Ryu

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9/5/2025, 10:23:10 PM

あの信号が青に変わったら、スタートだ。
隣に並ぶアイツのマシンもなかなか速そうだけど、俺は絶対に負けやしない。
必ず勝利を手に入れてみせる。
これは、言うなれば「ゼロヨン」ってやつだ。
直線コースでゴールを競うドラッグレース。
俺はこの道のプロレーサーであり、このコースで負けたことはない。
まあ、ここは公道なんで、ホントはプロもアマもないんだが。

いいか、あの白線が途切れたところがゴールだ。
あそこまでぶっちぎれ。
その先は壁になっているが、日和るなよ。
ノンブレーキでゴールを越えろ。

俺の愛車が唸りだす。
俺の、はやる気持ちに同調するかのように。
左右の信号が黄色に変わる。スタートが近い。
俺は誰よりも速い。負けるものか。
歩行者用信号機が青に変わった。スタートだ。

俺達のベビーカーは、目の前に続く横断歩道というコースに向けて、一斉に走り出した。

9/4/2025, 3:31:08 PM

あの娘が好きだった。
商店街の中華料理屋でバイトしてた。
お店に通ううちに思いは募り、もうこれは告白するしかないんじゃないか、というところまで気持ちが盛り上がった矢先、故郷の母親が倒れた。
一旦気持ちを静め、実家に帰ることにする。

母親は入院することになり、その準備や手続きで一週間滞在することになった。
諸々を終え、自分のアパートに戻り、早めの夕食にと、あの娘のいる中華料理屋へ。

果たして、彼女はバイトを辞めていた。
店主とモメて、飛び出すように出て行ったらしい。
そう説明する目の前の店主を殴ってやろうかと思うが、自分は彼女にとってそんなことの出来る存在じゃない。
いや、そもそも人を殴ってはいけない。

「店を出ていく前に、あの娘があんたに渡して欲しいって、この手紙を」
「えっ」

手紙を開く。
炒飯を食べながら。
そこには、言い出せなかった彼女からのメッセージが一行。
「あなたの背後にいる女性、祓ってもらった方がいいですよ」

え?そーゆーのが見える娘だったの?
てゆーか、ずっと俺の背後にそんな存在を見てたの?
俺が恋焦がれて見つめている時も?
てゆーか、背後の女性って誰?
いつの間に俺に取り憑いてるの?
俺は彼女一筋だったのに!

一週間振りに食べるその店の炒飯は美味かったが、恋心というスパイスが消えた分、何か物足りなさを感じてしまうのだった。
実家に帰ろっかなー。

9/3/2025, 9:36:08 PM

職場のロッカー室。
何やら男女がモメている。
最近付き合い出したと噂の二人だ。
何にせよ、職場でモメんな。

二人には二人の世界があるんだろう。
周りが見えなくなるくらい、熱い想いを迸らせて。
自分達が、世界の中心にいるような錯覚。
でもね、勘違いしちゃいけない。
このロッカー室は、君達の恋をドラマティックにするための舞台じゃないんだよ。
僕達が、着替えたり荷物を置いたりする場所なんだ。
ここでモメられるとね、入っていきづらいじゃないか。

secret love.
人知れず恋をしよう。
二人でする恋は二人だけのもの。
それ以外の他人が入り込めない世界。
それ以外の他人を巻き込んではいけない世界。
ロッカー室は皆の共有スペース。
場所をわきまえて、楽しい恋愛をしてください。

…いや、マジで。

9/2/2025, 1:40:13 PM

今日という日のページをめくる。
もうすぐ。
明日という新しいページが待っている。

今日の私は、体調不良で仕事を休んだ。
準備をして、家を出る直前で、何となく体温を測ったら、38.7度。
行けるわけがない。
そして今日は、一日を寝て過ごした。
病院に行くことも考えたが、この猛暑の中を自身の熱も抱えて歩いたら、途中で茹だってしまうんじゃないかと怖かった。
だから今も、横になったまま動けない。

もうすぐ、今日という日のページがめくられて、新しい明日がやってくる。
明日の私はどうなんだろうか。
何かを克服することが出来るのか。
分からない。
自分の体のことなのに、分からない。
もっと悪化して、灼熱の中を歩くことになるかも。

だとしても、このシンドさを緩和してくれるのなら、這ってでも行くべきなんだろう。
もしくは、明日の私はこの苦しみから解放されているのかもしれない。
分からない。
何事も、ページをめくってみなくちゃ分からないんだ。
明日が今日よりも、イイ日でありますように。

9/1/2025, 11:51:44 PM

お題が長いとステージが限定される。
前回の「8月31日、午後5時」なんてピンポイント過ぎて。
それでも、皆さん果敢にトライする。
人間って挑み好きなんだな。
私もご多分に漏れず。

だけど、夏の忘れものなんて…あったかな?
まあ確かに暑さにボーッとして、何かを見落としてたりする可能性は高いけど。
先日、病院に診察を受けに行って、帰る直前になってマスクをしていないことに気付いた。
大きな病院だったから、まあ少しくらいはマスクをし忘れている人もいるでしょ、と思って辺りを見回したが、誰一人としていなかった。
ハズい。
ルールも守れない大人になった気分。

マスクは探すまでもなく、ちゃんとバッグの中に所持していた。
ただもう、暑くて屋外では外してしまい、そのまま病院に入ってきてしまっただけ。
悪気なんてない。
だけどやっぱり、人の目が気になった。
病院に入った時点で、看護師さんにでも指摘されれば、こんな思いはしなくて済んだのに…と、人のせいにしたり。

さすがに、お題に寄せるのは難しい。
きっとこれは、探さなくてはならないような忘れ物をしていないおかげだろう。
ありがたいことだ。
もし今後、夏の忘れものを探しに行くにしても、外は暑いし、もう少し涼しくなってからかな。

…こうして、お題はしっかりとここに刻まれるのであった。
うん、やっぱり人生、何とかなるもんだ。

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