Ryu

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5/25/2024, 2:04:37 PM

降り止まない雨に打たれて、君は泣いていたね。
誰の優しさにも触れることが出来ずに、どれだけ誠意を込めても、誰かの悪意にさらされて。
こんな世界なんていらないと思った。
こんな世界から消えたいと願った。
その場所から一歩踏み出せば、雨宿り出来る軒下があることにも気付かずに。

優しさに触れることが出来ないのは、優しさが欲しいと相手にちゃんと伝えないから。
世界に悪意が溢れていると感じるのは、君が悪意に怯えてばかりいるから。
優しさが枯れ果て、悪意に満ちた場所にいるように感じてるのかもしれないけど、君や僕のような人間がいることを忘れないで。

僕は君を守りたい。
君が悲しみに暮れるのを見ていたくない。
きっと君も、悲しんでる人を目の前に、放っておくことなんて出来ない優しさを持っているはずだ。
そしてね、この世界にはきっと、そんな君のような人達がたくさんいるんだよ。
君が優しさを必要としていることを知ったら、少しでも力になりたいと思う人達が。

自分は人に優しくしたいのに、他の人はそう考えないと思うのは君のエゴだよ。
僕達が君のためにしてあげたいと思うことを受け入れて欲しい。
まずは、君が雨宿り出来る軒下を用意したから、濡れて風邪をひく前に使ってくれないかな。
本当は、降り止まない雨なんてないからね。
この降り続く雨も、いつか必ず終わる日が来る。

そして君は、あの頃の自分。
僕は君を守りたい。僕は君を応援してる。
ほら今は、降り注ぐ太陽の光のもとで、あの頃の自分にエールを送るよ。
そんな時代があったことを、思い出したから。
それを乗り越えてくれたから今があることに、感謝してるから。

5/25/2024, 7:12:14 AM

あの頃の自分が、バリバリのおっさんだと思っていた年齢はとうに過ぎた。
もはや、初老と言っても過言ではない。
いや、過言であってほしいが、老化と呼べるものが自分の中で着々と進行しているのは確かだ。
身をもって感じる。

あの頃は、こんな歳になった自分を想像出来なかった。
今だって、自分が死を迎える時のことなど想像出来ない。
いずれ来ることだけは頭で理解しているが。
時は流れて止まることはなく、気付けば今の自分も、あの頃の私に変わってゆく。

どの時代の自分にも、満足してる訳じゃない。
でもきっとその時の自分の精一杯だったと思う。
だから、あの頃に戻りたいという感慨はない。
あの頃の自分なりに頑張ってやり切ったはずだから。
あとは、この先を精一杯で生きていくだけ。

あの頃の自分に伝えたいことがあるとしたら、
「頑張ってるよな、知ってるよ」

何の偉業も達成しちゃいないけど、ここまで生きてきたことが、そして今の自分があることが、頑張った証。
ヒーローや大富豪になんかなれてないけど、立派なおっさんになれただけで、もう十分だよ。
立派なおっさんには、仕事や家族や趣味がある。
あの頃の自分が持っていなかった、素晴らしいものだってたくさん持ってる。

生きていきゃ、嫌なことや辛いこともあるだろうけど、そんな経験が出来るのも生きているからこそで、それを乗り越えた時の喜びだって知ってる。
だから、きっとこれからも立ち向かっていけるだろう。
不安ながらも立ち向かってきた、あの頃の私のように。

そしていつか、仕事や家族や趣味に奮闘する今の自分に、
「頑張ってるよな、知ってるよ」
とエールを送る、未来の自分になれることを願ってる。
初老を通り越して、正真正銘の老人になった自分が、若かりし頃の自分を誇りに思えるように、精一杯これからを楽しんで、闘って、夢見て、歳を重ねていきたい。

まあ、白髪とか加齢臭とか、いらんもんも増してゆくのには閉口するけどね。

5/23/2024, 2:06:28 PM


大学の友達が、まったく講義に出てこなくなった。
心配なので家を訪ねると、昼なのにカーテンを閉め切って、暗い部屋の中で身を縮めている。

「いったいどうしたんだ?何をそんなに怯えてるんだよ」 
「ヤバいんだ。ずっと俺を監視してる奴がいる」
「監視?何のために?」
「そんなの俺が聞きたいよ。外に出ると、俺にピッタリくっついて、ついてくるんだ」
「どんな奴なんだ?それは」
「黒ずくめで、顔も分からない」
「危害を加えられたりはしないのか?」
「今のところは。でもきっといつか、何か仕掛けてくる」
「今はどこにいるんだ?」
「姿は見えないけど、きっと近くにいるよ。俺には分かる」

夜になっても明かりをつけようとしない。
奴に見つかってしまうからだと言う。
だが、比較的落ち着いて見えた。
「こうして暗闇に隠れてれば、奴は姿を現さないんだ」
本当だろうか。夜の方が、闇に紛れて動いていそうな気がするが。

今夜は泊めてもらうことにして、明日は一緒に大学に行こうと約束した。
そしてもしそいつが後をつけてきたら、俺が撃退してやると。
俺は空手有段者だ。
そんなコソコソ野郎に負けるつもりはない。
彼は少し安心したように、その夜は深い眠りについた。

翌日は快晴だった。
恐れるものなど何もないと思えるような清々しさだが、太陽に向かって歩く大学への道中、後ろを振り返ると、彼の表情は信じられないほどに強張っている。

「どうしたんだ? 奴がいるのか?」
「お前…見えないのか…?」
「え…どこにいる!?」
「俺の…足もとだよ!」

彼の足元には、彼の影があった。
正面からの太陽の光を受けて、背後に、黒ずくめの…ずっとついてくる…。
すべてを瞬時に悟ったような気がした。
思うように単位が取れずに悩んでいたとも聞いている。
だが、まさかこんなにまで…病むほどに…。

その時、気付いた。
彼の影の右手には、刃物のようなシルエットが握られている。
実体の彼はそんなもの持ってない。
「きっといつか、何か仕掛けてくる」
そんな、馬鹿な。俺まで病んでしまったというのか。
幻を振り払おうと目を凝らした。

眩しい陽光の中、右手に刃物を持った影が、ゆっくりと地面から身を起こす。
ゆらゆらと立ち昇る影。
右手の刃物は、いつの間にか銀色のそれに変わっている。

「お、おい…」
「なあ、お前のおかげで、昨夜は久し振りに楽しかったよ。…ありがとな」

影が、彼に覆い被さるようにして、彼の体を黒ずくめに変える。
慌てて飛びかかったが、血まみれの彼にタックルしただけだった。
道行く人が立ち止まりこちらを見ている。
いつの間にか、血に濡れた刃物は俺の手に握られていた。
そして、あの暗黒の存在は、彼の足元で何事も無かったかのように…単なる影に戻っていた。

5/22/2024, 2:26:33 PM

こんなはずじゃなかったと思う一日だったけど、
そんな一日ももうすぐ終わるから。

美味しい夕飯食べて、
軽くお酒とか飲んで、
ゆったりとお風呂に浸かって、
のんびりYouTubeでも見て、
ぐっすり眠ろーか。

今日辛いことがあった分だけ、
明日はきっとイイ日になるよ。

だから大丈夫。
今だけはそう信じよう。
幸せな眠りにつくために。

それではまた明日。
このフレーズを使うなら今しかない。
明日になる前に、それではまた明日。

5/21/2024, 2:19:06 PM

ドラえもんが透明マントをくれた。
背中に羽織ったら、周りの誰にも気付かれない存在になれた。
いや、存在すらしていないのかもしれない。
「これで…どうしろと?」
ドラえもんは寝転がった三日月のような口で笑いながら、
「君の好きなようにしたらいいよ」

まずは、男の憧れを現実に。
詳細は省く。
でも、誰にも気付かれないから虚しさの方が強くなってくる。
しずかちゃんなら悲鳴を上げてくれるだろうか。
「キャー!のび太さんのエッチー!」って。
それが男の憧れだったりもする。

お金を手に入れるあれやこれやも考えた。
でも、所詮は小学生だ。
親の財布からお金を抜くとか、駄菓子屋のレジからお金を盗むとか。
「小学生だろうが、それ立派な犯罪だからな」
三日月の口が言う。
「分かってるよ。たとえバレなくたって、僕の良心が許さないからね」
男の憧れは満たそうとしたくせに…と言いたげな三日月。

「で、どーするんだ?」
「そーだな、ジャイアンとスネ夫にいつもの仕返しかな」
「セコいな。透明にならなきゃ勝てないのか?」
「だって僕はのび太だよ」
「だから何だ。自分に自信を持てよ」

そして、ボコボコにされた。
透明マントを羽織って、誰にも知られずに咽び泣く。
「そこにいるのは分かってるよ。戦えたじゃないか」
「ほっといてくれよ。僕なんか存在してないんだ」
「君ほど世話が焼けて、存在感のある人間はいないよ」
「褒めてるのか貶してるのか、よく分かんないよ」

青い満月に赤い三日月。未来の世界の猫型ロボット。
「そんなもん、いる訳ないか」
部屋に閉じ籠もって、周りの誰にも気付かれない存在になる。
どんなもんだい僕、透明人間。
マントなんてなくたって、ひみつ道具がなくたって。

夜空には黄色いお月様。明日は晴れるかな。
しずかちゃんからのLINE。
「明日こそ、学校に来てね」
さすが未来の僕の奥さん。こんな僕に気付いてくれた。
彼女に会いに、学校に行ってみようかな。
ジャイアンやスネ夫にも、リベンジがしたいし。

赤いお鼻の猫型ロボットは、僕達の未来は透明だって教えてくれた。
何の色にも染まらず、白いキャンバスに描いていくようなもんだって。
そうかもしれないな。
僕がしっかりしなきゃ、未来の奥さんだって失いかねない。
そして、僕達の努力次第で未来は変わっていく。
ありがとう、ドラえもん。夢は叶うと教えてくれて。

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