『無色の世界』
朝目が覚める。色がない。
顔を洗う。少し色がつく。
鏡の中の自分を見る。目だけが、かろうじて光っている。それとも光っているように見たいだけか。
コーヒーを淹れる。湯気が白く立ち上る。白は色だろうか。わからない。ただ温かくて、それだけで少し、輪郭がはっきりする。
窓の外、雀が鳴いている。声に色はないはずなのに、なぜか黄色い気がした。錯覚でもいい。
靴を履く。外に出る。風が頬を撫でる。冷たさだけが、確かに存在を主張してくる。
歩く。歩く。アスファルトも空も、どこかくすんでいる。それでも足は前に出る。色がなくても、重力はある。重さがある。
夕方、帰り道に夕焼けを見た。赤い。
あ、と思った。
色があった。
4/19/2026, 8:12:01 AM