未知亜

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12/18/2025, 9:35:00 AM

 学生時代を過ごした街はいわゆる豪雪地帯で、私が生まれてはじめて積雪を見た場所だった。
 海に面した街は一年を通して曇りが多く、私のバックパックには常に折りたたみ傘が入れっ放しだった。気温が下がると雨は雪になる。そんな当たり前のことに、冬がくるたび私は感動した。
 雪の降り始めはしんとしている。世界が耳を澄ますような静謐のあとに、よく雷が鳴った。真っ白な地面が、軒先が、標識や街灯が、紫に染まる。
 わざわざ遠回りをして、まっさらな白に足跡をつけるのが好きだった。なにがおもしろいの? と嫌そうに言った君もまるごと。

『雪の静寂』

12/17/2025, 9:46:19 AM

 通された部屋には、いたるところにキャンバスが立てかけられていた。
 桃と青のグラデーションに染まる空。エメラルドに打ち寄せる波しぶき。新緑のいきづく森。溺れそうなほど明るい色ばかり使われた世界に、人物はひとりもない。

「最後に描いてたのはこれ」
 案内してくれた母親に示された絵は、夜の闇に浮かぶコンビニだった。街頭の灯りが暖かく世界を照らし、反射した光がキラキラ飛び交っている構図だ。
「あなただよね?」
 店舗の前に座って肉まんのようなものにかぶりつく高校生は、僕と同じリュックを脇に置いて、隣に立つ君を見上げ笑っているように見えた。
 布のなかの世界が光を浴びて輝く。
 

『君が見た夢』

12/16/2025, 9:30:16 AM


 寒空の下、手をつないで並ぶのはスイーツ店じゃなくてラーメン屋さんがいいな。ひそかな味変選手権を開催してたい。

 あなたにね、ありがとって言われると、あたたかいものがじわりと満ちる。失敗か成功の二択じゃなくて、発見と成功の両取りに変わるんだ。

 プールから見上げた晴れ間みたいに、明日は私がいっぱいありがとうを返すよ。


『明日への光』

12/15/2025, 8:59:53 AM

 星になるとか風になるとか言われるたびに口を塞いでやりたくなった。そんなの本気で信じてる奴なんているわけないし、信じたところで何も変わらない。
 当時の僕が知りたかったのは、隣の誰かでも見知らぬ人でもなく、なんでうちの親じゃなきゃいけなかったのかってことだけ。

 地球に流れてる時間なんて宇宙じゃなんの意味もない。流星はただの塵に過ぎない。
 眼鏡のつるをいじりながら御手洗が言ったとき、いつもならイライラするのに不思議にストンと入ってきた。

 時の流れは宇宙の膨張に過ぎない。
 速く動くものほど時間の進み方が遅くなる。
 どもりがちな声は、科学を語るときだけ淀みなく流れた。

 死んだ人は星になるなんて俗説についてを、こいつならなんて説明するだろう。意外ともっともらしい由来を知ってたりして。
 何万年も前の光を僕らは並んで見上げた。死んだ人間の魂かもしれない塵が、地上へと降る。

『星になる』

12/13/2025, 11:53:23 AM

 駅前広場に作られたマーケットの床は金属製で、下から照らす光がモザイク格子の隙間へと漏れている。
 歩くに連れ手前から奥へと順に移動するように見える光を、君は笑顔で見下ろして歩いた。ギシギシと不穏に鳴る床を少しも気にすることなく。
 人工スノー、輝くイルミネーション。こどもの声も行き過ぎる繋がれた手も、私がクリスマスに願うのはあなただけという定番のラブソングも、こんなにも美しいのに。
 いつか鳴り響く鐘の音を僕はずっと恐れている。続けばいいと夢見る時間の中で僕だけ切り取られたように、なぜか胸が痛むんだ。

『スノー』『遠い鐘の音』

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