Ryu

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あの娘が好きだった。
商店街の中華料理屋でバイトしてた。
お店に通ううちに思いは募り、もうこれは告白するしかないんじゃないか、というところまで気持ちが盛り上がった矢先、故郷の母親が倒れた。
一旦気持ちを静め、実家に帰ることにする。

母親は入院することになり、その準備や手続きで一週間滞在することになった。
諸々を終え、自分のアパートに戻り、早めの夕食にと、あの娘のいる中華料理屋へ。

果たして、彼女はバイトを辞めていた。
店主とモメて、飛び出すように出て行ったらしい。
そう説明する目の前の店主を殴ってやろうかと思うが、自分は彼女にとってそんなことの出来る存在じゃない。
いや、そもそも人を殴ってはいけない。

「店を出ていく前に、あの娘があんたに渡して欲しいって、この手紙を」
「えっ」

手紙を開く。
炒飯を食べながら。
そこには、言い出せなかった彼女からのメッセージが一行。
「あなたの背後にいる女性、祓ってもらった方がいいですよ」

え?そーゆーのが見える娘だったの?
てゆーか、ずっと俺の背後にそんな存在を見てたの?
俺が恋焦がれて見つめている時も?
てゆーか、背後の女性って誰?
いつの間に俺に取り憑いてるの?
俺は彼女一筋だったのに!

一週間振りに食べるその店の炒飯は美味かったが、恋心というスパイスが消えた分、何か物足りなさを感じてしまうのだった。
実家に帰ろっかなー。

9/4/2025, 3:31:08 PM