Ryu

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ドラえもんが透明マントをくれた。
背中に羽織ったら、周りの誰にも気付かれない存在になれた。
いや、存在すらしていないのかもしれない。
「これで…どうしろと?」
ドラえもんは寝転がった三日月のような口で笑いながら、
「君の好きなようにしたらいいよ」

まずは、男の憧れを現実に。
詳細は省く。
でも、誰にも気付かれないから虚しさの方が強くなってくる。
しずかちゃんなら悲鳴を上げてくれるだろうか。
「キャー!のび太さんのエッチー!」って。
それが男の憧れだったりもする。

お金を手に入れるあれやこれやも考えた。
でも、所詮は小学生だ。
親の財布からお金を抜くとか、駄菓子屋のレジからお金を盗むとか。
「小学生だろうが、それ立派な犯罪だからな」
三日月の口が言う。
「分かってるよ。たとえバレなくたって、僕の良心が許さないからね」
男の憧れは満たそうとしたくせに…と言いたげな三日月。

「で、どーするんだ?」
「そーだな、ジャイアンとスネ夫にいつもの仕返しかな」
「セコいな。透明にならなきゃ勝てないのか?」
「だって僕はのび太だよ」
「だから何だ。自分に自信を持てよ」

そして、ボコボコにされた。
透明マントを羽織って、誰にも知られずに咽び泣く。
「そこにいるのは分かってるよ。戦えたじゃないか」
「ほっといてくれよ。僕なんか存在してないんだ」
「君ほど世話が焼けて、存在感のある人間はいないよ」
「褒めてるのか貶してるのか、よく分かんないよ」

青い満月に赤い三日月。未来の世界の猫型ロボット。
「そんなもん、いる訳ないか」
部屋に閉じ籠もって、周りの誰にも気付かれない存在になる。
どんなもんだい僕、透明人間。
マントなんてなくたって、ひみつ道具がなくたって。

夜空には黄色いお月様。明日は晴れるかな。
しずかちゃんからのLINE。
「明日こそ、学校に来てね」
さすが未来の僕の奥さん。こんな僕に気付いてくれた。
彼女に会いに、学校に行ってみようかな。
ジャイアンやスネ夫にも、リベンジがしたいし。

赤いお鼻の猫型ロボットは、僕達の未来は透明だって教えてくれた。
何の色にも染まらず、白いキャンバスに描いていくようなもんだって。
そうかもしれないな。
僕がしっかりしなきゃ、未来の奥さんだって失いかねない。
そして、僕達の努力次第で未来は変わっていく。
ありがとう、ドラえもん。夢は叶うと教えてくれて。

5/21/2024, 2:19:06 PM