校舎の屋上から、君と見た景色。
焼け野原。瓦礫の山が遠く続く。
世界の終わり。灰色に埋もれた、僕達の街。
「見える?」
「ああ、見えるよ。街が死んでゆく」
「私達も、みんな死ぬの。これが、三年後の世界」
「どうしてこんなことに?」
「それは、分からない。でも、きっとこれから始まるの。始まってはいけないことが。それに気付いて」
「気付いても、止められるかどうか」
「あなたなら、出来るわ。この景色が見えるんだから」
「これは、君の力だろ。未来が見えるなんて」
「私の力は見るだけ。でもあなたは違う」
「僕に、何が出来る?」
「世界を救えるの。この街のみんなを、あなたを、私を」
あれから三年。
教室の窓から見える景色は何も変わらない。
淡々と授業は進み、黒板は文字で埋め尽くされ、授業終わりのチャイムに誰かの嬌声が上がる。
「昨日配信されたアニメ、見た?」
「何のアニメ?」
「なんかさ、異世界もの。最近多いじゃん、転生してどうとかって」
「ああ、またなんか始まったんだ。異世界もの、多いよな」
廊下を進み、階段を上がる。
屋上に出て、僕達の街を見下ろす。
あの日、君と見た景色。
焼け野原。瓦礫の山が遠く続く。
「ね、私の言った通りでしょ?」
君の声がするが、姿は見えない。
あの日もそうだった。
別の世界に生きる、君の声だけが聞こえる。
僕は、世界を救えなかったのだろうか。
いつか見たアニメのヒーローのように、空を飛び、地を走り、人々に手を差し伸べて。
そんな力は、僕にはない。
始まってはいけないことが、すでにどこかで始まっている気がする。
それは、この世界ではないどこか。
君の住む、異世界での話かもしれない。
3/22/2025, 1:55:56 AM