『夢見る心』
私は憧れている。何に?と訊かれれば、それは掴みどころのないもので、言葉に起こすともうそれは、私の思う憧れではなくなってしまう。
だから私はいつも、憧れを憧れのまま、胸の奥に仕舞っておく。取り出してしまえば、光に当てた瞬間に色褪せる布地のように、その輪郭が滲んで消えてしまう気がして。
ただ、確かなことがひとつある。それは何か遠くにあるものへの感覚ではない、ということだ。電車の窓の外、夕暮れの街が滲んで流れていく、あの瞬間にも。誰かの笑い声が角を曲がって遠ざかっていく、あの静けさの中にも。憧れはいつも、もうすでにそこにある。
手が届かないのではなく、手を伸ばした瞬間に場所を変えてしまう——そういう類のものだと思っている。追いかければ逃げる、でも追いかけずにはいられない。その不条理に、不思議と苦しさは感じない。むしろ、この感覚が続くかぎり、私はまだ何かを求めているのだと、それだけで少し、生きていける気がする。
言葉にできないものがある。それでいい、とは思わない。ただ、言葉にできないまま、それを大切に抱えていることが、もしかしたら書くことの始まりなのかもしれない。
4/17/2026, 5:04:23 AM