たかなめんたい

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4/19/2026, 8:12:01 AM

『無色の世界』

朝目が覚める。色がない。

顔を洗う。少し色がつく。

鏡の中の自分を見る。目だけが、かろうじて光っている。それとも光っているように見たいだけか。

コーヒーを淹れる。湯気が白く立ち上る。白は色だろうか。わからない。ただ温かくて、それだけで少し、輪郭がはっきりする。

窓の外、雀が鳴いている。声に色はないはずなのに、なぜか黄色い気がした。錯覚でもいい。

靴を履く。外に出る。風が頬を撫でる。冷たさだけが、確かに存在を主張してくる。

歩く。歩く。アスファルトも空も、どこかくすんでいる。それでも足は前に出る。色がなくても、重力はある。重さがある。

夕方、帰り道に夕焼けを見た。赤い。

あ、と思った。

色があった。

4/17/2026, 5:04:23 AM

『夢見る心』

私は憧れている。何に?と訊かれれば、それは掴みどころのないもので、言葉に起こすともうそれは、私の思う憧れではなくなってしまう。

だから私はいつも、憧れを憧れのまま、胸の奥に仕舞っておく。取り出してしまえば、光に当てた瞬間に色褪せる布地のように、その輪郭が滲んで消えてしまう気がして。

ただ、確かなことがひとつある。それは何か遠くにあるものへの感覚ではない、ということだ。電車の窓の外、夕暮れの街が滲んで流れていく、あの瞬間にも。誰かの笑い声が角を曲がって遠ざかっていく、あの静けさの中にも。憧れはいつも、もうすでにそこにある。

手が届かないのではなく、手を伸ばした瞬間に場所を変えてしまう——そういう類のものだと思っている。追いかければ逃げる、でも追いかけずにはいられない。その不条理に、不思議と苦しさは感じない。むしろ、この感覚が続くかぎり、私はまだ何かを求めているのだと、それだけで少し、生きていける気がする。

言葉にできないものがある。それでいい、とは思わない。ただ、言葉にできないまま、それを大切に抱えていることが、もしかしたら書くことの始まりなのかもしれない。​​​​​​​​​​​​​​​​

4/16/2026, 5:59:50 AM

『届かぬ思い』

どうして伝えたいことほど、言葉にはできないのか。

本当に言いたいのはこんな軽口ではないし、こんな愛想のない返事ではなかったはずだ。
それなのに、この口から溢れる言葉は自分の純真なる本心を、喉かどこかにある奇妙なフィルターを通ることで、少し歪んだ言葉が流れ出す。

言葉を少し歪めれば、それは全く違った意味になってしまう。

本当は素直に好きだと言いたいのに、好きかもと言ってみたり、素直に会いたいと言いたいのに、明日空いてる?と聞いてみたり、そんな無数の失敗が脳裏に浮かんでは消していく。

どうしてか、そんな気持ちを込める時は驚くほどに素直な言葉が溢れてくる。
ここで出さずにさっきやれと自分で自分に言いたくなるが、そんなことは徒労に過ぎず、こうやって失敗したと悶えることが、人間の定めであり希望であるのだろうと、何故だか少し自信が湧いてくる。

これもまた、気持ちを吐くことの良いところであるのだろうか。

次にまた、気持ちを伝えるときが来て、そのときにはもう少し、自分に素直になれたら良いな。この思いが届けば良いな。

4/15/2026, 9:18:20 AM

『神様へ』

忘れられたらどれほど楽か。
狂えてしまえたらどれほど楽か。

それなのに私はいつも、きちんと覚えている。あの日の光の角度も、あなたの声の湿度も、自分がどれだけみじめだったかも。狂うことすら許されないように、意識はいつまでも澄んだままで、私を見ている。

神様、あなたはどうしてこんなふうに作ったのですか。忘れる力を、壊れる自由を、どうして私には渡してくれなかったのですか。

痛みを知るからこそ美しいものがわかる、などという言葉は知っています。でもそれはあまりにも、遠いところからの慰めに聞こえる。今夜の私には届かない。

ただ、少しだけ眠れたらいい。少しだけ、全部を手放せたらいい。それだけを祈っています。聞こえているかどうかも、わからないけれど。

4/12/2026, 3:57:25 PM

『遠くの雲』

赤らんだ太陽が、遠くにそびえるビルとビルとの間に沈んでいく。今日ももう終わり。

いつも通りの帰り道から少しそれて、周りよりもずっと高くにある階段から帰ることにする。特に理由はない、ただの気まぐれだ。

段を一段ずつ踏みしめると、街がすこしずつ遠のいていく気がした。騒がしかったわけでもないのに、静かになっていく。風が耳のそばを通り過ぎて、髪をほんの少しだけ乱した。

踊り場で足を止める。見上げると、空の端に雲がいくつか浮かんでいた。遠くの、ほんとうに遠くの雲。夕陽に染まるでもなく、かといって白いままでもなく、どこか曖昧な色をしている。行き場を決めかねているみたいに、ゆっくりと、でも確かに流れていた。

べつに、どこかへ急ぐ雲なんてないのかもしれない。ただそこにあって、風に任せて、いつの間にか見えなくなる。それでいい、とでも思っているのだろうか。

そんなことを考えながら、また歩き出す。階段を降りきると、いつもの道に戻っていた。遠回りをしたはずなのに、そんな気がしない。何かが変わったわけでも、何かに気づいたわけでもない。ただ、雲を見た。それだけのことが、今日の帰り道にはあった。​​​​​​​​​​​​​​​​

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