Ryu

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2/12/2025, 1:40:51 AM

ココロって何ですか?
私の体のどこにありますか?
健康診断でも、身体検査でも、ココロなんて部位は測定してくれない。
頭痛や腹痛と同様に、こんなに自分を苦しめるのに。
その苦しさに耐えきれず、命を落とす人だっているのに。
ココロって、何よりも大切ですよね。
ちゃんとケアしてますか?

あなたのココロと私のココロを入れ替えたなら、それは私なのでしょうか、あなたなのでしょうか。
長く世話になってきた体で、自分では思いもしなかったようなことを考える。
…いや、考えるのは頭か。
じゃあ、ココロを入れ替えても私は私のまま?
ココロって何なんだろう。
ホントに存在するのだろうか。

そんなもの、ないのかもしれない。
すべて、頭で考えて、感じているのかもしれない。
じゃあ、頭がココロ?
実はそうなのかもしれないけど、そうじゃない気もする。
そうであって欲しくない気も。
嬉しい時や悲しい時、頭で考えるより先に、感情が迸る。
これは、頭じゃないどこか、まさに、❤のある場所で。

…もう、分からないや。
残念だ、と落胆してるのは、頭? ココロ?
ココロを失くしたら、ロボットみたいになるのかな。
それはそれで、生きるのが楽になったりするのかな。
でも…失くしたくないな。
それが生きている証なら、どれだけ厄介な思いを押し付けられても、それに抗っていきたいな。

ココロって何ですか?
こんな風に、何の生産性もないことをツラツラと思い悩む、そんな一番の人間らしさのことなのかもしれないな。

2/10/2025, 5:18:18 PM

星に願っていたら、星が落ちてきて、目の前の窓枠に腰掛けて言う。

「やめてくれよ。俺達にそんな力はないよ。神社にでも行ってくれよ」
「いや…そう言われちゃ身も蓋もないんだけど、このスタイルはずっと昔からのもんだろ。叶わないのもそれなりに承知の上で…」
「冷やかしかよ。そんな力もないって分かってて持ち上げようってか。ホント、性格悪いよな」
「友達みたいに言わないでくれよ。分かったよ。願うのはやめる。ところで、君はなんて星?」
「俺?俺は…願い星」

「…」
「いや、名前だから。しかも、俺達星の名前は、君達が勝手につけたんじゃないか。発見した人の名前だったりもする」
「何も言ってないよ。イイ名前だと思う。ホントは、願いを叶えてくれたりするんじゃないの?」
「だから、そんな力はないって。ほとんどが水素とヘリウムガスで出来てるんだから。地球が願いを叶えてくれるかい?」
「地球に…願ったことはないかな。何となく、何となく上を見ちゃうんだよな」
「へりくだり過ぎだよ。もっと自信を持て。自分の力で願いは叶えられる。そう信じるんだ」
「さすが願い星。そうやって僕達を…」
「やめろ。俺はもう帰る。無駄な願い事はやめるんだな。…ちなみに、何を願ってるんだ?」
「ん…今は、あの星達がいつまでもキラキラと輝いていますようにって。あんまり綺麗だったもんだから」

「…そうか。うん、頑張るよ。その願いは、俺達も叶えたい」
「僕も、個人的な願いは、自分の力で叶えられるように頑張るよ」
「うん。星に願ってくれて、ありがとう。願い星として、聞き入れるよ」
「そっか。じゃあこれからも星達は輝き続けるんだね。安心した」
「言ったろ。自分の力を信じるんだ。俺も自分達の輝きを信じる。だから、終わらない」

夜明けが近付く。
星が消えてゆく。
でも、願い星はそこにある。
僕たちの頭上に、輝いている。
そんな夜の、妄想のような空想。

2/10/2025, 1:24:56 AM

後悔しているのは、君の背中を押したこと。
崖っぷちに立っていた君の、小さな背中を押してしまったこと。
その行為によって、君とのお別れの時が訪れた。

君は、崖から真っ逆さまに飛び降り、捨て身の猛攻で彼にアプローチして、その恋を手に入れた。
見れば、君の背中に生えた翼は、天使のそれと寸分違わない。
君は生まれ変わったんだね。
僕のアドバイスを真に受けて、僕の応援に励まされて。

君の背中を押してしまったばかりに、僕は君の隣にいられなくなった。
君の力になりたいなんて、思ってしまったばかりに。
こんな優しさはいらなかったのか。
崖から飛び降りるリスクを伝えて、優しく肩を抱いて崖から引き離せば良かったのか。

いっそのこと、崖下で君が玉砕されれば良かったのに。
その美しい翼をもがれ、惨めな敗者となって僕のもとへ戻ってくれば良かったのに。
思えば、もともと崖なんか無かったのかもしれない。
その縁から一歩踏み出すだけで、君は彼と結ばれる運命だったのかも。

…いや、運命なんか信じない。
すべては動き出す勇気、なのだろう。
それが僕には無かった。それだけのこと。
君と同じように崖っぷちに立っていながら、その一歩を踏み出せなかった。
誰かが背中を押してくれたらなんて、都合のいいことばかり考えて。

もう、君の背中を押したことを、後悔するのはやめよう。
君の幸せそうな笑顔。それが教えてくれた。
もう、何をあがいても無駄だってこと。
僕にだって、あの翼を手に入れることは出来るんだってこと。
崖下は遠く霞み、着地点は見えない。
そもそも、地上に降り立つ日は来るのだろうか。

それでも、僕は宙に舞う。
落ちていき、息が苦しくなって、もうダメかと思った矢先に、背中がムズムズとしてきて、僕の背中に小さな翼が生えてきた。
感覚で分かる。
まだ羽ばたけないけど、きっといつか、地上で玉砕する前に、大きく羽ばたいて飛んでゆく。

あの大空に向かって。

2/8/2025, 1:47:24 PM

死んだわけでもないのに、夜中に目を覚ましたら、20歳の自分が枕元に立っていた。
自分で自分を驚かすな。もっと明るい時間にしてくれ。

「タイムリープ先の時間は選べるんだけど、他の人に見られない深夜がいいかなって」
タイムリープって…普通は未来からやって来るもんだろ。
「俺は平行世界の俺なんだよ。とうの昔にタイムトラベルが可能になった世界線の」
そりゃそうだよな。
俺が20歳の頃に、タイムリープなんて出来るわけもなかった。
まあそれは今もだが…なんか、世界線の差が大き過ぎないか?

「そんなことどうでもいいけどさ、どうなのよ、人生の半分を終えたこの時代の俺ってのは。それを聞きに来たんだよ」
いや…それは自分の世界線にいる自分に聞かないと意味がないんじゃないの?
なんせ、タイムトラベルが出来る出来ないの差があるんだから。
「そーなんだけど、それは禁止されてんのよ。ほら、何かをイジって歴史を変えちゃマズイじゃん?」
未来の出来事も歴史って言うのかな…よく分からないけど、平行世界とやらまで足を伸ばして行き来出来るようにするとは、この世は何でもありだな。
…いや、別の世界か。

「だから、自分がどうなってるかじゃなくて、その歳になった自分がどういう気持ちでいるか、それが知りたかっただけ」
気持ち?今の俺の気持ち?そんなもん知りたいの?
「今日俺、20歳の誕生日。周りからは大人になったとか言われるんだけどさ、実感がないわけよ。だから、人生の半分を生きた俺はどんな気持ちでいるのかなって」

…んー、気持ち…まず、大人になったつもりで生きてるけど、本当に大人になれたとは思ってない。
そもそも、どうしたら大人になったと胸を張れるのか、まったく分かってない。
ただ、それでも世間は大人として扱ってくるから、大人のフリをするスキルは身に付けたよ。
つまりさ、20歳になった頃の自分と、何にも変わってないってこと。

「やっぱそうだよね。俺は俺のまんまだよね。だって、いくつになったって俺だもんね」

他の人のことは知らないけど、俺はこのままでいいと思ってる。
逆にさ、生まれたばかりの何も知らない赤ん坊の頃から、20歳くらいまでに成長して変わったところはたくさんあると思うよ。
だから、20歳になったから大人、ってわけじゃなくて、20歳になるまでにいろんなこと覚えたね、っていう節目みたいなものじゃないかな。
今や法律上の「大人」は18歳以上だけどね。

「そしてこの先は、覚えたいろんなことを活かして、大人のつもりで生きていく、と」

そう、大人のフリをしないとダメな場面が度々あるからね。
知識はそれなりに増えるし、フリをするのも次第に慣れてくる。
でも、大人になれたというライセンスなんか貰えない。
周りを見回すとさ、これが大人のやることなの?って首を傾げる行為に明け暮れる人達があまりに多いと気付くよ。

「いるね。この間、テレビで『ぶつかりおじさん』のニュースを見たよ」

そっちの世界にもいるんだ、そんなの。
パワハラとかカスハラとかクレーマーとか、およそ小学生でもやらないようなことを平気でやる自称大人達がたくさんいるからね。
大人のフリすら出来ない人達。
まあ、こんな風に権力振りかざせるのが大人だと勘違いしてるのかもしれないけど。
会社や家庭じゃ偉そうな顔してふんぞり返ってるのかもしれないね。

「そうなると、『子供部屋おじさん』なんてのは一番素直な自己表現なのかも」

まあ…褒められたものではないと思うけど、大人になれない自分をよく分かってるとは言えるんじゃないかな。
でもやっぱり、大人のフリすら出来ずに両親に迷惑かけたり、社会に馴染めない自分を変えていく努力はしてもいいと思うけど。
どうしたって世間は、大人としてしか扱ってくれないんだから。
…とゆーか、おじさんの種類がこっちの世界と一緒なんだな。

「要するに、大人か子供かなんて、区別はないってことだよな。誰かが勝手に線引きしただけで」

そーゆーことだと思うよ。
…あ、ただひとつ、自分の子供が出来た時は、ホントに大人にならなきゃなって思ったよ。
この子達を守れる大人にならなきゃって。
人の親になるからには、子供のままじゃいられない、って使命感みたいなのは感じた。
感じて頑張ったけど、どんな父親なんだろうな、子供達から見たら。

「きっと、頼もしく思ってるよ。俺も、戻ったら親父と話してみる。親父とこんな話、したこともなかったけど」

そーか。寡黙な親父なのは、そっちも変わらないか。
そっちの世界の親父が、自分とそう変わらない年齢だなんて、なんだか変な気分だよ。
親父みたいにはなれそうにないと、ずっと思ってた。
俺にとっては、親父は立派な大人だったな。
俺なんかにこんな話を聞くより、親父と話した方がよっぽど心に響くもん貰えたと思うぞ。

「いや、そんなことないよ。あんたの話はすごく心に響いた。あんたを、大人として尊敬するよ。…あ、これ、自画自賛ってやつ?」

彼は、微笑みながら消えていった。
現れるのも唐突なら、去ってゆくのも忙しない。
余韻くらい残せっての。お別れの時ぐらい。
こっちからは会いに行けないしな。
誰よりも近い存在のはずなのに、この世界の誰よりも遠く…。

今年は、下の娘が成人の日を迎える。
機会があったら、大人について話をしてみよう。
20歳の俺みたいに、心響かせてくれるだろうか。

2/8/2025, 3:40:14 AM

あなたが今、住んでいるこの星、地球ではありません。
私達の星、タイオニアです。
地球は、2024年6月28日に、消滅しました。
星の最後の咆哮、気付きませんでしたか?

あの日、我々は総力をあげて、あなた達を救い出しました。
中心より破壊されてゆく星の表面にいたあなた達は、そのあまりの振動によって次々と気を失っていったんです。
それを我々が、星が完全に破壊される前につまみ上げ、我々の宇宙船に詰め込み、我々の星へと搬送しました。

表現がおかしかったですか?
まあそれは、あなた達と我々のサイズの違いでしょう。
なにしろ、あなた達の地球は、我が家のガレージに収まる大きさですからね。
ええ、もう地球はありませんから、擬似的な惑星模型を、ウチの息子が作りました。
ウチの息子、器用なんですよ。地球にそっくりでしょ?

つまり、我々家族が自家用宇宙船で地球へ向かい、気まぐれにあなた達の星のマントルを破壊して、生き物をすべて吸い上げてきた訳です。
なんでそんなことしたかって?
だから、気まぐれですよ。
息子が、何か生き物を飼ってみたいとも言ってましたんでね。

でも、あなた達にとって、今までの地球での生活と何ら変わりないでしょう?
星の表面にあった造形物は、そっくりそのまま剥がして持ってきましたからね。
あなた達が、ロケットなんぞを飛ばして我が家のガレージを飛び回らない限り、気付かれない自信があります。
あなた達にはね、現状を知られずに、今まで通りの生活をしてもらって、それを我々は観察したい訳ですよ。

では何故、あなたにだけ、こんな話をしたのか?
それはですね、あなたの近頃の行いが、目に余るからです。
あなたは、地球上にある比較的大きい国のトップなんですよね。
そのあなたが、他の国に対して争いを仕掛けているでしょう。
そのせいで、せっかく息子が作ったこの箱庭が、所々破壊されていくんですよ。
これは許せない。
しかも、宇宙開発だとか言って、次々とロケットを飛ばす計画を立ててますよね。
さっき言ったように、それは困るんです。
我々はもう少し、飽きるまであなた達を飼い続けたいですからね。

とゆー訳で、あなたにはこの辺で消えてもらいます。
まあ、生き物ですので、ちゃんと然るべきところで殺処分してもらいます。
…自分が消えたら我が国は大騒ぎですって?
どれだけ騒がれたって、戦争なんてくだらない破壊行為に比べたら、なんてことありません。
所詮、箱庭の中でのから騒ぎですしね。
黙って処分してしまっても良かったんですが、あなた達の知能は思ったより高いことが分かったんで、これはせめてもの恩情です。

あなたの国の人々には、何も伝えません。
誰も知らない秘密とします。
どうせ、すぐに息子の興味も他に移ることになると思うので、その時までは、何も知らずに幸せに過ごしてもらいたい。
来月には、ガレージセールがあるんですがね、そこでこの惑星模型を処分する話もあります。
生き物は売りづらいので、まあ…その時は…ね。

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