三羽ゆうが

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7/22/2024, 11:31:57 AM

世界を救うヒーローになりたい。

そんな馬鹿げた夢を真剣に追いかけていたのはいつの事だろうか。何度やり直しても僕にはヒーローなんてなれやしない。

「ほんとに大丈夫?」

「大丈夫だから、ね?」

「何かあったら僕にすぐ言って」

「わかった」

その言葉が君の最後の声だった。あの時無理やりにでも引き止めれば良かった?あの時待って、って言えばよかった?


あの時に戻りたい、なんて無責任な事言わないから、
君と出会わない世界に連れて行って。


『もしもタイムマシンがあったなら』

7/21/2024, 1:05:23 PM

どさり、と𓏸𓏸の背中がベッドに触れる。上には××が馬乗りになっていて、両手は彼の熱い手でぎゅっと握られている。

「逃げへんの」

「……うん」

「𓏸𓏸」

彼の吐息が耳元で溶けて、手も舌も絡みあっていく。2人の左薬指にはそれぞれ違う形の指輪が嵌められていて、恨めしそうにきらりと光った。

「……これ、要らんやろ」

「今だけはいらない」

「ん」

指輪を外してもう一度舌を絡ませ合う。求めてはいけないと分かっているのに、どうしても欲しい。

「……もっと、」

「急かさんでも時間あるから」

「××……」

「その先は言ったあかん約束やろ」

「……うん」

君からの愛情が、欲しい。

『今1番欲しいもの』

7/20/2024, 11:25:39 AM

どんな時も、誰に対しても、

「𓏸𓏸さんこれしといて」

「分かりました!」

いつ何を要求されたとしても、

「𓏸𓏸ちゃん、今夜だけ、な?」

「……いいですよ」

絶対に自我を出すな。そうやって生きていたら、“自我”が何か分からなくなっていた。



𓏸𓏸って奴の第一印象は自我を絶対出さない人だと思ってた。でもそうじゃなくて。もっと話したい、もっと一緒にいたい、そう思って話せば話す程どこか不安定で心配になる。

「何したい?」

「何でもいいよ!」

返ってくるのは何でもいいと言う返答ばかり。少しづつでいいから、いつか𓏸𓏸自身を全部見せて欲しい……なんて、我儘すぎるだろうか。



「だから、𓏸𓏸が俺としたい事は?って聞いてる」

「何でもいいって言ってるじゃん」

「じゃあ遊園地と水族館どっちがいい」

「××の好きな方」

「……俺は𓏸𓏸に聞いてるんだけど」

「…………どっちでもいい」

「……自分の意見、言いたくない理由は?」

「……自分が全部合わせれば、上手くいく」

「…………なるほど?」

「自分が、全部我慢すれば、……我慢、すれば……」

「𓏸𓏸」

「……何」

「俺にくらい、したい事言ってもいいじゃん。俺しかここにいないんだから」

「…………私の、したい事」

「うん。何したい?」

「私、は……」

「ゆっくりでいいから」

「…………名前」

「名前?」

「名前、いっぱい呼んで欲しい……」

「……可愛い、おいで𓏸𓏸」

「……ん」

いつか自分から我儘言える様になるまで、言える様になってからも、ずっと名前呼んでやるから。だから、


ずっと側にいて。


『私の名前』

7/19/2024, 12:45:15 PM

軽やかに切られていくカードを見つめる。表向きはクルーズ船の華やかなカジノだが、賭けているのは所詮ハッピーターン……つまるところキまる薬なのだ。


ブラックジャック。21に近い数字にすれば勝ち、ただそれだけのカードゲーム。

ディーラーがカードを配る。俺の手札は9。

「ディーラー、今日の調子は」

「……3勝0敗です」

「随分と価値の高いハッピーターンだな」

「……皆さんの賭けが下手なだけですよ」

ディーラーのカードは7。ここは安直にダブルダウン……なんてのは二流のやることだ。

「……ヒット」

「珍しくダブルダウンじゃないんですね」

「俺はカードがちゃんと見えてるからな」

「……そうですか」

手札にきたのはK(キング)。これで合計が19。ゆっくりとディーラーの目を見つめる。

「……もう1枚」

「……承知しました」

手元に来たのは……ハートの2。

「ブラックジャック。ご馳走さん」

「……流石ですね。ではこちら約束の品です」

丁寧に包装された袋とチップがそっと差し出される。乱雑に袋とチップを取り、次の台をロックオン。

……あのディーラーの手先、カードがよめそうだ。


『視線の先には』

7/18/2024, 11:11:41 AM

違う。

脳みそが溶ける。私だけ違う。
真っ黒に見える世界と、血なまぐさい匂い。

「ごめんなさい」

そう呟いた。返答はなく。

「ごめんね」

私は悪くない。そう思ったけれど一応謝ってみた。
もちろん返答はなく。

指をさして皆がこっちを見ている。私は何も悪くない。
私だけ、

私、だけ。


人間じゃないからって、攻撃してこないで。


『私だけ』

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