Ryu

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3/3/2025, 9:55:28 PM

子供の頃、スカートめくりなんてのが流行ったな。
いや、身近でやっている人はいなかったが、テレビやマンガでやたらと描かれてた。
今思えば、めくったところでそんなに嬉しいものが見られるわけでもないと思うが、そこに男のロマンを感じ取れる人が多かったのだろうか。

わざわざ誰かがめくらんでも、突風が吹いてスカートを持ち上げれば、誰に罪なく同じものが見える。
いや、決して堂々とは見ないが、まあ、咄嗟のことで避けがたく目に入ってしまうことはある。
ラッキースケベには違いないが、たぶん自分の場合、うわぁ見ちゃったごめんなさい、の気持ちの方が強い。

誤解を恐れずに言えば、スカートがひらりとめくれて見える光景は、男女どちらでもそんなに変わらないのでは?と思ってしまう。
そもそも、男性がスカートをはくこと自体が稀かとは思うが、ちゃんとムダ毛を処理して、女性用の下着をつけて、憧れの…もとい、不本意ながらスカートをはけば、それがめくれて見えるものの違いに、どれだけの人が気付けるだろう。

真面目な論調で何を言ってんだと我ながら思うが、他に何もアイデアが浮かばなかったので仕方がない。
ここは、このお題をひらりとかわして次にいくしかないかな、と。
ちなみに、学生の頃、女子の制服はスカートに限定されて、その長さも規定されている学校ってのは、その校則をスケベ心で作ってんのかなと勘ぐってたのも事実。

3/2/2025, 1:55:49 PM

夕暮れて、薄闇が迫る。
小学校の校門を出ると、畑に挟まれた一本道が延々と続く。
そこを、ランドセルを背負ってトボトボと歩いていた。
宿題を忘れて居残りとなり、先生に説教をされて、やっと解放されたのはついさっき。
日が暮れるのがこんなに早いとは。
辺りに人の姿はなく、道沿いの家には明かりが灯り始めた。
夜が訪れる。

街灯もほとんどなく、暗闇に包まれた景色の真ん中に、まっすぐな道が伸びている。
早く家に帰りたいと、自然に早足となり、ランドセルのベルトを両手で握りしめて、歩調をさらに速めた。
すると、歩きながら前を向く視界に、不意に人影が浮かび上がる。
そこは、まっすぐな道が交差し、十字路となっている場所。
街灯が一本、頼りなげに灯っている。
その街灯の明かりの下、逆光でシルエットとなった人の姿が、微動だにせずに立ち尽くしているのが見えた。

「知らない人に声をかけられても、ついていかないように」
先生や母親から言われた言葉。
言われなくたって、知らない人についていったりなんかしない。
だって、怖いじゃないか。
知らない人の心の中は、まるで深淵のように深く、その真実は見えない。
たとえ笑顔が張り付いていても、その偽りの表情の奥に、どんな暗い感情が渦巻いているのか。

あまりそちらを見ないようにして、通り過ぎようとした。
街灯の下に来た時、不意に声をかけられる。
「あなたは誰かしら?」
思わず立ち止まり、
「…え?」
質問の意図が分からない。
「あなたは、誰?」
同じ質問をされて、言葉に詰まる。
「誰って…」
見上げると、見も知らぬ女性だった。
笑顔だった。怖かった。
走って逃げた。

帰宅して、母親に今あったことを説明する。
すると母は、
「ああ、あの人ね。知ってるわ。目が見えないんだって」
その女性について教えてくれた。
「あなたの学校の、確か二年生の子のお母さんよ。あなたよりふたつ下ね」
「男の子?女の子?」
「男の子だったと思う。きっと、その子を迎えに行ってるのね。目が見えないから、あなたにそう聞いたんじゃない?」
「あなたは誰って?じゃあ、ちゃんと名前言った方が良かったのかな?」
「うん…でも、答えなくても良かったと思うよ。その子ね、半年前に交通事故で亡くなってるの。それからずっとあのお母さん、もういない息子さんを探して歩いてるんだって」

「あなたは誰かしら?」
あの笑顔を思い出す。
もしあの時、自分の名前を伝えていたら、彼女は何と返したのだろう。
知らない人の心の中は、まるで深淵のように深く、その真実は見えない。
彼女の悲しみの深さも、その笑顔の奥にある感情も。

それから、あの女性に会うことはなかったが、大人になった今、時折、物悲しく思い出す。
どこかで、我が子の名を告げる相手に出会えていたら、あの笑顔は、偽りでなく本物に変わったのだろうか。
だが、その時こそがやけに恐ろしく、切なさとともに、あの暗い一本道が脳裏に浮かぶのだ。

3/2/2025, 2:06:56 AM

最近じゃ、あなたの夢も見なくなった。
街であなたに似た人を見つけることも。
少しずつ、あなたの存在が薄れてゆく。
誰よりも近くにいたのに、誰よりも大切だったのに。

あなたを責める気持ちであふれていた心は、今はもう、時折思い出すあなたへの感謝に置き換えられた。
あなたのおかげで強さと優しさを持ちたいと思えたし、あなたのおかげで言葉を大切にしたいと思うようになった。

人を愛するということを、本当に教えてくれたのはあなた。
恋が芽生え、愛を育む過程で、幸せの断片をいくつも与えてくれた。
感謝以外に何があるというのか。

そしてもう、記憶も薄れてゆく。
あなたの存在が、遠い過去の人となる。
そしてもう一度、新しい誰かと始める物語。
芽吹きのときが訪れる。

あなたにもらった、たくさんの気づきに感謝して、そして反省して、ここから成長して花を咲かせよう。
一度枯れてしまった花も、その種子があれば、また新しい花を咲かせることが出来る。

あなたの夢も、あなたに似た人も見なくなったけど、この感謝の気持ちだけは失くさずにいよう。
新たに芽吹いた物語に、きっと彩りを与えてくれる。
もっと大きく、美しい花を咲かせることが出来る。

3/1/2025, 2:13:10 AM

高校生の頃に家出した。
行くあてもなく、隣町に流れる川の、大きな橋の下へ。
先客がいて、話しかけてくる。
「どうした兄ちゃん。親と喧嘩でもしたか?」
図星だった。正確には、父親と、だ。
「ほっとけよ。イライラしてんだ」
「そうみたいだな。まあ、若いうちはイライラもするさ」
「おっさんになってもムカつくことはあるだろ」
「どうかな。ムカついたところで、何も変わらんことを知ってるからな」
「人生あきらめんなよ。…ここに住んでんの?」
「ああ。自由気ままなホームレスライフってやつだ」
「家族は…いないの?」
「いたらこんなとこに…まあ、離散した元家族はいるけどな」
「離散したって、家族は家族だよ。帰らないの?」
「帰れたらこんなとこにいないよ。まあ、いろいろあるんだ。君もそうだろ?」

カップラーメンを作ってくれた。
それを、目の前の川の流れを見ながら食べた。
川はどんよりと流れて、空はとっぷりと暮れてゆく。
遠く橋の向こうに、街の明かりが灯り始めた。

「帰らないのか?親御さん心配してるぞ」
一斗缶で燃える火に木くずを放り込みながら、聞く。
「どんな顔をして帰ればいいのか…こんなとこで焚き火して怒られないの?」
「怒られるかもな。でも、こうしなきゃ夜も越えられない。家がないってそーゆーことだろ」
「帰ればいいじゃん。家はあるんだから」
「どんな顔をして帰ればいいのか分からないんだよ。…君と同じだな」
「もう、どれくらいここにいるの?」
「さあ…もう忘れたよ。家族の顔も忘れそうなくらいだ。…元家族、か」
「今も家族だって。子供もいるんでしょ?」
「もう、こんなんじゃ父親ヅラは出来ないよ。君の父親はこんなんじゃないだろ。それだけで幸せなんだぞ」
「…勝手に決めんなよ。どんな父親がいいかなんて、その基準はみんな違うだろ」
「まあ、そうだけどな。少なくとも、家族を捨てた父親には、愛される資格はないと思うよ」
「いろいろ事情があったんだろ。そう言ってたじゃん」

その事情については、詳しく聞かなかった。
俺も、親父との喧嘩については話さなかった。
橋の下で会っただけのおっさんに話すことでもないし。
ここで親父の愚痴を言うよりも、このまったりした時間をもう少し味わっていたかった。
試験とか成績とか進路とか、そんなことを忘れて、焚き火の温かさに包まれて。

次の日の朝早く、家に帰った。
おっさんは、
「いいか兄ちゃん、俺みたいになるなよ。人生は自分次第だぞ。どうとでも変えられる」
と言って手を振った。
そのまま返したい言葉だったが、黙って俺も手を振った。

数ヶ月後、その橋を通りかかり、自転車を止めて橋の下に降りてみたが、おっさんの姿はなかった。
どうなったのかは分からない。
人生をやり直すために行動を起こしたのか、単にねぐらを変えただけなのか、あるいは…。
だけど、あの日の温もりをイイ思い出にしたいから、俺は勝手に、おっさんが家族とともに過ごしている姿を想像する。
あくまで、勝手に、だ。

2/27/2025, 11:23:35 PM

我が家の猫は3匹。
末っ子は黒猫。
自分が幼い頃から、たくさんの猫と過ごしてきたけど、黒猫はこのコが初めて。
実家に寄り付いていた野良猫が、いつの間にか4匹の子猫を産んでいて、そのうちの2匹が黒猫だった。
母猫はキジトラ。
黒猫って黒猫からだけ生まれるわけじゃないんだ。
知らなかった。

実家から、一匹もらってくれないかと打診があって、すでに2匹いたから悩んだけど、逆に、2匹も3匹も変わらないかって結論になって、遠路はるばる実家までもらい受けに。
子猫達はかなり警戒心が強く、私達が実家に到着した時からずっと、テレビの後ろに隠れて出てこない。
それをご飯で釣ったりして何とか顔を見せたところで、私の母親が捕獲してキャリーバッグに入れようとしたが、かなり抵抗したらしく、母親が手から大出血。
床に血をポタポタ垂らしながら、何とか確保成功。

そんなのを目の当たりにして、実家から車で連れ帰るのは複雑な気持ちだった。
一匹だけ、無理やり母親のもとから引き離して、こんな遠い場所に連れ去ろうとしている。
もしこれが人間だったら、間違いなく非道な行為だ。
いや、猫だって…。
後部座席のバッグの中で縮こまっている黒猫を時折振り返りながら、なんだか心が締めつけられるような思いだったのを覚えている。

だが、猫は強し、だった。
最初のうちこそおとなしかったものの、すぐに我が家に慣れ、縦横無尽に駆け回る。
先住猫と張り合い、キッチンを荒らし、おまけにマーキングまでし始めた。
去勢もしたのに…。
おかげで今は、毎晩オムツ猫に変身する。
黒猫のオムツ姿、なんともcute!だ。

ちなみに、実家の残りの3匹の子猫はすべて里親が見つかり、母猫はそのまま実家で暮らすことになったという。
しばらくして一度、我が家の黒猫を連れて実家に帰ったことがある。
母猫に再会して、離れなくなってしまったらどうしよう、また血を流す事態になったりして、なんて危惧もしていたが、2匹はほとんど絡むこともなく、淡々とそれぞれの家族の一員として過ごしていた。

まさに、猫は強し、だ。
そして可愛い。

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