どんな時も、誰に対しても、
「𓏸𓏸さんこれしといて」
「分かりました!」
いつ何を要求されたとしても、
「𓏸𓏸ちゃん、今夜だけ、な?」
「……いいですよ」
絶対に自我を出すな。そうやって生きていたら、“自我”が何か分からなくなっていた。
𓏸𓏸って奴の第一印象は自我を絶対出さない人だと思ってた。でもそうじゃなくて。もっと話したい、もっと一緒にいたい、そう思って話せば話す程どこか不安定で心配になる。
「何したい?」
「何でもいいよ!」
返ってくるのは何でもいいと言う返答ばかり。少しづつでいいから、いつか𓏸𓏸自身を全部見せて欲しい……なんて、我儘すぎるだろうか。
「だから、𓏸𓏸が俺としたい事は?って聞いてる」
「何でもいいって言ってるじゃん」
「じゃあ遊園地と水族館どっちがいい」
「××の好きな方」
「……俺は𓏸𓏸に聞いてるんだけど」
「…………どっちでもいい」
「……自分の意見、言いたくない理由は?」
「……自分が全部合わせれば、上手くいく」
「…………なるほど?」
「自分が、全部我慢すれば、……我慢、すれば……」
「𓏸𓏸」
「……何」
「俺にくらい、したい事言ってもいいじゃん。俺しかここにいないんだから」
「…………私の、したい事」
「うん。何したい?」
「私、は……」
「ゆっくりでいいから」
「…………名前」
「名前?」
「名前、いっぱい呼んで欲しい……」
「……可愛い、おいで𓏸𓏸」
「……ん」
いつか自分から我儘言える様になるまで、言える様になってからも、ずっと名前呼んでやるから。だから、
ずっと側にいて。
『私の名前』
7/20/2024, 11:25:39 AM