ゆかぽんたす

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2/4/2024, 9:02:40 AM

あまり現実離れしたことは言わない主義だけど、

貴女のこと、1000年先も守るから。

絶対に悲しませたりしないと誓うから。

だから僕を選んでくれないか。

貴女じゃなきゃ、駄目なんだ。

2/3/2024, 8:13:05 AM

行ってきます、というメモ書きと1輪の花がテーブルには置かれていた。
嫌な予感はしてたんだ。この頃口数が少なかったから、どっか具合でも悪いのかなくらいに思ってたけど。

そんなに悩んでいたんなら教えてくれよ。君の夢を真っ向から否定したりしないよ。やりたいようにやればいい。そう言ってちゃんと送り出すつもりでいたよ。
なのに、別れの言葉も言わせてくれないのかい。ずるいよ、君は。

コップに水を汲んで君が残した花を挿した。いくらかもう萎びている。青い花がまるで君の瞳の色を連想させる。

この花は何て言うんだろうか。
知りたいのに、教えてくれる君はもういない。

2/2/2024, 6:53:51 AM

知らなかった。カイトが、春に転校するなんて。
なんでもっと早く言ってくれなかったの。私はカイトの胸ぐらを掴んでそう言って責めた。そしたら、いつもみたいにへらへら笑って何か憎まれ口たたいてくるかと思ったのに。
「……ごめん」
全然違った。彼は見たこともない悲しそうな顔で、私に謝ってきた。こんな彼は知らない。見たくもない。いつもみたいにバカ言ってふざけて笑ってよ。あんたに真面目な顔なんて似合わないよ。転校なんて、嘘だって言ってよ。色んなことが信じられなくなって、私はカイトの前から逃げるようにして去った。それからもう3週間くらいが経とうとしている。私のほうが一方的に避けるようにしていた。こんなことしても、カイトが転校する事実は変わらないのに。もう会えなくなっちゃうのに、何やってんだろう、ほんと。それを考えるとまた変な意地が顔を出してきてしまう。素直にごめんって言えたら良いのに。
ウジウジしていたらあっという間に1か月が経ってしまった。もうすぐ冬が終わる。この時期になるとカイトが転校するという話はもう学年じゅうが知っていた。寂しいねー、ってみんなが言っている。私だってその1人。寂しいだけで伝えきれないくらい、心が落ち込んでいる。幼馴染ということが尚更尾を引く。私とカイトはあまりに近すぎたんだ。何でも言い合える仲で、信頼しきっていた。当たり前のようにずっと一緒にいられると思っていた。このままお別れになっちゃったら、私どうなっちゃうんだろう。それくらい依存してしまっていたことに気づいてしまった。ねぇ、カイト。行かないでよ。私のそばにいつまでもいてよ。

『いつもんとこで待ってる』
塞ぎこんでいた土曜の昼間。カイトからこんなメールがきた。いつもの所というのは、私たちが幼い頃によく遊んでいた公園のこと。呼び出された私ははじき出されたようにそこへ向かった。早く会いたくて、気づいたら走っていた。公園に着くとカイトがちゃんといた。ブランコに乗って、ぼーっとしていた。私に気づくと、「よっ」といつものノリで手を振ってきた。
「急に何」
もう、駄目だなあ私。本人を前にするとまた意地っ張りが出てきてしまう。これが最後かもしれないのに、どうして素直になれないの。
「俺、ツバサのこと好き」
「へ」
「こんなんで、お前と会えなくなるの認めたくねーわ」
いきなり何言ってんの。私が言い返すより前にカイトは隣のブランコを指差す。座れ、って意味らしい。大人しくそこへ腰掛けると、カイトは私のほうにぐるりと向き直る。
「転校はやめらんねぇけど、お前とはこれからもずっと会いたい」
「……うん」
「俺、ツバサのこと好きだから」
カイトはさっきと同じ言葉をもう一度言った。そして、立ち上がるとちょっと強引に私を引っ張って立ち上がらせる。
「これでサヨナラになんかさせてたまるかよ」
ぎゅっと私のことを抱きしめて、何かに堪えるような声でそう言った。ごめん。私と同じ気持ちだったんだね。私もあんたも寂しかったんだね。それが分かって、でも離れる事実は塗り替えることができないツラさに初めて涙が出た。
「もっと……早く言えば良かった……」
震える私をカイトは何も言わずただぎゅっと抱きしめてくれた。意地張ってたあの時の時間を激しく後悔した。ブランコが風に揺れてキィキィ鳴る音がより一層寂しい空気を連れてくる。
「ちゃんと連絡するから」
「うん」
ありがとう。私の欲しかった言葉を言ってくれて。素直に言えない代わりにカイトの首にしがみついた。絶対、また会おうね。だから私もサヨナラは言わないから。それでまた会えた時までにはちゃんと、ありがとう言えるようにしておくから。だから、勝手だけど今は泣かせて。


1/31/2024, 1:32:35 PM

振り返れば、傷つけたり傷ついたり時には人を信じられなくなることだってあった。あの時はきっと幼なすぎたんだ。今ならそんなふうに回顧できるけど、きっと当時の僕は必死だったに違いない。
“仲間”とか“信頼”とか、そういうのは僕には本当どうでもよくて。何より1人が楽だったから他の奴らと馴れ合うなんて馬鹿馬鹿しいと思ってた。正直、鼻で笑うレベルだったよ。くだらないなあって、ただ他人事のように感じていたんだ。

でも旅の途中で君と出逢って。僕とまるで正反対の思考回路を持つ君は当初、邪魔でしかなかった。この先のパーティ編成に君は必要ないと本気で思っていたんだ。それが、ひょんなことで僕は君に助けられ、君の手の温かさを知り、君の涙を初めて見た。あの時は心臓に衝撃が走った。僕の中の、決して揺るがない概念みたいなものが覆った瞬間だった。人ってこんなに優しくて温かい生き物なんだな。それを教えてくれたのは、君だった。

もうすぐこの旅も終焉だ。君はこれまでの道のりをどう感じてる?楽しかった?辛かった?プラスなものもマイナスなものも、両者ともに色々思うものもあるだろう。それもまた、人だから持てる感情なのだろう。
僕はこの旅で数えきれない沢山のものを得たよ。それは形にできなくて、目には見えないものだけど。いつまでもこの心の中に息づいている。旅路の果てにそれを証明できることがこの上なく嬉しいよ。

さあ、あと少しだから今日も進もう。
まだ旅は終わったわけじゃないよ。最後の最後まで、僕は君と共に歩いてゆくことを誓う。だからあと少し、よろしくね。

1/31/2024, 9:42:29 AM

この街に死者と話せる者がいる。
そんな噂を聞いたから遥々やって来たわけだが。
「……とんだ噂話だったみたいだな」
「ちょっと。本人を眼の前にして失礼じゃない?」
「ンなこと言ったってよ……」
俺の前に仁王立ちするのはどう見ても子供。こんなガキが死者と話せるだと?もっと、普通はほら、祈祷師みたいな婆さん想像するもんだろが。やっぱり何かの間違いだ。そう思って大人しく帰ろうとした。
「奥さんに伝えなくていいの?」
「な……んで」
「いいよ。おにーさんかっこいいから、特別に受けてあげる」
そう言って、少女は目を閉じその場で跪くと祈りのポーズをした。これから何が起こるのか。皆目見当がつかないが、何か特別なことが起きる気がしてならない。
まばたきさえも忘れそうになるほど俺は棒立ちになって少女を見つめる。やがて、綺麗な歌声が響きだした。澄んだ汚れのない歌声が、ここ一体を覆うように広がってゆく。少女は目を閉じたまま伸びやかに歌いあげる。何という歌なのか俺には分からなかった。鎮魂歌なのかもしれない。綺麗で繊細な声がメロディーを紡ぎ出す。じっと聞き入っていた。自分の目から涙が流れてることすら気づかないくらい、少女の歌に聞き惚れていた。歌が終わる頃には俺の両目からは涙がとめどなく溢れていた。
「おにーさんの気持ちを取り込んで歌ったよ。きっと奥さんに届いてるはず」
にこりと笑ってそう言った少女。大丈夫だ。今の歌と俺の想いは、あいつに届いてるに違いない。いつまでも愛している。安らかに眠れ。そのメッセージを歌に乗せて届けてくれた少女は、女神にしか見えなかった。

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