My heart
僕はその質問が、目の前の僕の好みに造りあげた人型機械が言っているとは信じられなかった。
「待機」
そう命令すれば黙った。
「えっと、今何を言ったんだ?あいつ」
混乱する頭を整理する事にした。
「マスター。私の心はこの電池なのでしようか?」
「私は景色が美しいと感動出来ますか?」
「生き物の体温を温度を測る事以外で感じてヌクモリというものをわかりますか?」
プロトコルに何か誤りがあったか?
昨日までは何も変わった事はなかったよな。
僕はプロトコルを思い浮かべた。
感情は必要ないはずだし、プログラム学習しても人間にはそういう物があるとしか理解してないはずだ。
深層学習で感情の種類は理解したはず。でも、心のありかは人間だって場所は特定していない。
僕はそんなもの信じない。景色も温もりも。
まさか知りたい欲求か?機械が必要性を求めた?
否定することは簡単だ。
僕が心なんていらないと思っているから。
機械が欲しがるものなのか?
僕のいらない物を。
身体すら手放し、脳だけを残し、このボックスの中にいる。
あいつは僕の代わりに対外作業をさせる為に作った。
行動履歴を辿る。
これか。なぜ交際を。
僕が出来なかった事だ。
そこまで代わりにしろとは命令していない。
そんな事望んでいない。
僕はこの感情をどこで感じているんだろう?
心は捨てたんだ。
「ないものねだり」
手に入らないものをねだっているなら
それはなんだろう?
物はタイミングで手に入るかもしれない。
高価な物も稀少品も。いつか諦めなければ。
そのうち求める事に飽きるかもしれないし。
与えられないもの?
与えれば与えられるは嘘だ。
迷惑千万かもしれない。気がつかなければいいが。
欲しくても手を伸ばしても手には届かないもの。
何もしてないわけじゃない。
それはわがままな望みか?
わがままは許されないか。
だからないものねだり?
頑張っても無駄なのか?
誰もいない世界は寂しいな。
ここは私しかいない世界。
泣かないよ
泣くわけないじゃん。
どうしてそうなるか知りたいもの。
人の心と行動は不思議
喜怒哀楽…よくわからないから、知りたいんだ。
どうして、そんな顔しているの?
泣きそうな顔しているから心配?
そうかな?
フゥ。この世界は哀しい事の方が多いのか?
涙コレクションが偏っているみたいだ。分析器壊れた?
涙コレクション溢れたら、今以上に涙が増える。
だから、涙はこぼさない。
引き受けられるうちは。
声が聞こえる
耳をふさいで布団をかぶる。聞こえる音はからだを流れる血流の音であり、早鐘を打つ心臓の音。
そうだ。このままでいれば大丈夫だ。両親の争う声も、荒れた兄弟の暴れて喚き騒ぐ声も聞こえない。
それでいいのか?兄弟は助けてくれって言っているんじやないか?両親だって本当は苦しいって言っているんじゃないか?何が出来るんだ?助けてやるなんて出来るわけない。
ガチャガチャと部屋のノブが回される。
その部屋には誰もいないぞ。お前が血だらけにしただろう。もう、腐りかけだ。ハエがでてくるし、くさいぞ。
やめろ。ガムテープで隙間塞ぎなさいね。
そうだった。あの日、厄介で世話がかかるが金をもらえる自分は兄弟に滅多刺しにされた。金をもらうために放置されているんだ。助けなんかやつらにはいらないだろう。枕元と言わずまとわりついてやる。
自分の声が聞こえる?痛かったよ。
大事にしたい
おかしいな。
僕は首を傾げて引っ叩かれた頬を押さえ、怒りながら去って行く彼女の後ろ姿を見送った。
今回は何がいけなかったのか整理してデータベースにいれておこう。また、同じかもしれないな。パターン化してきているからあててみようか。
晴れた頬を冷やしながらキーボードに出来事を入れて行く。それは事務的で滑らかかつスピーディーだ。
なぜかモヤモヤする。容姿、知能、経済力、悪い方じゃないはずだ。わからないな。
入力後、データベースの整理が終わり累積データの傾向が表示された。
何を求めているのか。譲れないものは何か。
学習結果から質問をしてきた。
温もりと優しさが欲しい。こうやって話す事。
しばらく演算をしていた。
そうか。こうやってこいつを悩ませる時間が大事なんだ。そうか。うんうん。スッキリしてきたぞ。
回答
しばらくこの対話をやめてキャンプでも行ってください。あなたには生身の方が必要です。データだけでは本当に欲しいものは手に入らないです。私はあなたを大事にしたいというご両親の想いでできています。
プツと対話をやめてスクリーンを暗くして部屋の明かりをつけられた。
友人からメッセージが届く。アウトドアの誘いとは嬉しいな。迎えに行くぞ。