「いっつも一緒にいるよね、好きなの?」
何百回と聞かれた質問。好きな訳ねぇだろばーか。家が隣で、保育園の頃からずっと一緒。親も仲が良くて、趣味も合う。たまたま性別が男女だっただけ。
「好きな訳ないでしょ。楽しいとは思うけど」
「えーそれ好きなんじゃないの〜?」
うるせぇお前に何がわかるんだ。そう言いたいのをぐっと堪える。腐れ縁だって言ってもきっと信じて貰えないんだろう。
「じゃあ嫌いなの?」
「嫌い……嫌いだったら一緒にいないよ」
「じゃあ好きじゃん!」
「……0か100しかないの?」
好きでも嫌いでもない。そんな言葉じゃ言い表せないくらい。もしアイツがいなかったら、って思うと、……思う、と、
「…………やっぱ好きかも」
「え?!遂に認めた?!」
「恋愛の好きじゃないにしても、アイツの事は好き」
「……ふーん…?恋愛の好きじゃない、ねぇ……」
「…………にやにやして何」
「その内気づく時がくると思うわ」
…アイツの事考えて、どきどきしてる心は見て見ぬふりをした。
『好き嫌い』
きらきら、きらきら、夜の街に蔓延る欲望。
𓏸𓏸したい、××したい、あれしたいこれしたい、欲望とはそこが尽きないものだ。
「寄っていかなぁい?」
「こっちサービス付きだよ!」
金を落としそうな客に声をかけ続ける人々。酔っぱらいをつかまえて、無作為に金を搾り取る。何を買うにしても金がいる。金がないと生きていけない。
「そこのおにーさん」
手を差し出して何かを媚びる少女。生きる為の物乞い、こんな歳からこんな事しないと生きていけないなんて、可哀想に。もはや同情すらも淡白になってしまう。
きらきら、きらきら、夜の街に蔓延る欲望。
この街で生きるには欲望が無いと生きていけない。それが例え生きる為に必要な事だとしても。
欲望のない俺はまるで、透明人間みたいだ。
今も昔も、これからも、きっとこの街に揉まれて、死んでいくだけ。
『街』
「やりたいことは何ですか?」
そう聞かれて何も声が出なかった。したい事なんて無いし、何となく学校卒業して何となく就職して。
生きてたくないけど死なせてくれないから。
何にもないよ、ここには。何も無い。白紙のノートは一生白紙のまま。ずーっと使われない新品のまま。
「やりたい事見つけるのがやりたいこと、かな」
見つかるといいね。君みたいなやつにもさ。
『やりたいこと』
今日も朝がやってきた。その辺の人達の中には朝が嫌いな奴もきっといるだろう。でも俺らにとって朝日とは生き延びた証なのだ。
生きるか死ぬか、殺すか殺されるか、奪うか奪われるか。自分以外は全員敵だ。勿論親だって。…いや、親の顔すら知らねぇけど。
「そこのにーちゃん!これお安いよ!!」
「こんな仕事してみねぇか?」
「お兄さん、私と一緒に来ない?」
この街で声をかけてくる奴は、誰一人として相手の事を考えている奴はいない。全て自分の為、私利私欲の為、明日生き残る為。それしか無いのだ。
それしか、生きる方法が。
都会、って言うやつは凄いんだろ?なんてったって悪い奴を取り締まる人間がいるらしい。物も人の持ってるやつ奪ったらダメなんだろ?
何もかも違いすぎて、そんな所いったら逆に生き残れないかもな。
でもそんな奴らと同じように、この太陽のあったかさだけは分かるよ。同じ太陽、浴びさせてもらってる。
俺も、“普通”の生活、してみたい…なんてな。
『朝日の温もり』
線路の上に立ちすくむ。霧がかった地平線に向かっていたはずの足は止まり、ただ呆然と立ち尽くしていた。
今戻ればきっとまだ間に合う。でも戻ったところで、誰もいない。
ぐしゃり、1歩足を出してみた。石ころを踏んずけて、独特な音がする。
「お兄ちゃん、お家、かえろう」
そんな声が聞こえた気がして後ろを振り向く。遠くの方に見える、もういないはずの妹。
「まだはやいよ、お兄ちゃん」
まだ、そっちに行かせてくれないのか。
まだ、この世界で何をしろと。
まだ、会わせてくれないの。
「お兄ちゃん、𓏸𓏸からのおねがい」
おねがい、かぁ。お兄ちゃんな、その言葉にめっぽう弱いんだ。何でもお願い、聞いてあげるから、だから、
戻ってきて。
「……院長!意識が戻りました!」
「おぉ!それは良かった。××さん、調子は…」
あぁ、またこっちの道に来てしまったのか。でもおねがいだからな。お兄ちゃん、もう少しだけ歩いてみるよ。
『岐路』