Ryu

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9/10/2025, 2:28:41 PM

えーと、今日はね、あの食いしん坊と女子を抜きにして話がしたいんだ。
それで、青と緑に来てもらった。
いや、リーダーからの提言とか、そんな大層な話じゃないんだ。
まあ確かに、世界の平和を守るのが俺達の仕事だけど、たまにはさ、健全な男子が集まって、健全な恋バナをするのも悪くないんじゃないか?

え?黄色はなんで呼ばなかったのかって?
だってアイツは食い専門だろ?
いっつもカレーばっか食べてて、女子になんかまるで興味無さそうじゃん。
呼んでも話が盛り上がらない。
もちろんピンクは呼べないよな。
てゆーか、どっちかってゆーと、ピンクについて皆がどう思ってるのかも気になるんだよな。
ウチの隊の唯一の女子メンバーなわけだから。

え?俺?
まあ…俺は、イイ、と思ってるかな。
やっぱりさ、同じヒーローでも、女子の身のこなしって違うんだよな。
可憐っていうか、セクシーっていうか。
あのぴっちりスーツもそそられるものがあるし、闘った後に、ヘルメットを取ると広がる黒髪にもドキッとする。
どう?そんなんない?
この際だからさ、腹割って話そうよ。

青は…好きな娘とか、いないの?
え?緑と付き合ってる?
…どーゆーこと?
え?
…そーゆーこと?
い、いや、そんなのに偏見はないよ。
うん、この時代、いろんな愛の形があってイイじゃない。
健全だよ、健全。
…ただ、チビっ子達に説明するのはまだ早いかな。

まあ、腹割って話せたみたいで良かったよ。
え?リーダーにも話したいことがある?
何何?もうこうなったらさ、オープンにいこうよ。
え?ピンクは黄色と付き合ってる?
…嘘でしょ。
あの食べっぷりがイイって…勝ち目ないじゃん。
何だよそれ。俺だけが一人ぼっちってことじゃん。
なんかもう…やってらんないわ。
戦隊解散しよっかなー。

9/9/2025, 1:50:08 PM

社員旅行のバスが、崖から転落した。
乗客35名、生存者2名。
僕と、同期の女の子。

マスコミが騒ぎ、しばらくの間、外を出歩くこともままならなかった。
同期の子とは連絡を取り合い、お互いの心を慰め合った。
あの地獄を経験した二人だけに、他の人には共有することの出来ない結束感があったことも事実だ。

彼女の話では、過去にも九死に一生を得たようなことが何度かあったと言う。
実はそれは僕も同じで、学生時代には雪山登山で遭難して、僕だけが生き延びた経験もある。
そんなところも意気投合して、僕達の距離は急速に縮まっていった。

当然の成り行きのように、結婚し、家庭を作り、娘が生まれた。
ある日、見知らぬ男が訪ねてきて、娘に会わせろと言う。

「あなたは誰ですか?何故ウチの娘に?」
「あなた達をふるいにかけたものですよ。結局あなた達が残った」
「何の話です?過去にどこかで会いましたか?」
「直接会ってはいませんがね。監視はさせてもらいましたよ」
「私達を?いったいどんな理由で?」
「あなた達の運の強さを確認して、最強のラッキーガールを手に入れるためです」
「ラッキー…ガール?」
「あなた達は、幾多の災難に見舞われて、それを生き延びてきた二人です。我々が起こした事故でも、それは証明されている」
「あの…バス事故?」
「そう。そこで二人の強運は揺るぎない現実となった。いくつものフィルターをかけて抽出されたあなた達二人の融合のもと、最後に奥様の体内で行われたフィルターにより、最強の幸運を備えた存在が生まれ来る…」
「いったい何を言ってるんだ?あんた。帰ってくれ」
ドアを閉めた。

ラッキーガールか…。
まあ、悪くない。
だがアイツ、きっとどこぞの組織に属していて、いずれまたやってくるだろう。
だけど僕達は、幸運を条件にフィルターされて残った、奇跡の三人なんだ。
負けるわけがない。
家族で力を合わせて、そして強運も味方に付けて、必ず撃退してやる。

9/9/2025, 12:23:58 AM

結局最後まで、君の仲間になれなくてゴメン。
修学旅行ではあんなに意気投合したのに、日常に戻ったらまた少し距離が遠ざかって。
なんか、熱が冷めたっていうか、冷静になって考えたら、まったく違うタイプの人間なんじゃないかと思えたりして。
残りの学生生活は、それぞれがそれぞれの仲間とつるんで、言葉さえ交わすことは無かったね。

高校を卒業して半年後、君が集団暴行で逮捕されたと聞いた。
君がリーダー格で、高校時代からの仲間を集めての犯行だったと。
僕がそこにいなかったことに何の不思議もないが、いたとしても不思議はなかったのかもしれない。
何故って、あんなに意気投合したのだから。
タイプは違えど、分かり合えたのだから。

今となって何の思いがあるわけでもないけど、人生は分岐路だらけで、勝ち組も負け組も選択によって振り分けられる。
どちらの仲間になるか、その最終選択は自分に委ねられるとしても、そこに辿り着くまでの経験や思いが、正しい決断を歪めてしまうことだって起こり得るだろう。
僕の両手に、重たく冷たい手錠がかけられる選択。
僕達はきっと、いつだってイカゲームのように決断を迫られながら、信じたり裏切ったり裏切られたりを繰り返して、生きてゆくのだろう。

いつかこの、仲間になれなかったことを懺悔する青臭い感情を、最良の選択だったという喜びに変えられる日がきっと来る。
修学旅行でともに笑い合った、アイツの屈託のない笑顔は忘れられなくても。

9/8/2025, 12:17:07 AM

昼過ぎから雨。
憂鬱がさらに増す。
バイトの面接を終えて、店を出る。
感触は良くない。
これで6店目。
ここもダメだったら、もうメンタルが折れそうな気がしてる。
とゆーか、今日面接した店長に言われた言葉、
「その年なら、バイトなんかより正社員目指した方がいいんじゃないの?」
にやられた。
正論すぎて。

駅前で彼女と待ち合わせ。
そのまま商店街を歩いて、馴染みの喫茶店に入る。
コーヒーを注文して、
「で、話って何?」
神妙な顔の君に聞く。
「お父さんと喧嘩になっちゃって…まともな仕事も見つけられずにフラフラしてる男と付き合うなって」
予想通りの話だった。
「そっか。バイトと物書きじゃ食っていけないもんな」
「バイトだって決まってないんでしょ?作家になる夢は持ち続けるとしても、一度どこかに就職してみるつもりはないの?」
もう、何度も言われたセリフ。答えもいつも一緒だ。
「バイトは探してるよ。それに、今書いてる作品が完成すれば、きっと何かしらの足がかりになると思うんだ」
「ずっと完成しないじゃない」
「そんなことないよ。大切な作品だから、たくさん時間をかけて流れを考えてるだけ」
「私の人生についても、考えてくれたことある?」
「あるって。君との幸せな未来のために書いているとも言える」
「じゃあ、私もその作品の成功に賭けなきゃいけないの?」
「ギャンブルじゃない。信じて欲しいんだ。きっとうまくいくから」
根拠のないその言葉。俺はいつまで言い続けるんだろう。

君が店を出ていく。
雨の中、傘を差して。
雨と君、両方から責められているような、静かな抗議めいた雨音と君の背中だった。
カップにほんの少しだけ残ったコーヒーを見つめ、これからどうしようかと考える。
モノを書くなんて誰にだって出来ることなのに、なんで自分はこれで食っていけると思ったのだろう。
そんな夢物語で、いつまで俺は彼女を不安にさせ続けるんだろう。
彼女の父親は、きっと俺を認めてはくれない。
当たり前だ。バイトにすら雇ってもらえないような男なんだから。
「でも、就職だって簡単じゃないんだけどな」
残りのコーヒーを飲み干して、席を立った。

駅前を通りかかると、彼女がその入り口に立って、スマホを操作していた。
「どうしたの?もう帰ったかと思ってた」 
「あ、うん…この辺にさ、本屋さんってあったっけ?」
「本屋さん?」
「うん、帰りの電車で読めるような本を買おうかと思って。スマホも飽きちゃってさ、たまには本もいいかなって」
「あるよ。案内するよ」

本屋に到着して、彼女は数冊の本を選んで購入した。
それは、普段俺が読んでいる作家のものばかりだった。
「今まで、あんまり読んでこなかったからさ。何買ったらいいか分かんなくて…それに、あなたがどんなものに憧れて夢を追っているのか、それを知ったら私の中でも少しは何かが変わるかなって思って」
「愛想尽かしたんじゃないの?」
「愛想は何度も尽かしたけど、それでもまだ歩み寄れるものがあるなら、試してみてもよくない?」
「だけど、親父さんだって許してくれないだろ?」
「お父さんはうるさいけど、結局は私が決めることだから。今度来た時には、あなたの作品も読ませてくれない?これ読んで、本読む感覚を取り戻しておくから」
喫茶店では見せなかった君の笑顔。
「イチ読者として、ダメ出しもバンバンするけどね。あ、それで加筆修正とかしたら、結果二人の合作になったりしない?」

駅に着く頃には、雨は上がっていた。
先ほど見た雨と君の姿とは対照的に、陽光に照らされた君を駅まで送り届ける。
「喫茶店を出て駅まで歩く間にいろいろ考えたんだ。私との幸せな未来のために書いてるって言ってくれたけど、嘘じゃないんだろうなって。その気持ちがあるなら、まだ捨てたもんじゃないなって」
「捨てる…俺を?」
「違うよ、夢をだよ。捨てるタイミングなんて決まってないけど、今じゃないとも思ってる。私がまるでサポートもしてないのに」
「なんか、君のサポートがなかったせいで俺は今までダメだった、みたいな物言いだね」
「違うの?あなたの執筆活動のサポートだよ?バイトの方は無理だけど」
「…うん。まあ、今までも君がいることがモチベだったけど、一緒に夢を目指してくれるなら、安心感ハンパないかも」
「でしょ。じゃあ、バイトの方も面接頑張って。そんなに時間は無いんだからね。…バイトすら続けられないほど忙しくなるかもしれないんだから」
「夢物語だよ」
「夢だから叶えるんだよ」

夢も彼女も失いたくない。
それなら、動き続けよう。
立ち止まらずに、前に進もう。
雨はいつか上がる。
晴れ間が覗いたそのチャンスを、決して逃さないように。

9/6/2025, 10:35:10 PM

誰もいない教室、とか聞くと、「先輩、ずっと好きでした!」なんて告白のシチュエーションが生まれそうだけど、誰もいないんだから生まれようがない。
皆が帰った後の教室で、何人かが集まってひっそりとコックリさんを、なんてイメージもあるけど、誰もいないんだからやってるわけがない。

じゃあ、誰もいない教室で起こることって何だ?
心霊の類か?
でもさ、誰もいない場所に幽霊が出たところで、それを見て驚く人も怖がる人もいないんじゃ、怪談話も成り立たんよな。
こうなってくると、いつになく難しいお題のような気がしてきた。
お題を見た直後には、上に書いたようないろんなイメージが浮かんだんだが…。

あ、そーか。
自分達以外、誰もいない教室ってことにすればいいのか。
言葉の使い方としては間違っていない。
よしそれじゃ、早速書き始めようか。
まずはプロットを考えて、その後には実際の現場に下見に行ってみないと。
どこかの学校に放課後忍び込んで、誰もいない教室に行ってみよう。
もっとイメージが湧くかもしれない。

え?最近の学校ってそんなにセキュリティ厳しいの?
不審者の侵入が相次いだから?
あーそりゃ不審者は取り締まらないとね。
でもほら、誰もいない教室ならさ、生徒が襲われる心配もないわけじゃん。
だから大丈夫だよ。

まあ、行くなら女子校とかにしようぜ。
ジャージで帰る娘とかいて、制服が教室後ろのロッカーに…あ、いや、何でもない。

…ん?なんでこうなった?

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