白い帽子に手を添えて
三つ葉片手に振り返る
まんまるほっぺた落っこちそう
ふにゃんと笑う口からは
涎がダラダラ出てました
この手を伸ばして拭うけど
涎かけはもうキャパ越えて
仕方がないかと諦めた
引っ込むその手を捕まえて
さも嬉しそうに笑う君
休日午前のおひさまに
照らされ光る生えたての
溢れんばかりに白いその
乳歯が何より好きなのです。
明日なんて来るな
あなたのせいだ
そう認めるのにもう
何年かかった?
耳の後ろで低い声
ざらついた髭みたいな悪寒
肩が跳ねる
首を折りたい
それくらいこわい
夏が来る
はしゃぐ子供達
寮の廊下は荷物で溢れる
海苔の佃煮みたいにドロドロと
吐いてしまいたいなぁ
助けてと言えないから
過剰に助けを求めてみたの
そしたらまるで弱い子みたい
情けないな
私にはお似合いだ
誰にも分りゃしない
いっそわかってしまえ
もっと私を惨めにさせてみろよ
殺してみろよ
なんだっていいんだから
顔面にクソ喰らえ
「やっぱ家族っていいよなあ」
これくらい流せ笑えできないなら死ね
そう罵倒してもう何時間経った?
もうなんだっていいや
とりあえずあとで手首を切ろう
あの鋭い痛みを待ち焦がれる
気持ちよかあないさ
痛いしこわいさ
でもここでボロ出す方が
よっぽどひでえな
私が悪い 全てだめだ
カッターの音に涎が出る
殺すぞ黙れよ
自分に言ってたはずなのに
いつしかひとつの言葉になるんだ
もう頼むから死んでくれ
私の世界で
あなたがいたから
傷つき方も忘れた
あの子がいたから
生きたいと言えた
逃げたから
生きている
逃げるから
生きていく
どうかどうか
叫び出す前に
狂い切る前に
明日が楽しみだ
眠る前に思えたんだ
それを幸せに思う
そんな世界にいたいんだ
あなたに言いたいこと
口を噤むけど
今日が楽しいよ
あなたのいない街で
末永く一緒にいたい
嘘じゃなく言えるのは
君にだけ
「僕もだよ」と
君が言えるのも
私だけでしょう?
ペアリング欲しい?
そうLINEで訊いてくる君が
なんだか愛おしくて
それに歯止めをかけなくていい
それが愉快だった
愛って信じることなんだろね
君の世界を信じること 思うこと
君が私のために
「いなくならない」
と言ってくれたあの日から
それでも君を疑ってしまう
目を閉じて
また開く
じゃあもいっかい
できるかい?
無理だな
次はだめかもしれない
ああこわい
だけど幸せだぁ
人混みで手を離すことはできるのに
アパートの一室では躊躇ってしまう
「大丈夫だから」と君が優しく言うのに
子供みたいに
なぜか今日も泣いてしまった
本当はわかってんな。
私が消えてなくなりそうで
君も消えてなくなりそうで
何を守って生きればいいのか
わからなくなってハグをしている
どうとでもできる未来と
どうにでもなる未来と
そんな力を持ってしまって
それがこわいんだと思うんだ
君を巻き込みたくはないんだ
ねえ"今"にいようよ
未来に住むのはやめようよ
なんてそんなことを言い聞かせるのは
いつも君のいない部屋の中
君の大好きなあいつは
午後6時に来て
いつも言うんだ
「カレーください。肉多めで」
「私、肉苦手なんだよね。脂身が駄目なの」
君も僕と同じだった
僕が作るカレー
君はいつも何を思って食べてるんだい
どろりと溶けていく
大好きなのに
嫌いになってく
いやいやと首を振っては
また塊を少しずつ
「じゃがいもを潰すとマイルドになるよ」
そう教えたから
君によく似たあの子は
カレーが大好きだと笑った
僕のエネルギーが
巡り巡って糧になってく
爆発したい
そうでしか嬉しいを表せない
とろりと光沢を見せつける
僕の好きは陰に隠れて
ただ君の「美味しかった」が
少しでも長く浮かんでいたらな
どろりと溶けていく
流れ込む、奥の奥にまで
僕の手から匂いがする
今君が食べてるものと同じ匂い
ああなんて幸せなんだ
君と歩く
手を繋いで
「マリカやろうよ」
偏頭痛を一瞬忘れる
エスカレーターの下り
後ろからそっと耳の匂いを嗅いだ
恋人でごった返す池袋
看板持った女の子
おっぱいを誇れる人間じゃなくてごめん
うつむきたくない
君の手をぎゅっと握った
大好き 触れたい
君の心に心をすりすり
でもこんな雑多の中じゃ
君は気づきゃしないよな
「クレープ食べたい」
真夜中に送ったLINE
営業中は西口だけ
…また今度でいいや
「今度ここ行こ」
死んだらごめんと言った翌日
突然だね、いいよ行こう
そう打ち込む指先に
しょっぱい水を垂らす
街の薄闇に足を踏み入れる
耳元で君が囁いたんだ
「だいすき」
でれでれじゃねえか
お互い様か
今日は帰んないよ?
いやらしい意図もなく
カラオケに君を引きずり込む
嫌いなのは知ってるよ
朝までそこで聴いててよ
朝になったらマック行こうよ
そんで帰って
布団の上で抱き合って微睡もう
若気の至りを
若気の至りで溶かしていく
どろどろに混ぜて
舌に乗せるんだ
怠惰な青春を
つと押したら
変わってしまいそうな
そんな日々を 世界のただ中で
ただ君を離さない
薄暗い街の中で
指先を絡めて
生きる