あなたが今、住んでいるこの星、地球ではありません。
私達の星、タイオニアです。
地球は、2024年6月28日に、消滅しました。
星の最後の咆哮、気付きませんでしたか?
あの日、我々は総力をあげて、あなた達を救い出しました。
中心より破壊されてゆく星の表面にいたあなた達は、そのあまりの振動によって次々と気を失っていったんです。
それを我々が、星が完全に破壊される前につまみ上げ、我々の宇宙船に詰め込み、我々の星へと搬送しました。
表現がおかしかったですか?
まあそれは、あなた達と我々のサイズの違いでしょう。
なにしろ、あなた達の地球は、我が家のガレージに収まる大きさですからね。
ええ、もう地球はありませんから、擬似的な惑星模型を、ウチの息子が作りました。
ウチの息子、器用なんですよ。地球にそっくりでしょ?
つまり、我々家族が自家用宇宙船で地球へ向かい、気まぐれにあなた達の星のマントルを破壊して、生き物をすべて吸い上げてきた訳です。
なんでそんなことしたかって?
だから、気まぐれですよ。
息子が、何か生き物を飼ってみたいとも言ってましたんでね。
でも、あなた達にとって、今までの地球での生活と何ら変わりないでしょう?
星の表面にあった造形物は、そっくりそのまま剥がして持ってきましたからね。
あなた達が、ロケットなんぞを飛ばして我が家のガレージを飛び回らない限り、気付かれない自信があります。
あなた達にはね、現状を知られずに、今まで通りの生活をしてもらって、それを我々は観察したい訳ですよ。
では何故、あなたにだけ、こんな話をしたのか?
それはですね、あなたの近頃の行いが、目に余るからです。
あなたは、地球上にある比較的大きい国のトップなんですよね。
そのあなたが、他の国に対して争いを仕掛けているでしょう。
そのせいで、せっかく息子が作ったこの箱庭が、所々破壊されていくんですよ。
これは許せない。
しかも、宇宙開発だとか言って、次々とロケットを飛ばす計画を立ててますよね。
さっき言ったように、それは困るんです。
我々はもう少し、飽きるまであなた達を飼い続けたいですからね。
とゆー訳で、あなたにはこの辺で消えてもらいます。
まあ、生き物ですので、ちゃんと然るべきところで殺処分してもらいます。
…自分が消えたら我が国は大騒ぎですって?
どれだけ騒がれたって、戦争なんてくだらない破壊行為に比べたら、なんてことありません。
所詮、箱庭の中でのから騒ぎですしね。
黙って処分してしまっても良かったんですが、あなた達の知能は思ったより高いことが分かったんで、これはせめてもの恩情です。
あなたの国の人々には、何も伝えません。
誰も知らない秘密とします。
どうせ、すぐに息子の興味も他に移ることになると思うので、その時までは、何も知らずに幸せに過ごしてもらいたい。
来月には、ガレージセールがあるんですがね、そこでこの惑星模型を処分する話もあります。
生き物は売りづらいので、まあ…その時は…ね。
2/8/2025, 3:40:14 AM