五割増でした!
何のことか分からない方にはスルーしていただいて、ご協力いただいた方々、ホントにありがとうございました。
で、今回のお題は「永遠の花束」…って、何?
花束が永遠って…どーゆー状況?
花は枯れるから、造花ってことか?
造花だって永遠ではないよな。
いずれ朽ち果ててゆく。
じゃあ、心の中の花束ってことで、それを贈るのは感謝の気持ち?
まさに今。
私から、永遠に枯れない花束を贈ります。
無理やりだけど、花束を贈る習慣のない私には、花束が永遠であることに特段意味はない。
それよりも、枯れるからこその美しさってもんを感じていたい。
栄枯盛衰。自分にも、栄盛の時代があったはず。
まだ枯れても衰えてもいないつもりだが、生きてきた時間は着実に増えてゆく。
永遠なんて無いものとして、生きている今を花束のように美しく慎ましく咲き誇り、いずれ枯れて朽ち果てる日まで、誰かの心を躍らせ癒す存在でありたい。
仕事に向かう朝。
いくつになっても、理由なき不安は訪れる。
生きていくことにさえ、抵抗を覚える夜だってある。
そんな時思うのは、自分に贈られた三輪の花のこと。
永遠ではないが、美しく慎ましい花達だ。
この花達が、自分の心を躍らせ癒してくれる。
だから、仕事を頑張れる。生きてゆける。
家族という名の花束。
これは、永遠であって欲しい。
お願いがあります。
今回だけでいいので、この駄文を読んだら、良し悪しにかかわらず❤をもらえませんでしょうか。
ご面倒言って申し訳ありませんが、自分の作品をどれくらいの人が読んでくれているのか、とっても興味があります。
このアプリの仕様上、❤を送るには都度広告を視聴することになりますが、そのハードルを越えてまで私の作品を「読みたい」と思ってくれる人が、いったいどれほどいるのか、否、本当にいるんだということを実感したいと願っています。
もちろん、私の方も同様に、読ませていただいた作品には心を込めて❤を贈りたいと思います。
たった一票ではありますが、あなたが生み出した言葉の贈り物を大切に受け取り、そして賛辞を送らせていただきます。
それぞれの方がそれぞれの個性を輝かせて紡ぎあげた文章ですから、それは当然の報酬かと思いますし、これをモチベーションとしたさらにたくさんの素晴らしい作品を拝読させていただくことを願うばかりです。
ですので、お題には歯向かいます。
やさしくしないでとは言い難い。
やさしくしてほしい。
私の拙い作品は、皆さんの優しさで成り立っています。
あなたが今、この手紙を読んでいるということは、私はもうこの世にはいないのでしょう。
そうしてくれと、病院の先生に頼みました。
今度の手術は、成功する確率が五分五分だとか。
もう、あなたがお見舞いに来てくれる日もなく、きっとこのまま生死を分かつことになると思い、ペンを取りました。
あなたに出会って二年。
たくさんの思い出を作りましたね。
去年の秋に行った温泉旅行、あの紅葉を二人で見た時の感動は今でも忘れません。
今年の春には USJ で、子供のようにはしゃいでいたあなたの笑顔を思い出します。
そして夏、予定していたグアム旅行、キャンセルすることになってしまってごめんなさい。
あなたと二人、南の島で泳ぎたかったな。
私が入院した当初、あなたは早急に籍を入れたいと言ってくれましたね。
単なる恋人の関係では、コロナの影響で見舞いもままならないからと。
ずっとそばにいたいと言ってくれたのに、私がそれを拒絶してしまった。
自分がいなくなる未来を想像してしまったから。
あなたには、その時、自由でいて欲しかったから。
いよいよ、手術の日がやって来ます。
あなたには、そのことも伝えないようにお願いしておきました。
何も気にせずに、その日を過ごして欲しいから。
あの、USJ で見せてくれた笑顔のままで、いつもと変わらない日常を過ごしていて欲しいから。
たった二年のお付き合いでした。
たった二年間でも、あなたの彼女でいられたことを、何よりも幸せだったと感じています。
だからこそ、あなたの心に残る最後の私の姿を、悲しいだけのものにして欲しくない。
…分かってくれますか?こんな私のワガママを。
あなたがこれを読む時に、私はもういない。
卑怯だと思われても仕方ありませんね。
こんな私と出会ってしまったことを、あなたは後悔するかもしれないけど、あなたに会えて、私は毎日が幸せでした。
一生分の幸せをもらえたから、もう何も心残りはありません。
…嘘です。
心残りだらけです。
もっとたくさん話して、たくさん手をつないで、ハグして、キスしたかった。
あなたと結婚して、子供を作って、幸せな家庭を築きたかった。
グアム旅行だって、リベンジしたかったな。
…でももう、目を閉じて、すべてを遠ざけます。
今の私には、それしか出来ないから。
それでは、お別れをさせてください。
さようなら。ありがとう。
いつまでも、お元気で。
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「ねえママ、こんなお手紙見つけちゃった。これ、ママが書いたの?」
娘が無邪気に私のもとに走ってきて、封筒に入った手紙を差し出した。
「…え、読んだの?」
「読んだけど、なんだかよく分かんなかった。誰か、死んじゃったの?」
「あー、うん、大丈夫だったみたいだよ。手術が成功したみたい」
「そーなんだ!良かったね!ママ」
えーと、この手紙は早々に処分すべきだったのかな。
隠された手紙も、いつか誰かが見つけ出してしまう。
でもまあ、最近は残業や飲み会で遅くなってばかりの夫に愛想を尽かさないためにも、こんな手紙は役に立つのかもしれないな。
あの頃の気持ちを思い出して、今生きていることに感謝して、この幸せな家庭を守っていこう。
そして近いうちに、子供も連れて三人でのグアム旅行を計画しようと思う。
行き止まり。
雪の壁が、完全に行く手を阻んでいた。
こんな細い道路では、車を転回させることもままならない。
かといって、バックで来た道を戻るのも、この夜の暗闇においては命取りだ。
山道の片側にはガードレールがあるが、その向こうは崖になっている。
仕方ない。朝まで待つことに決めた。
幸いガソリンは満タンで、暖房も効いている。
朝になれば、周りの状況も分かるし、慎重にバックすればここを抜けられるだろう。
スマホを出して電波を確認すると、微弱ながらアンテナは立っている。
JAFを呼ぶことも考えたが、場所を説明する自信がないし、この程度で大事にはしたくなかった。
一時間ほど過ぎた頃だろうか。
何気なくバックミラーを見ると、車の後ろに人が立っているのが見えた。
えっ、と思い振り返る。
…誰もいない。雪がしんしんと降り続けている。
嘘だろ、この辺ってそーゆーところ?
女の人のように、思えた。
白いワンピースの…この雪の中で?
こりゃあ、決死の覚悟でバックするしかないのか?
コンコン。
助手席側の窓を叩く音。
ビクッ!として見ると、女性がこちらを覗き込んでいる。
えぇ〜こんな、あからさまに?
幽霊って、もっと奥ゆかしく姿を見せるもんじゃないの?
しばらく見つめ合って、姿を消しそうにもないので、仕方なく窓を開ける。
「あの〜何か?」
「あ、すみません、こんな夜更けに」
「え、この辺に住まわれてる方ですか?」
「いえ、通りすがりの者です」
「通りすがりって…この雪の夜道を?その格好で?」
「まあ…そーゆーことなので」
どーゆーことなのか、よく分からないまま、彼女は車に乗り込んできた。
乗せるべきじゃない、という警告灯も点滅したが、話してみると、まるで脅威を感じない。
「どーしたんですか、こんな場所で」
こっちが聞きたいセリフだが、とりあえず素直に答える。
「いや、単純に迷子です。山を越えて知り合いの家に行くところだったんですが。…そちらは?」
「私は…見ての通り、通りすがりの浮遊霊です」
「大層なことを、サラリと言っちゃいましたね。…気絶してもいいですか?」
「いえいえ、凍死しちゃいますよ。私は幽霊歴も浅くて、呪い殺すとかも出来ませんから、安心してください」
「安心するのは無理ですが、危害を加えられないということは分かりました。それで、何があったんです?」
「つい先週のことですが、彼氏にこの山に連れてこられて、首を絞めて殺され、道路脇の崖から遺棄されました」
「…エグい話ですね。それは早く、呪い殺す技を身に付けた方がいい」
「いえ、そんなつもりはないんです。そもそも、幽霊にそんな力があるのかどうかも怪しくて。もうあとは、どうやってこの世を去るかってところですね」
「どうやって…もしかして、力になれます?」
「ああ、優しい人で良かった」
「いや…出来ることと出来ないことがありますが…」
「私の彼氏を見つけて、これを渡して欲しいんです」
渡されたのは、土に汚れたスマホ。
「彼が私をこの山に捨てた時、ポケットから落としたみたいで。ロックは私が外せますから、中身を見て、彼氏の情報を探ってください。彼と私が一緒に写った画像があるはずです」
言われるがままにスマホを操作する。
そして、彼女が男性と幸せそうに寄り添い合う画像を見つけた。
これは…心がエグられる。
「これを彼に返さないと、どうしても気掛かりで。こんな画像が残ってるから、もういらないのかもしれないけど、画像は削除できるし、スマホだけでも」
どこまでお人好しな女性なんだろう。
生前に出会いたかった。
「分かりました。必ず彼に渡します。そしたらあなたは、この雪山から旅立てるんですね」
「たぶん…何しろ幽霊歴が浅いので…」
そんなキャリアが関係あるのかどうかは分からないが、とにかく彼女の願いを叶えて、成仏させてあげたかった。
朝、車の中で目を覚ます。
隣には誰もいない。
だが、シートの上には、土に汚れたスマホ。
夢ではなかったようだ。
車をスタートさせ、何とか山を迂回して、目的地の知り合いの家に向かう。
途中、コンビニに寄って、匿名で警察に通報した。
本当のことは言えないから、山道を走っていて雪に埋もれた死体らしきものを見た、気のせいかもしれないが確認して欲しい、くらいの内容にしておいた。
自分にだって正確な場所は分からない。
でも、どこかに眠っている彼女を見つけ出してあげて欲しい。
私は、自分に課せられた使命を果たすから。
「雪に囲まれて身動き取れなかったって?」
「そうなんだよ。雪山を舐めてたわ」
「惜しかったな。昨夜の合コン、最高だったぞ」
「そっか。参加できなくて悪かったな。…ところで、渡したいもんがあるんだけど」
これで、彼との付き合いも終わりだな。
悪い奴だとは思わなかったんだけどな。
この後、一発ぐらい殴っておこう。
ついでに、自首も勧めておこう。
あとは、彼次第だ。
帰り道、昨夜立ち往生した辺りに立ち寄って、ガードレールの下に花束を手向けた。
警察は捜索してくれたのだろうか。辺りに人けはない。
何の根拠もなく、雪解けとともに発見される彼女の姿が脳裏に浮かんだ。
「私に出来るのはここまでかな。それじゃ、帰りますね、バイバイ。ご冥福をお祈りします」
遠く、崖下の雪景色の中に、白いワンピースを見たように思ったのは…気のせいだったのだろうか。
旅の途中で出会った猫は、不思議な力を持っていた。
人間に姿を変え、言葉を喋ることが出来たのだ。
「旅人さんかい?どこまで行くんだい?」
「あてはないよ。家にこもってじっとしてるのに飽きただけだ」
「偏奇なやつだな。外の世界は危険だらけなのに」
「偏奇なのはあんただよ。猫のくせに、人間なんぞに成り果てる必要もなかろう」
「成り果てる…か。猫は猫で、苦労も多いんだけどな」
公園のベンチに座り、彼は自分の手の甲を舐めている。
猫の習性は失くしていないようだ。
私はといえば、名も知らぬこの町に辿り着き、さてそろそろ帰路につくべきかと考えていたところだ。
旅を続けてきたが、特にこれといって刺激的なことなど無かった。
美しい景色はいくつも目にしたが、それも、自分の想像を超えるものではなかった。
「この辺を旅の終着点にして、自分の生まれ故郷に帰ろうかと思っているよ。そろそろ恋しくなってきた」
「そうかい。帰れる場所があるのはいいな。待ってくれている人は?」
「いや…いない。それでも、知り合いはたくさんいるよ。町の皆が知り合いだ」
「そうか。この町にも知り合いが出来たじゃないか。私は、カリエ。猫の時も同じ名だ」
「私はラムスロット。ところで、あんたは何故、人間の姿になれるんだ?」
「さあ…な。もともとは普通の猫だったんだ。ところが、捨てられて彷徨って、この町に辿り着いた途端、こんな力を手に入れた」
「…捨てられたのか。猫も大変なんだな。人間を恨まないのか?」
「さあ…どうだろう。自分も今や人間に成り果てているわけだから。いろんな、こっちの事情も分かってきているんだ」
「…もしかして、猫を飼っているのか?」
「飼わないよ。私もまだ旅の途中なんだ。そろそろ、元の姿に戻りたいとさえ思ってる。戻っても、誰も待ってくれてはいないがな」
「私と同じだな。…どーだ?一緒に、私の町へ帰らないか?お互いに、旅を終わらせるつもりはないか?」
「旅の…終わり?」
私は、彼を連れてその町を出た。
思った通り、彼はこの町を出た途端に、当たり前のように猫の姿に戻っていた。
猫を連れた旅人が一人。これから、新しい暮らしが始まる。
それは、一人と一匹にとって、新しい旅の始まりであり、これからいくつもの、経験したことのない幸せに出会うのだろう。
人として。猫として。
旅は終わらない。