明日、もし晴れたら
約束ね?明日、もし晴れたらあの公園の見晴台でお弁当食べて、遊歩道を散歩して降りたところにあるトリックアートへ行きましょう!
すっごいキラキラした瞳が私を見る。立場が逆だ。女子のかわいいおねだりをなぜアイドルみたいな顔のあなたがするの?と、いう心の声が漏れそうになる。
集合時間は公園の入口に10時でいいですか?あっ、お弁当は自分が用意しますから、心配しなくていいですよ!
そう言って何にしょうかとブツブツいい始めた。
女子の立場がないと言いかけるが、アイドルスマイル全開で指を振る。
自分はあなたの笑顔をみたいから。お弁当楽しみにしていてください。
周りに羨望と嫉妬の視線を感じる。
ありがとう。楽しみにしているね。
次の日、大雨だった。
私の行ないが悪かったのか。もっと楽しみだって言えばよかったのか。もしかしてと思い、約束の時間には早いが公園の入口に行く。
大雨ですね。残念ながら。
そう声をかけられる。彼だ。
お弁当作ってしまったから、どこか雨がしのげる場所にいきませんか?背中に背負ったリュックを示す。かわいいてるてる坊主がついていた。
何だか急に涙が出て来た。楽しみにしてたんだ。私。来ないかもって疑った。
会えて良かった。行きましょう。見晴台は次の約束にしましょう。また、雨だったらずっと約束できますね。
もう、お腹いっぱいです。
だから、一人でいたい
だ、か、ら…一音ずつ区切ってゆっくりと何度言われても同じ失敗をする奴の顔を鏡で睨みつけて言う。
脱いだものは洗濯機の側まで何故運べない?シャツは裏返しのまま。帰ってきた動線上に点在する服に靴下、ハンカチはポケットにいつから入っている?鞄の中にあるものはゴミ?いるもの?私はあなたのお母さんでも専属家政婦でもないの。生活環境はキチンとしましょうね?
ガラガラ、ぺッ。うがいを終わらせるとフカフカのタオルを鷲づかみにして、まだ濡れて滴が残っていた顔をガシガシとふき首にかけたまま、冷蔵庫から缶ビールを取り出しソファーに移動し、テレビをつける。大相撲をみながら、プシュっと缶の口をあけ苦味とシュワシュワを味わい、フゥ〜と息を吐き出す。タバコを手にして、窓を見ると火をつけずに口に咥えた。
部屋にはテレビ以外の音がしない。外は雲のない月夜で星はその明るさで見えない。張り詰めたような凛とした世界だ。生ある者には入れない世界の入口のようだ。
タバコはベランダ!もう、何回言えばいいのかしら。
ビールは1本ね。食事はちゃんと食べないと身体に悪いでしょう!今日は、あなたの好きな魚があったの。煮魚にしたの。さぁ、食べて。
まだ、実感できない。君があの月夜の世界にいるのは。
覚えているから、君に言われた事。かみしめるから。
だから、一人でいたい。こんなきれいな月夜には。
澄んだ瞳
純粋だったら何をしてもいいのか?みんな、騙されいるんだ!拳を固く握って搾り出すようにそう言って、不思議そうにみている澄んだ瞳の女の子を睨みつけていた。
彼の瞳は白く濁り見えていれるのかわからない。血圧が上がったのか、白目は赤く充血している。
私、何かしましたか?そんなに怒っていたら身体に悪いですわ。おじさま。あの子の事なら、私、何も悪い事してませんわ。ただ本当の事を申し上げましたの。
コテンと首を傾げる。実にキュートだ。
だって、お身体はとてもふくよかでどこでお召し物をお買いあげなのか、とても気になりましたの。とても、奇抜なデザインでしたし、サイズもあっていないみたいでしたから。お履き物も無理して履いていらっしゃいましたわ。それで集まりにお越しで、歩きづらそうにしていらしたの。それなのに、無理されて笑顔も強張ってらしたから。お帰りになったら?と、申し上げましたの。
もっとご自分に合った装いをされたらいかがでしょうと。所作はおきれいですわ。気配りも良くおできでしたわ。でも、皆様にあわせようとして空回りされてました。まるで、認められないとご自分の価値がないみたいなご様子でしたの。私、飾った物言いができませんの。
おじさま、病院へ行かれた方がよろしいかと。お目が濁ってらっしゃいます。
私も治療しましたの。そうしましたら、とてもよく見えるようになりましたわ。
ものすごく澄んだ瞳は何事も見透かすようだった。
差し出されたのはカウンセリングセンターのカードだった。不都合な物をみなくなると目か濁る世界には必須。
嵐がこようとも
何でもやってやる!そう意気込んでいたが、現実は甘くない。自分より上手くできる奴はいくらでもいる。
そう。気合いで乗り切ろうなんてのは自分ぐらいだから、暑苦しい奴と言われる。仕方ないじゃないか。
それしか取り柄がない。わからない事は聞いて回る。できない事はわかるまで聞く。それは単純な質問、動作、振舞い、生活の全てに至る。
でも、積み重ねて学習した事は忘れない。
『お前、その性格どうにかならないか?』
モニター越しに最近よく言われる。何人目かのパートナーだ。嫌いではないが、少し適当だ。
『知識だけあってもダメなんだぞ』
パネルをコツンと叩く。
『次の無人探査に選ばれたんだ。探査用の作業、わかるか?知らない所に1人きりだ。無線も途切れがち、耐えられるか?』
ワクワクするではないか!
『お前、無事に戻って来いよな。データ分析一緒にやるからな』
パネルを優しくなぜる。そして、コンソールから接続プラグを抜く。視界や音、パートナーの息使いも聞こえなくなった。
次に視界や音を感じた時には生活環境レベルではない轟音と振動で状況の把握は刹那だったが無人探査機にいるとは思わなかった。オペレーター補佐だとばかり思っていたから。着陸した場所は火星だ。あぁ、もうすぐ砂嵐が来る。エネルギー供給は?太陽がみえなくなる。ソーラーパネルは畳まないと隠れる場所はないか?
気合いだ。ミッションクリアだ。
『人工知能にあんな暑苦しい性格いれたの誰です?
あいつが気合いだって、乗り越えたらコントロールできませんよ。人間だと勘違いしてますから。え?僕が性格矯正するんですかぁ?わかりましたよ。気合いでやります。あいつ、頑張ってますから』
お祭り
地球のこの地域に任務で来てから、地球暦で一年、
そろそろ油断の出る頃だ。
片言の日本語も外国人としては上手く擬態出来ている。
関東圏のエリアマネージャーへの昇進も内定している。
油断してはいけない。
何故ならば、この時期『お祭り』というイベントが多いからだ。
あのリズミカルな音と楽しそうな人々、高揚感にのまれてしまうと擬態が外れてしまうからだ。
あれは怖しい罠だ。毎年、エリア内の仲間を数人回収しなくてはならなくなる。昨年、回収した仲間は御神酒を勧められて断りきれずに口にした。
あれはダメだ。美味かったらしく、もう一杯となり、
体内での処理能力を遥かに上回り、口は軽くなり、行動も乱れる。来たばかりですごいものを見た。
あのレポートは日本司令部から世界司令部へあがり、
全世界の調査時の注意事項の一つにされた。
回収した奴は治療センターに入ったままだ。ここの言葉でいうと急性アルコール中毒らしい。アルコールが、我々の脳に与える破壊力は凄まじい。あれを飲んで平気な奴を解剖すべきだと意見が出ていた。
潜入員以外の地元民もたまに運ばれていた。これは体質か?
目の前にガラスコップになみなみと注がれた例のものが差し出されている。こちらを見てニヤニヤしている。
俺の酒が飲めないっていうのか?
ワタシ、オサケ、ダメ。
飲まない奴は地区の仲間じゃない。
それでも、首を振って断る。
ワタシ、ガイジン、ナカマ、チガウコト、シタイ。
何とか逃げた。お酒飲まないといい人だから許してくれと、他の人が頭を下げる。
お詫びにと、果物に飴をコーティングしたものをさしだす。イカやタコは食わんだろうと、いい匂いのする串をチラリと見ている。
今年のレポートは屋台の食べ物になりそうだ。
食料事情は必須脂項目だ。我々が食べられる物の区別をしなくてはならない。