星になるとか風になるとか言われるたびに口を塞いでやりたくなった。そんなの本気で信じてる奴なんているわけないし、信じたところで何も変わらない。
当時の僕が知りたかったのは、隣の誰かでも見知らぬ人でもなく、なんでうちの親じゃなきゃいけなかったのかってことだけ。
地球に流れてる時間なんて宇宙じゃなんの意味もない。流星はただの塵に過ぎない。
眼鏡のつるをいじりながら御手洗が言ったとき、いつもならイライラするのに不思議にストンと入ってきた。
時の流れは宇宙の膨張に過ぎない。
速く動くものほど時間の進み方が遅くなる。
どもりがちな声は、科学を語るときだけ淀みなく流れた。
死んだ人は星になるなんて俗説についてを、こいつならなんて説明するだろう。意外ともっともらしい由来を知ってたりして。
何万年も前の光を僕らは並んで見上げた。死んだ人間の魂かもしれない塵が、地上へと降る。
『星になる』
12/15/2025, 8:59:53 AM