軽やかに切られていくカードを見つめる。表向きはクルーズ船の華やかなカジノだが、賭けているのは所詮ハッピーターン……つまるところキまる薬なのだ。
ブラックジャック。21に近い数字にすれば勝ち、ただそれだけのカードゲーム。
ディーラーがカードを配る。俺の手札は9。
「ディーラー、今日の調子は」
「……3勝0敗です」
「随分と価値の高いハッピーターンだな」
「……皆さんの賭けが下手なだけですよ」
ディーラーのカードは7。ここは安直にダブルダウン……なんてのは二流のやることだ。
「……ヒット」
「珍しくダブルダウンじゃないんですね」
「俺はカードがちゃんと見えてるからな」
「……そうですか」
手札にきたのはK(キング)。これで合計が19。ゆっくりとディーラーの目を見つめる。
「……もう1枚」
「……承知しました」
手元に来たのは……ハートの2。
「ブラックジャック。ご馳走さん」
「……流石ですね。ではこちら約束の品です」
丁寧に包装された袋とチップがそっと差し出される。乱雑に袋とチップを取り、次の台をロックオン。
……あのディーラーの手先、カードがよめそうだ。
『視線の先には』
7/19/2024, 12:45:15 PM