のこいつが居る限り、自分にとって良くも悪くも変わらない日々が何処までも続く。
ならば今こそが“潮時”なのだと、彼は理解し、己の意志を認めた。

用意周到に忍ばせていた一つの決意が、静かに強固に、悪意の方向へと定まった瞬間だった。

【善悪】

4/25/2024, 2:34:02 PM

「三回繰り返せたら叶うかも」って言い伝えがあるでしょ?
あたしが毎日こつこつ早口言葉の練習を積み重ねてきたのって、実はこの時のためだったりしたらさ、……キミってどう思う?

なんて少し冗談めかして隣の彼へ笑いかけてみると、ぽかんと間の抜けた表情と目が合った。
ちょっぴり子供みたいなイタズラかもと思いながら話したことだけど、その反応を見る限り、きちんと成功してくれたらしい。

ふふ、なんだか呆れているキミも結構面白いね。
からかうのはよせって?
……ごめんね、怒らないでくれると嬉しいな。

それにね、あたし、それが“ウソ”だとは言ってないじゃない。
だって「いつか叶える」ってこと、ずっと信じ続けてるし、絶対本当にやってみせる予定なんだから!

【流れ星に願いを】

4/24/2024, 2:36:05 PM

久々の休日で、弾んでいたのはとある昔話。
思い出の流れを汲んだ友人が、ため息も乗せて「ちょっと堅苦しかったよな」と笑っている。
その何気なく同意を求めていそうな発言を耳にして、口では苦い笑みを返しつつ、私は内心驚いてしまった。

学生時代にあった多くの決まり事たちに関して、とくにネガティブとなる点が見当たらなかったのだ。
ついでと言ってはなんだが、あまり「雁字搦めに縛られている」と感じていなかった程度には、合致していたのだろう。

当時も今も、こう考えていたりする。
一度見てしまったものを無視してしまうのは、自分自身が気になって落ち着かない。
であれば先に取り組み、片付けておきたい、と。

しかし、目の前の人物にとってみれば、“そう”でなかったらしい。
何事も受け取る人により感じ方の違いが存在して、だからこそ簡単にはいかない。
今回は軽口程度の愚痴なんだなと長い付き合いからも分かるが……どうしようか、毎回やや反応には困ってしまうわけで。

とりあえず、安全圏でのんきな思考を展開している脳内の私が、今だけは心底うらめしい。

【ルール】

4/23/2024, 2:11:17 PM

快晴と言えるほど納得できていないし、暴風と言えるほど荒れてもいない。
ただただ、始終もやもやと消化しきれない気持ちだけが頭の中に浮かんでいた。

少し油断をすれば勝手にため息は出ていき、どうにも気だるいカラダの内側でそれが巣食っている。
己を鼓舞しようと踏ん張る気分に反して、まだ心はうつむき、どことなく“まばら”に落ちる。

そうなる日には、よく「空」を眺めていた。
言葉で当てはめきれない途切れがちな思考を、そこへ流れる色やカタチたちになぞらえることもある。
なにより一番の理由として、昔からその移り変わる姿が好きだったからこそ、安らぎを得られた。

であれば、今の心象を例えるのなら。
多分「くもり一時雨」あたりが近いのだろうか、と視界の先へ想いをめぐらせてみる。

──ここまで言っておいて、少々あれなのだが。
この使い方が合っているかまでは分からないので、どうかその辺りは大目に見てほしいなと、一人苦笑いをこぼしてしまった。

【今日の心模様】

4/22/2024, 2:00:52 PM

そうやって、苦しそうな顔を隠さないで。
「すべてが“あやまち”だったのかな」なんて、寂しい言葉を口にしないで。

ずっと悩んで、迷って、それはもう幼い頃から決めてあったんです。
どんなに「この方法」が正しくないモノだとしても、どうか今回のワガママだけは許してください。
少なくとも、これはあたし自身の選んだコトなのだから。

……だけど、とうとう貴女を悲しませちゃった。
いつまで経っても手のかかる子供のままで、本当にゴメンナサイ。
あの人みたいになどなりたくもないし、貴女にまた涙を流させるつもりもなかったんだよ。

でも、最後まで引き止めてくれて、ありがとう。
じゃあ少し、いってきます。

──そう、一枚の手紙を机に乗せた。

かすかな音すらも立てぬよう、履き染んだ靴へ足を通し、深呼吸をする。
怒りの真横で、ぐるぐると罪悪感も渦巻き続けているのが分かる。
その伸し掛る重たさに後ろ髪を引かれながら、そっと暖かな我が家を飛び出した。

たった一度でいい。
あたしの声で、問いただしておきたかったの。
あの人へ「なぜ、あなたは母を裏切ったのか」と。

【たとえ間違いだったとしても】

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