未知亜

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12/12/2025, 9:59:09 AM

 流星群は宇宙に漂うチリの集まりらしい。地球の公転軌道とチリの帯の位置関係で、地球にいる僕らには星が流れるみたいに映るだけであって、チリ自体は別に降っても動いてもない。宇宙空間には上も下もないし。
「夢がないなあ」
 スマホ画面を見つめたまま君が、ぐるぐる巻のマフラーの端から唇を尖らせる。間を埋めたいがだけの解説を僕は引っ込める。
 駅を出て歩いているうちにも雨が降ったり止んだりしていた。天気予報は晴れだったけど、雲が晴れる様子はない。
「どうする? 何か食べてく?」
「止むって」
「へ?」
「止むって、雨」
 スマホを閉じた君が、僕の手を引く。僕らにはまだ見えない星が、雲の向こうで夜空を越える。

『夜空を越えて』

12/11/2025, 9:58:57 AM

 寒くなると、なぜか同じものばかり食べたくなることがある。ストーブをつけてから鍵を置いてコートを脱ぐ。実家にあった電気ストーブの、スチール柵越しのオレンジを思い出す。あなたのことなど何も考えてなかった頃。

 あたたまった部屋で、メープルの入った小さなパンケーキにかぶりつく。病室で見たあなたの皺だらけの手を思う。ストーブがじりりと焦げる。名を呼んだあなたのぬくもりが肩に過ぎる。


『ぬくもりの記憶』

12/10/2025, 9:51:56 AM


 手が冷たいと言いながら手袋をしない人だった。覆われる感じがあまり好きじゃないって。
 カイロをシャカシャカ振る指先の赤さを私は見つめる。それを持ち歩くのは君と会うときだけだって、そろそろ気づいてくれるかな。


『凍える指先』

12/9/2025, 9:48:43 AM

 年が改まるからって、なにかが劇的に変わるわけじゃない。誰しもそんなことわかってるはずなのに、今年もあと何週間、あと何日とカウントダウンし始めるのはなぜだろう。
 商店街でもらったカレンダーをパラパラとめくる。商店街の名前が入っただけの、圧倒的に真っ白なやつだ。手渡してくれたお店のおじさんも「あと3週間だねえ」と話していた。「来年も楽しい予定で埋まりますように」
 近所の神社に初詣へ行きたい程度で、年明けにはまだ何の予定もなかった。無職なんてこんなもんか。
 ふと思い立ってボールペンを取り、ちょんちょんと動かしてみる。昔習った田んぼの地図記号みたいなのをふたつみっつ書くと、商店街の名前の向こうが、雪の積もった地面みたいに見えてきた。
 雪原の先に分け入るような気持ちで、私は思い切り表紙を破る。1月1日の枠の中へ、とりあえず「初詣」と書き込んだ。


『雪原の先へ』

12/8/2025, 10:00:06 AM


 湯気がゆらゆらとのぼっていくのをいつまでも見てるので本当は好きじゃなかったのかなと聞こうとしたら、

 気にしないで猫舌だから。

 それより白い息を吐いてきみが笑った。

『白い吐息』

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