社員旅行のバスが、崖から転落した。
乗客35名、生存者2名。
僕と、同期の女の子。
マスコミが騒ぎ、しばらくの間、外を出歩くこともままならなかった。
同期の子とは連絡を取り合い、お互いの心を慰め合った。
あの地獄を経験した二人だけに、他の人には共有することの出来ない結束感があったことも事実だ。
彼女の話では、過去にも九死に一生を得たようなことが何度かあったと言う。
実はそれは僕も同じで、学生時代には雪山登山で遭難して、僕だけが生き延びた経験もある。
そんなところも意気投合して、僕達の距離は急速に縮まっていった。
当然の成り行きのように、結婚し、家庭を作り、娘が生まれた。
ある日、見知らぬ男が訪ねてきて、娘に会わせろと言う。
「あなたは誰ですか?何故ウチの娘に?」
「あなた達をふるいにかけたものですよ。結局あなた達が残った」
「何の話です?過去にどこかで会いましたか?」
「直接会ってはいませんがね。監視はさせてもらいましたよ」
「私達を?いったいどんな理由で?」
「あなた達の運の強さを確認して、最強のラッキーガールを手に入れるためです」
「ラッキー…ガール?」
「あなた達は、幾多の災難に見舞われて、それを生き延びてきた二人です。我々が起こした事故でも、それは証明されている」
「あの…バス事故?」
「そう。そこで二人の強運は揺るぎない現実となった。いくつものフィルターをかけて抽出されたあなた達二人の融合のもと、最後に奥様の体内で行われたフィルターにより、最強の幸運を備えた存在が生まれ来る…」
「いったい何を言ってるんだ?あんた。帰ってくれ」
ドアを閉めた。
ラッキーガールか…。
まあ、悪くない。
だがアイツ、きっとどこぞの組織に属していて、いずれまたやってくるだろう。
だけど僕達は、幸運を条件にフィルターされて残った、奇跡の三人なんだ。
負けるわけがない。
家族で力を合わせて、そして強運も味方に付けて、必ず撃退してやる。
9/9/2025, 1:50:08 PM