思い出せるのは、仲の良かった数人の友達。
一緒に富士急ハイランドに行ったこと。
帰り道の車の運転を任されて、少し緊張しながら山道を走らせていたこと。
日が暮れて、夜の帳が下りてくる。
ヘッドライトの向こうに、変わり映えのしない景色が流れてゆく。
「道、合ってるよな?」
助手席に問いかけるが、答えがない。
「え?なんで?」
助手席にも、バックミラーに映る後部座席にも人の姿はない。
「え?なんで?」
路肩に車を止め、シートベルトを外して振り返る。
誰もいない。そんなバカな。
今日、一緒に遊んだ友達は?
途中で降りた?
いや、赤信号以外、車を止めた覚えはない。
降りられるもんか。
こんな時は、どうすればいい?
しばらく考えて、友達に電話をしてみることに。
スマホを探るが、友達の番号などない。
仕事関係の連絡先ばかり。
不安に駆られながら、写真フォルダを開く。
今日撮った画像が、一枚も無かった。
あんなにはしゃいで撮りまくったはずなのに。
「え?なんで?」
もう、訳が分からない。
友達の顔を思い浮かべようとした。
…出来なかった。
両親や職場の上司の顔しか浮かばない。
あれ…?もしかして、俺に友達なんか、いなかった?
そんな結論にたどり着く。
心が締めつけられるような、夜の山道。
楽しかった、今日の記憶。
でも、誰一人として、その顔は思い出せない。
「記憶の混乱ってのはね、誰にでも起こり得るんですよ。自分の望み通りに塗り替えてしまうこともある」
頭の中を、誰かの言葉がグルグルと回り続ける。
俺はゆっくりと車をスタートさせ、夜の山道を走り続けた。
遠く眼下に、街の灯りが広がっている。
自宅に到着したところで、LINEの着信音が鳴った。
駐車場に車を止め、スマホを開く。
LINEの画面に、
「今日は楽しかったな。また行こうぜ」の文字。
頭が混乱する。
続けて、
「俺が撮った写真送るよ。後でお前のも送ってくれ」
次々と写真が送られてくる。
楽しそうに笑う俺と、思い出せなかった友達の顔。
「他の奴らも、無事に帰宅したみたいだよ。じゃあまたな」
俺は、スマホを握りしめて号泣した。
すべてを取り戻したような気分だった。
記憶の混乱。
現地集合で、それぞれが自分の車で集まった。
運転を任されてなどいない。
皆が、自分の運転でバラバラに帰ったのだ。
スマホに友達の電話番号は一件も登録していない。
LINEグループがあるから、必要性を感じなくて。
電話をするなら、LINEでよかったはずなのに。
写真は、趣味の一眼レフで撮りまくった。
スマホの画像では満足出来ず、ほとんど使っていない。
自慢のカメラには、たくさんの友達の顔が並んでいた。
そして、今日俺達が行ったのは、富士急ハイランドなんかじゃなかった。
山の上のキャンプ場。
大学時代の仲間達が集まって、数年振りのBBQだった。
こんな話。
なんか無理があって、面白みもなく、だからどうしたという内容に思うかもしれないが、これをもう少し、いや、もうひと回り興味を引くエピソードにする言葉がある。
それは、これが「実話」であるということだ。
もう二度と、君を離さない。
これまでずっと、君のことばかり考えて生きてきた。
片時も忘れたことはないんだ。
ずっと君を追いかけて、いつかこの手に入れたいと願ってきた。
でも君は、いつだってもう少しのところで、僕をするりと躱して逃げてゆく。
こんな僕の気持ちをからかうように。
でも、今度ばかりは、君も心を決めたんだね。
君の方から僕に手を差し伸べてくれた。
夢のような瞬間。夢にまで見た瞬間。
僕はこの時をずっと待っていたんだ。
君へのプレゼントは、いつだって懐に忍ばせて。
差し出される君の両手。
その、細い両腕に、僕は用意していたプレゼントをかける。
「御用だ、ルパン。もう逃さんぞ」
よし、書きたくなったから書こう。
書きたい気持ちが疼くから、Bye Bye...なんて言ってらんないわ。
駄作であれ、書くことが日々に彩りをくれる。
だから、書く。
…とか思ったけど、雲りって何だろう?
曇りのことかな?
それとも、心が晴れない状況のことだろうか。
それなら、最近のこの国を憂いてしまう。
政治経済なんて、自分一人が思い悩んだところでどうにも変えようのないことだと諦めている節があったけど、最近の財務省解体デモや増税、首相の商品券配りなんかのニュースを見ていると、私達国民が大人しくしていることは罪悪なのかも、と思うようになってきた。
どうにもならないと思い込んでいたことを、どうにかしなきゃならない時が来ているような気がする。
毎日通う、学校や職場のことで精一杯なんだけど、当たり前のように学校や職場へ通えるのは、国家がそんな生活を支えてくれるという石杖があってこそだと思う。
すべては日本というこの国に依存して存在してるのに、今やこの国は傾いて脆さを露呈してはいないか。
国会にて、大人達が闘っている。
時には、不正を問い詰め、それに対し、子供のような逃げ口上を展開している。
こんな大人になっちゃいけない見本ってやつだ。
我が身可愛やの気持ちは理解出来るが、いずれ終わりの来る人生を、真っ当に正義を貫こうとは思わないのだろうか。
その方が断然カッコいいのに。
もっとヒドイ生活を強いられている国は他にもある。
比較すれば、自分達はまだマシなのだと思える。
だけど、状況は明らかに悪化しており、これからも改善される希望が持てないのなら、今がまさに歯止めをかけるラストチャンスなのかもしれない。
少なくとも、これを読んでくれているすべての人達にとって、他人事ではないはずだ。
これまで、当事者意識を感じていなかった私がそう思うのだから、きっと事態は切迫しているのだと思う。
これからの日本を担う子供達にも伝わって欲しい。
変えなきゃいけない時が来ていることを。
暗雲に覆われたニッポンの空を、気持ちの良い青空に変えてゆくために。
さて、そろそろお別れしましょうか。
始めたのなら、終わりは来るもの。
何事にも、頃合いってもんがあるよね。
終わりにする頃合い。
そのタイミングがつかめずに、ズルズルと続けてしまうのもカッコ悪い。
やっぱり、去り際はカッコ良く、スマートにいきたいもんです。
なので、この辺で、さようなら、また会いましょう。
楽しかった、でもそれだけじゃない。
苦しみの伴う楽しさだった。
それはきっと、分かってもらえると思う。
日々ノルマに追われるような、そんな錯覚を起こしつつ、ここまで続けた自分を褒めてあげよう。
よく頑張った。少し休んでもいいんだよ。
また、書きたくなったら書こう。
それまでさようなら。
Bye Bye...
校舎の屋上から、君と見た景色。
焼け野原。瓦礫の山が遠く続く。
世界の終わり。灰色に埋もれた、僕達の街。
「見える?」
「ああ、見えるよ。街が死んでゆく」
「私達も、みんな死ぬの。これが、三年後の世界」
「どうしてこんなことに?」
「それは、分からない。でも、きっとこれから始まるの。始まってはいけないことが。それに気付いて」
「気付いても、止められるかどうか」
「あなたなら、出来るわ。この景色が見えるんだから」
「これは、君の力だろ。未来が見えるなんて」
「私の力は見るだけ。でもあなたは違う」
「僕に、何が出来る?」
「世界を救えるの。この街のみんなを、あなたを、私を」
あれから三年。
教室の窓から見える景色は何も変わらない。
淡々と授業は進み、黒板は文字で埋め尽くされ、授業終わりのチャイムに誰かの嬌声が上がる。
「昨日配信されたアニメ、見た?」
「何のアニメ?」
「なんかさ、異世界もの。最近多いじゃん、転生してどうとかって」
「ああ、またなんか始まったんだ。異世界もの、多いよな」
廊下を進み、階段を上がる。
屋上に出て、僕達の街を見下ろす。
あの日、君と見た景色。
焼け野原。瓦礫の山が遠く続く。
「ね、私の言った通りでしょ?」
君の声がするが、姿は見えない。
あの日もそうだった。
別の世界に生きる、君の声だけが聞こえる。
僕は、世界を救えなかったのだろうか。
いつか見たアニメのヒーローのように、空を飛び、地を走り、人々に手を差し伸べて。
そんな力は、僕にはない。
始まってはいけないことが、すでにどこかで始まっている気がする。
それは、この世界ではないどこか。
君の住む、異世界での話かもしれない。